涙サプライズ(光誕/ユウ光)
「白石さん、謙也先輩。明日カラオケ付き合ってください」
多分今、うちはものすごい顔をしとると思う。怖ーい顔。
明日はうちの誕生日。本来なら、彼氏であるユウジさんと過ごすはずやのに。ユウジさんと付き合い出したのはわりかし最近やから、うちの誕生日なんて知らんかなー、なんて思った。せやからちょっと恥ずかしかったけど、昨日一緒に帰ったときに「ユウジさん、あさってうち誕生日なんです」て言うた。そしたらあの人、なんて言ったと思う?
「そうなん?おめでとさん。俺明日あさっては小春と帰るから待っとらんでええからな」
流石にキレた。ユウジさんが小春先輩大好きなのは分かっとる。でもうちって彼女ちゃうん?うちのこと好きやから付き合っとるんやないの?
付き合っとるはずなのにユウジさんのこと信じきれへんくて、そんな自分も嫌やった。ちゅーをしてもえっちをしても、幸せのあとにぶわって一気に襲ってくるのはどうしようもなく胸が詰まるような、なんとも言えへんこの感情。
もうユウジさんなんか知らん。うちはユウジさんとおらんくても楽しいもん。
「ひかる〜元気出せや〜」
「光、なんか歌お?もう謙也のEXILE飽きたやろ?」
「飽きた言うなや!!」
「……すみません」
カラオケ行きましょうって言ったのはうちやのに、歌うたう気分になんかなれへん。白石さん、謙也先輩、ごめんなさい。
「ほな、次はうちが歌おっかな!」
白石さんの優しい歌声と、頭を撫でてくれる謙也先輩のあったかい手に、涙が出て来た。ぽろぽろぽろぽろ零れる涙。部長がうたっとる歌、何回かラジオで聞いたことあるけど、こんなにじっくり聞いたのは初めて。…よく聞くとサビの部分、バースデーソングなんや。今日は、うちの誕生日。誕生日やのに、ユウジさんはおらん。
曲が終わってすぐ、扉が開く音が聞こえた。せやけどうちは顔を覆った手を外すことが出来ひん。鳴咽も止まらへん。
白石さんの「ひかる、前向いてみて?」っていう優しい声に、思わず顔をあげた。
「ひかるー!誕生日おめでとさーんっ!!」
「光ちゃん、おめでとう」
「あらあらそないに泣いちゃって!可愛い顔が台なしよ!」
目を開けると、金ちゃんと千歳先輩と小春さんがいて。小石川先輩と師範もおる。目の前には、うちが大好きなお店の大きなホールケーキ。「HAPPY BIRTHDAY!ひかる」って書いてあるやつ。へ、これって…?
「光泣いてしもたからなんや申し訳なかったわ。ごめんね光、酷かったなぁ謙也のEXILE」
「酷かった言うなや!!」
「光、これ俺たちからの誕生日プレゼントな」
うちはまだ状況についていけんくて目をぱちくりさせとったら、奥から大好きな彼があらわれて。また涙がとまらへんくなった。手には大きな大きな花束。
「光!誕生日おめでとう」
「ゆ…じ、さん…」
「ふは、びっくりした?」
「なんで、これ…」
「あんな、今年って俺と光が付き合うてから最初の誕生日やん?せやから、一生忘れへんようなのしてやりたいなーって思ってん」
大好きな金ちゃんと先輩たちに、ケーキに花束って。どんだけ手ぇこんどんねん。この人、ホンマ阿保や…。
「うぇ、ユウジさん、つめたい、から、うち…かなしかって、」
「うん、ごめんな」
「せやから、うち…ユウジさんなんか知らんって、おもったのに…」
「俺は光のことばっか考えとったっちゅーの」
「ふ、う…ふぇ、ユウジさん、むっちゃ好き…!」
「ひか、俺もむっちゃ好き」
その後ユウジさんはみんなおるのにぎゅーってしてちゅうしてくれて。みんなに冷やかされて恥ずかしかったけどやっぱり嬉しくて。ホンマ、一生忘れられへん誕生日やなぁ。
みんなでケーキ食べて、一緒に歌うたって楽しくて。こんなに楽しいのにこれ終わったらユウジさんの家連れてって欲しいなぁなんて考えてまううちはいけない子ぉやな。せやけど、今うちの右手を掴んでくれとるこの人も同じこと考えとるやろうからまぁいいかって思った。
- 122 -
[*前] | [次#]
ページ: