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○中学2年生




「ごめん、待った?」
「気にしないで、幸村くん。忙しいのにごめんなさい」




テニス部の幸村くんと、バドミントン部の私。

一緒なクラスでもなければ、学校で接することもあまりない。なのに、どうしていつも一緒に帰るのか、と聞かれれば、中学2年生なったばかりの春、不審者に出会い襲われそうになった際、幸村くんが助けてくれたのがきっかけなんだろう。助けてもらえなかったらどうなっていたことか。



(ありがとうございました、幸村くんのおかげで何もされずにすみました)
(…本当、何もなくてよかったよ。これから部活ある日は家まで送るね)
(大丈夫だよ。警察にも付き添ってもらったし、悪いです)
(バドミントン部とテニス部、終了時間も変わらないし気にしないで。帰る方向も同じじゃないか)
(でも…)
(決まり。名字は俺が送っていくから)
(………はい)




それから半年と少し、幸村くんと帰路を共にしている。ファンの子たちにはいつも羨ましがられる。だいたいの事情は知られているから、イジメとか嫌がらせはないけどね。
今年、全国優勝した立海大テニス部は、来年の大会でも全国優勝するため、毎日遅くまで練習しているのに、いつも送ってもらって本当に申し訳ない。部長の幸村くんは特に忙しいのに。





「ごめんね、」
「え?」
「いつも、ごめんなさい。もっとテニスしたいでしょう?」





私の方が早く部活が終わる時は、よくテニス部を見てるんだ。だから知ってる、幸村くんがテニス大好きなこと。クルクルパーマの後輩くんや真田くんに、部活終わりの練習に誘われていることも、それを申し訳なさそうに断っていることも。それを見てたら申し訳ない気持ちでいっぱいで。





「本当ごめんなさい。もう一緒に帰らなくても大丈夫だよ!」
「………ごめんなさいが多いね。俺と帰るのつまらない?」
「や、そうじゃないけど…」
「けど?」
「……申し訳なくて……。テニスの練習断らせて……ごめんなさい…」
「えーい!」
「痛っ!?」





俯くとおでこに衝撃が広がった。驚いて顔を上げるとニヤリと笑う幸村くん。デコピンされた。優しくて美人な幸村くんに、こんな強い力があるとは思っていなかった。痛い。おでこがとても痛い。きっと今涙目になってる。






「幸村くん、痛い…。」
「おしおき。ごめんなさいと申し訳ないは禁止ね。ありがとうの方が嬉しいから」
「…うん、ごめ………ありがとう」
「よろしい。テニスは部活でみっちりやってるしいいんだよ。赤也や真田は休日にたくさん相手してるし。気にしないで」
「…でも……私と帰るの嫌じゃないの?」



「好きな人と一緒に帰れるんだから、嫌なわけないだろ」




名前は嫌?
ニコッと私の顔を覗き込んで尋ねる幸村くん。何もなかったような顔して。いつも名字呼びなのに、名前で呼んじゃって。いつも周りの恋愛事情に疎くて、鈍感と言われる私でも、その言葉の意味はわかった。ずるい、幸村くん。






つまりは、
君が大好きってことさ






「…嫌じゃ、ないです」
「そっか、わかってた。ほら、もう真っ暗だし早く帰るよ」





ポンポンって幸村くんに頭を撫でられた後、そっと手をひかれる。前を歩く幸村くんは今、どんな表情をしているんだろうね。



14.11/13
title:sappy
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家に着いてからちゃんと告白するんだよ、幸村くん。久しぶりの夢です。5万打リクをくれたゆりあ様へ。遅くなってしまい申し訳ございません。
甘?甘なのかこれ?ってお話になってしまいました…。








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