「英二!誕生日おめでとうー!」 「おお!サンキュー!」 昼休み、図書室横の小さな司書室で読書をしていれば、そんな声がちらほら。どうも今日はクラスの人気者の誕生日らしい。 人気者の菊丸くんは暖かい人だなあと思う。ひなたが似合うような、そんな人だと思う。そんな人がクラスにいるから、3年6組はみんな優しくて暖かくて、私には眩しいんだろうなあ。 横に置いていたカバンの中から、お弁当箱袋を出せば、大好きな母の手作りシフォンケーキと一緒に小さなメッセージカードが入っていた。 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 名前へ 15歳のお誕生日おめでとう。 名前の好物ばかり、いれちゃいました。 今日の夜はごちそうにしようね! 受験勉強頑張れ! - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - そうなんです。私も誕生日なんです。 私は菊丸くんと真逆の性格で、日陰が似合うような暗い奴だから、3年6組のみんなは覚えてないかもしれないけど。人気者と同じ日生まれなんです。 母の作ったシフォンケーキを一切れパクリと食べると大好きな味が口の中に広がる。やっぱり母の味が1番好きだなあ。 「あーっ!名字さん!やっと見つけた!」 「…菊丸くん?」 名字さん、休み時間いつも教室にいないんだからー!、と図書室から司書室へと入ってくるのは、人気者。菊丸くんだった。 「何か用ですか?本を借りるんでしたら図書室に図書委員が…」 「ちがうちがーう!これ、名字さんにあげる!」 不思議に思いながら、ほい!、と渡された可愛らしくラッピングされた袋を開くと、そこには白でふんわりとしたシュシュ。驚いて顔を上げると、ハッピーバースデー!と素敵な笑顔で言われた。 「今日、名字さん誕生日だよね?おめでとうー!」 「あ、ありがとうございます。誰も覚えてないと思ってました」 「何言ってんのさー!3年6組のだいたいの子が覚えてるよ!」 「本当ですか、それはとても嬉しいです。でもどうしてプレゼントを…?」 「俺、初めて同じ誕生日の子に出会ったんだ!」 だから、とても嬉しくて。絶対お祝いしようって考えてたんだよん。あっ、迷惑だったらごめんね!捨てても構わないから!名字さん髪の毛長いから、読書する時にでも使ってくれると嬉しいなあ。 照れたような顔をしてそう言う菊丸くんは、本当に優しくて暖かい人なんだと改めて感じた。普通だったら、あまり仲が良いわけでもない女子にプレゼントなんて渡さないよ。しかも私の好みをわかったようなプレゼント。さすが、人気者だと知らされる。 「捨てたりなんてしませんよ。大切に使わせていただきます」 「気に入ってもらえてよかった!」 「菊丸くんもお誕生日おめでとうございます」 「ありがとう!」 「でも私、プレゼント何も用意してないんです」 「わああ、気にしないで!俺が名字さんに渡したくて、渡しただけだし!」 「よろしければ、こちらをどうぞ!」 「でもこれ、名字さんの…」 「私の大好きなものなんです。だから…」 しあわせのおすそ分け (私の幸せをおすそ分けです) 母の作ったシフォンケーキを一切れ。 一口食べた菊丸くんの表情はとても幸せそうで、 「とっても美味しい!幸せな気持ちになった!」 と言ってくれるから、 私もまた幸せを感じたのでした。 2013.11.28 菊丸英二おめでとう! - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 一日遅れてしまいました。 菊丸おめでとう! 今年も菊丸誕を祝えたことに喜びを感じます |