「どうした?」
背中に苗字の指先の気配を感じ、僅かに振り返り問いかける。
「…髪、触って良い?」
「…ああ」
変な頼みだ。頷くと、彼女の指が躊躇いがちにオレの髪を梳いた。
髪越しに触れ合う指先と背中が、少し焦れったい。
「相変わらず、さらさらね」
照れた様に笑いながら、苗字が身体をオレの背中にもたせかけた。
季節の所為で若干暑いが、あまり気にならない。
「ネジ、良い匂い」
「そうか?」
「ええ、私の好きな匂い」
苗字が優しい溜息を吐くとほぼ同時に、窓の外にぽつぽつと雨が落ちて来た。
「もう梅雨入りか」
「任務がやり辛くならないかしら」
「あまり問題は無い」
「そう、なら良かった」
次の任務までは、こんな会話を続けていられるのだ。
ふとそう気付き、無意識に苗字の右手に自分の手を乗せると、彼女はまた優しく息を吐いた。
…………
ありふれた日常って、忍者にとっては結構ありふれてないのか、と気付きました。
早速スランプに陥りましたが、そこまで不燃焼では無いかと。