ふぁっきゅーきるゆーばっとあいらびゅー(ユウ光)





「だああああ!!せやから謝ったやろこのボケ!!」
「謝ってへんわ!頭沸いとるんとちゃいますか!?」
「ドアホ!沸いとるんはそっちやろ!絶対謝ったわ!!」
「絶対絶対絶対謝ってへん!!」



あー騒がしい。ギャアギャア騒ぎながら部室に入ってきたのは、傷だらけのユウジと光。



「ちゅーかそんなこと言うならお前がこけばよかったやろ!この非力!!」
「だいたいあんたがこぐって言い出したんやろ!!うっさいわてっぺんハゲ!」
「ハゲとらんっちゅーの!お前の目は節穴かこのチビ!!」
「1cmしか違わんくせによぉ言うわ!あれーえ?一氏先輩頭にコケ生えとりますよー?取ったりますわ!!」
「痛い痛い痛い痛い!ひっぱんなアホ!」




またやっとるわ。しょっちゅう言い合いの喧嘩。時々手が出たりして、結構ひやひやさせられる。この前なんかどちらかと言うと(とは言うてもどんぐりの背比べやけど)忍耐力のある財前がブチ切れてユウジの顔面に左ストレートがクリーンヒット、鼻血とまらんようになって最後にはお互い泣きながら殴り合いやからな。ったく餓鬼か。



「大体財前なんか謙也がおらんとなーんにも出来へんやないか!」
「ユウジ先輩やって小春先輩がおらんとなーんも出来へんくせに!」
「そんなことないわ!!」
「ふーんそないなこと言うんすね。小春先輩〜今日から俺とラブルス組みましょか〜」
「光ちゃん!!小春嬉しいっ!!」
「うわああああああ小春ううううう!!」



言い合いがこれ以上激しくなる前にこっそり帰ったろー思っとったのに、光に腕がしっと捕まれた。あー、これまた巻き込まれるパターンや。



「しゃーないやないですか!謙也さんはヘタレやけど優しいし頼れるし背も高いから居心地ええんですわ!ユウジ先輩と違うて!!」
「はぁー!?そんなん言うたら小春はお前の100億倍かわええわ!!」
「100億て0いくつあるか分かっとんのかいな!」
「そこや!お前のそーゆうとこがかわいくないねん!!」
「もーええわ!謙也さん帰りましょ!ユウジ先輩のアホ!死ね!」
「さっさと帰れクソガキ!謙也!こいつちゃんとしつけしとけ!」



そのまま財前に手引っ張られて拉致。グッバイ俺の優雅な放課後。





「でね?この前もユウジ先輩ったら…。ちょっと謙也さん、ちゃんと聞いてます?」
「聞いとる聞いとる」



延々とユウジの愚痴を聞かされる。どうやら今回の喧嘩の原因は、ユウジがチャリこいでそれの後ろに光が乗って二人乗り。そんでおもいっきり転んだんやと。
なんやかんや今保健室で光の怪我を軽く消毒してやっとる俺は最高にええ先輩やと思う。




「痛…謙也さん、ちょぉ優しくしてくださいよ」
「すまんすまん」
「あーもう、全部謙也さんのせいやし」
「なぁ光ー」
「なんすか」
「お前ホンマはわかっとるやろ。ユウジだけが悪いんとちゃうって。こんなしょうもない喧嘩、さっさと終わらせたいって思っとるんやろ」



光の動きがピタリと止まる。「謙也さんには関係ないやろ」って睨んでくるかな、と思ったのに、これでもかってくらい眉毛垂らして情けない、泣きそうな顔をした。



「…謙也さんは、怖くないんですか」
「え?」
「いつも言いたいことやらなんやら、ちゃんと言えますやん、あんた」
「あー…まぁ、な」
「俺にはそれが怖い。素直になるのは、勇気がいります。」



さっきまで散々言い合いしとったのに、「ごめん」の一言が言えへんねんなぁ。ホンマ不器用。そんでアホ。



「…俺やって、たまには怖くなるときあるよ」
「嘘や」
「嘘やないで。せやけどな、ちゃんと言いたいこと伝えられずに誤解されてしまうほうが俺は怖いと思うねん。」



光の瞳の奥が揺れる。でっかい目の淵には段々と涙がたまってくる。口元はぷぅーっと膨らませて。あぁもう、はよなんとかせぇや!









「今日マクド寄ってくか」なんて思ってもないことを言ってみる。やってあいつ、ユウジはきっと……あ、ほらいた。ご丁寧に俺のチャリの前でヤンキー座りして待っとる、ユウジ。目つき悪。




「おうおうまた大袈裟に手当てしてもろて。謙也は優しくてよかったなぁ〜おこちゃま財前く〜ん」
「………」
「…ユウジも光も、ええ加減にせぇ」



ぶわっっっ
光の目からぼたぼた涙が零れはじめた。




「ユウジのドアホー!死にさらせー!!」
「よ、呼び捨てすんなや…」
「ひっく、やっぱり絶対謝ったらへん!謝ったらへんからな!うぅ…俺は悪くないもん!いっつも俺に冷たくしてくるユウジ先輩が悪いねん!」
「お前やって…財前やって悪いとこあるやんか!」
「素直やない俺でもええって言うたんはあんたやんかぁ〜!!うわぁぁぁん!」
「お前やってユウジ先輩になら意地悪されてもええって言うたやん!」
「うわぁぁぁぁぁん!」
「ぅ……」
「ひっく、うわぁぁぁん!」
「財前の、あほ……ぅ、うあぁぁぁん!!」
「もーお前ら二人そろってうるさいわ!!」



あれから二人とも大泣きして、結局財前がユウジの手きゅって握って、それでもそのままお手々繋ぎながら泣きつづけとるから置いて帰った。













次の日の朝練。
今日も部室一番乗りやーとか思いながらドアを開けると。




「ん…」
「あは、財前顔えろい」
「ユウジ先輩がキスばっかしてくるからやんかぁ…」
「気持ちええくせによぉ言うわ」
「ちょ、あんたどこ触って…!」
「ええやん誰もおらんし」
「っあ、…大体、昨日の…ん、まだ許してないんです、からっ…」
「ええよもう、俺の負け」


「「「あ」」」






「謙也さんホンッッッッマ趣味悪い!!」
「覗きとは最低やな、謙也…」
「最低はお前らやこのバカップル!!」



泣いたり怒ったり殴り合ったりいちゃついたり、ホンマ迷惑な奴らやで!
面倒みてまう俺も、よっぽどお人よしか趣味が悪いのか。


やけどギャアギャア文句言ってきたふたりの顔が真っ赤でとりあえず笑えた。
ホンマ似た者同士やっちゅー話や!





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