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4月7日 はれ
クラス替えがあって、新学期が始まる。私のクラスは3年11組だった。青春学園、人多すぎか。11組とか初めてなったよ。今までは1年の時は1組で2年の時は2組だったから、勝手に3組になるものだと思っていたよ私。盛大に予想を裏切られた。11組って言いづらくないか。
隣の席は乾くんだった。乾貞治くん。テニス部の人だ。初めましてのはずなのに、私のことよく知っててびっくり。ちょっと引いたのは秘密の話だね。まあ、体重まで知られているのは落ち込んだわ。乙女の秘密なのに。誰だよ情報提供したの…。真剣に痩せなければだ。


4月8日 くもり
授業が始まったわけなんだけど、理科の実験班も乾くんと同じ班だった。理科苦手だから、教えてもらえてとても助かる。「いいデータが取れた」と言っていたのが気になるけれど。私のデータなんて使う機会ないだろうにねえ。実験の時、うきうきしすぎて不気味な笑みを浮かべる乾くんに若干ひいた。実験、大好きなんだねえ。夏美ちゃんと昼休みに理科室前を通ったんだけど、その時も色々な液体を混ぜていたよ。「美味しくなあれ」って唱えていたから飲み物かな。美味しくなあれ。あまりにも良くない色をしていたものだから、私と夏美ちゃんも廊下で唱えておいた。


5月4日 はれ
ゴールデンウィークだというのに、忘れ物をしてしまって学校まで取りに行った。宿題忘れるとか最悪だったね。
テニスコートの近くを通りかかったら、テニス部はレギュラーを決める戦いをしていた。レギュラー争いってやつだね。青春だ。
2年の時、同じクラスだった不二が空き時間にお話ししてくれた。今月のランキング戦は、1年生が一人参戦してるんだって。白い帽子を被った男の子。乾くんが負けるところを見ちゃった。でもとてもいい試合だった。不覚にもかっこよかったなあ、なんて。いや別に好きではないけど。予定があったもんだから、その試合しか見れなかったけど、テニスっていいなって思った。乾くん、レギュラー勝ち取ってるといいな。


5月9日 くもり
帰り道はテニスコートの近くの道を使うもんだから、見てしまったんだ。壁打ち練習していた乾くん、普通の体操服着てた。あの黄緑のやつ。青い、レギュラーが着るジャージではなかった。悔しいだろうね。今度、差し入れしよう。何がいいかな。
がんばれ乾くん。努力する人の姿は美しいものだね。とても素敵だと思う。


5月12日 はれ
壁打ちする乾くんに差し入れ。突然だったため、とっても驚いていた。データになかっただってさ。タオルとドリンクと、ちょっとしたカロリー摂取にビスケットを。「美味しい」と言ってもらえてよかった。前の試合、とても良くて、乾くんのファンになったって言ったら、嬉しそうな顔をした後に悔しそうな顔になった。がんばれ乾くん。努力は報われるよ。
また差し入れしてもいいかと尋ねると構わないとのことだった。あと体重1kg増加してたことばれた。「ビスケットを作るのはいいが、つまみ食いしすぎちゃいけないぞ。1kg増加じゃすまないだろう」だって。なんでわかるんだ乾くん。メアド交換までしちゃったよ。また一つ私のデータが取られたのであった。


7月5日 くもり
家でゴロゴロお休みを満喫。よく寝た日だった。乾くんからメールが来ていたけど、明日ランキング戦だって。乾くん、この2ヶ月ほどレギュラーさんたちの練習より、ずっとハードな練習続けていたからきっとレギュラーになれると思う。ぼけーっと練習見ていたわけじゃないから、強くなってるってのわかるよ!良かったら見においでってことだったけど、レギュラー争いの戦いをミーハー気分で見に行くのは、他の人からしたら邪魔だし、マナー違反だと思うから遠慮した。がんばれ乾くん。家で応援してる。


7月6日 はれ
乾くんからレギュラー復活の報告きた!おめでとう乾くん!頑張ったね乾くん!!関東大会、見に来てだって。夏美ちゃんと行こうと思って、夏美ちゃんに電話したんだけど、その時に「随分乾くんのこと好きなんだね」って言われた。否定したら、「最近乾くんの話しかしてないよあんた」って。今まで考えたことなかった。なんだか胸がもやもや。


7月7日 あめ
昨日夏美ちゃんから、乾くんのこと好きじゃないのかって言われてから、乾くんのことを意識してしまう。何度か話しかけられそうになったけど、避けてしまった。乾くんの顔が見れないんだ。夏美ちゃんのせいだよもう!本当やだ!せっかくの七夕だったのになあ。天気も雨だし。願い事も浮かばなかった。


7月22日 あめ
結局、関東大会は見に行けなかった。乾くんの顔見れない。少ししたら落ち着くかなって思ったけどそんなことなかった。話し掛けられるたびドキッとして逃げ出したい気持ちだった。あからさまに避けてしまう。不二からメールが来てたよ。「なんで見にこなかったの!君のお気に入りの乾が大活躍だったのに!女の子からもキャーキャー言われてたよ^^」って。お気に入りじゃないっつの。決勝戦すごかったんだって。あー、見たかった。けど女の子からキャーキャー言われてたのはもやもやするね。行かなくて正解かな。




7月23日 はれ



乾くんから告白された。



また私宿題忘れてきちゃったんだ。それで学校に行ったら、乾くんに手を引かれた。逃げられなかった。

「避けられている理由がわからない。何か傷つけるようなことをしたのであれば、教えてくれないか?」

悲しそうな顔で乾くんはそう言ったけど、私は無言のまま。言えるはずがなかった。乾くんのこと好きなのかもしれないって、まだ私にもわかっていないことを言うことはできなかった。言ってしまったら、乾くんとの間に溝が出来てしまうのではないかと思ったんだ。


「…好きな人に避けられるのは結構傷つくもんだ」
「ねえ。俺は、名字が好きだよ」


と困ったように微笑んだ。あまりにも突然すぎて。驚きで固まる私の頭をポンと撫でて、集合を呼びかけるテニスコートへ戻って行ったから、何も言えなかった。
告白されてやっと確信したけど、私乾くんが好きだ。さっきこの日記を読み返したけれど、乾くんのことばかりじゃないか。意識して顔をみれなかったのも、乾くんとの関係に溝が出来たら嫌だったのも、女の子からキャーキャー言われることにもやもやしたのも、ぜんぶぜーんぶ、好きだからじゃん。気づくの遅すぎだね私。









「乾くん。ここで練習していたんだ」
「やあ。やっと君らしくなったね。元気になったみたいで良かった」
「はい、これ」
「?」
「データ収集に使って?」
「なんだい?このノート?」
「私の日記帳だよ。私ね、随分と前から乾くんが大好きみたい。この日記帳、乾くんのことばかり書いてあるんだ。…乾くんの中の私のデータに付け加えておいてよ」
「……とっても嬉しいデータだね」




ブルースプリング


title:sailor
15.0708



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