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恋に落ちたかもしれません。

18年間生きてきて、恋なんてしたことがないから確かなことはわからないんだけれども。恋話をする友人たちが、好きな人に対して抱いてる感情ってきっとこんな感情なのかなあって。ずっと前から思ってはいたんだけど、わからなかったんだ。好きは好きだけど、これが友情の好きなのか、恋愛の好きなのか。




「名前、大丈夫だった?怪我してない?」
「ア、ハイ。…私は、大丈夫。不二くんも大丈夫…?」
「大丈夫だよ。名前が無事ならよかった」




雨降りの今日。今日は受験勉強のために遅くまで残っていたから、外は真っ暗だった。そのためか廊下が濡れているのに気がつかなくて、ドジな私は転倒しそうになったんだ。しりもちをつきそうになったところを後ろから支えてくれたのが同じクラス不二くん。

不二くんって女の子みたいに綺麗な人だと日頃から思っていた。隣の席にで話す機会も多かったから、恋愛の好きではないにしろ気になっていた部分はいろいろあった。髪の毛サラサラだけど、シャンプーは何を使っているんだろう?とかさ。

だけど、つい先日テニス部の練習を見に行った時に、かっこいい不二くんを見てしまったもんだから、私の頭の中は不二くんでいっぱいになっちゃった。もっと近くでみたいなって思ったり、女の子にキャーキャー言われている不二くんにモヤモヤしたり。これが好きって感情なのかな、ただ気になってるだけなのかな、て考えていた時に転びそうになって、それを助けてくれたのが不二くんってもう。もう、なんですかこの。ドキドキの感情。今、私の脳内はパニックなんです。顔を見て、お礼を言わなきゃいけないんだけれども、後ろを振り向くことができない。恥ずかしくて顔を見れないのです。




「ねえ、名前」
「…なんですか、不二くん」
「こんな時に言うもんじゃないし、本当は顔を見て言わなきゃいけないんだけど」
「うん」
「このまま、このままで聞いてもらってもいいかな?」
「……うん」
「…僕、君のことが好きだよ」




不二くんはそう言って、後ろから私をぎゅうって抱きしめる。好きって言われたと少し後に身体中の熱が顔に集まっていった。きっと私、今真っ赤だ。鼓動がだんだんと早くなっていくのがわかる。これを恋と呼ばなければ、何を恋と呼ぶんだろう。

恋をしていると実感した途端、不二くんから好きと言われた途端、涙が溢れて頬を伝っていった。抱きしめる不二くんの腕を解いて、私は不二くんの方を向く。驚いた様子の不二くんも真っ赤になっていた。私が泣いていることに気づいた不二くんは、また少し驚いた顔をした後に、ニコって微笑んでこう言ったんだ。





「ねえ、その涙は自惚れてもいいのかな?」




私が泣いたのは内緒にしてたくさん愛して
(「……自惚れてください」)



不二くんに抱きついて、胸元に顔を埋めながら小さな声でそう言った。あまりにも小さな声だったから、伝わったか不安だったけど、胸元から聞こえる君の鼓動が少し早くなったのを感じて暖かい気持ちになった。

少し落ち着いたら、私からもちゃんと言おう。


「不二くんのことが好きです」



title:sailor
15.0629




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