未来予想図(拍)





ふたりとも4、50代くらいの設定でお願いします!













付き合い初め、真っ白でやわらかくてすべすべやった光の手は、今は皮は固くシワだらけになって、決して柔らかくなんかない。


なんでかっていうと。光の手は、俺のご飯を作り、弁当を作り、皿を洗い、俺の服を洗い、直に子供たちを抱くことになり、子供たちのご飯を作り、娘の髪を結い、息子のスーツにアイロンをかけ…そうしていくうちにがっしりとした手になったんや。



俺はそんな手が、愛おしくてたまらない。










長女が嫁に行って数年。俺たちはおじーちゃんおばーちゃんになった。孫の可愛いこと可愛いこと。何でも買い与えてしまいたくなるほどだ。


長女がお嫁さんに行くことになったときはそれはもう寂しくて寂しくて仕方がなかった。光の兄さんの気持ちがそのとき初めて分かった。
結婚式で俺は大泣きしてしまったけど、光も娘も笑っていた。ふたりはよぉ似とる。





先日、長男が彼女をうちに連れて来た。「結婚したいんや、」と。世界一大切な子なんや、と泣きそうな顔して言った。ちなみに俺とこいつはよぉ似とる。息子が連れて来た子は笑顔の可愛いちいちゃくて優しい娘さんやった。しばらくの後、ふたりは籍を入れ、一緒に住みはじめた。結婚式は来月だ。





俺と光は初めはふたりで、娘が出来て3人になって、息子が出来て4人になって、それでまたふたりになった。





「ただいま」
「謙也さん、おかえりなさい」
「ひかる、おいで」
「はい」



いくつ歳をとっても変わらず、俺は光と手を繋いで散歩する。毎日毎日、一緒に歩いていく。



「今日の患者さんはどうでした?」
「あぁ、ずっと診とった子、今日やっと退院出来たんや」
「そうですか、よかった」
「光の方はなんも変わりないか?寂しかった?」
「寂しがりは謙也さんの方やろ」
「…陽平の彼女、てか嫁か。ええ子でよかったな」
「ピアスだらけでもなかったし?」
「金髪でもなかったしな」
「ふふ」
「なぁ光」
「なんですか」
「俺、良い親父やれとったかな」
「…どうしたんですか急に」
「ええやん別に。なぁ、ついでに聞くけど良い旦那やれとる?」
「どうやろなぁ〜」
「…光の意地悪」
「うそ、世界一です」



謙也さんは世界一のパパで、夫で、ずっとずっとうちの中ではいちばんです。なんてね。




なんてね、とか言っちゃって。可愛い君の照れ隠し。こんなふうに、いつだって俺は光に夢中なんや。




「なぁ、うちビールあったっけ」
「冷えとるのはあと一本だけ」
「買って帰ろか」
「謙也さんばっかり、ずるい」
「分かった分かった。善哉も買うて帰ろ」
「ふふ、やった」
「あ〜…犬でも買うか。それか猫」
「やっぱり寂しいんやんか。世話うちに押し付けんといてよ」
「光冷たーい」
「何言うとるんですかええおっさんが」
「まだまだぴちぴちやもーん」
「ふは、なんなん」
「なぁ光」
「はい」
「愛しとるよ」
「知ってます」




俺の髪はもう金やないし、光のピアスホールもほとんどが塞がってしまった。それでも俺は変わらずに光の手を引っ張って、愛してるって伝え続けて、光はそれに笑って応えてくれるんや。


昔必死になって探しとった「ずっと一緒にいられる方法」は、案外簡単やった。



それは、ずっと手を離さないこと。





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