「そこのマックロクロ助で頭がすっからかんで目がエロイ生徒、止まりなさい」

「……」

「コラ!止まりなさいと言ってるの!」

「……」

「教師をなんだと思ってるの!いいわ、こっちにも考えがある。それ以上動いたら射つわよ」



朝の校門検査。
どこにでもある至って普通の光景の中、女教師が発した普通とはいえないヒトコトと彼女が手にする世間一般的に学校にあっちゃいけないものはたちまち周囲の生徒たちを金縛りにあわせた。



「……先生、」

「やっと止まったわね。ちょっと指導室来なさいティキ君」

「名前覚えてんなら名前で呼んでください」



いらない恥をかいた。周りの生徒はみんな自分を指差しながら確かに目がえろいとか頭すっからかんウケるとか黒モジャとか呟きながら通りすぎていく。つーか黒モジャって言った奴潰す。




━━━


「入って」

「失礼しまーす……」



とおされた部屋は小綺麗な個室でドア横には生徒指導室のもじ。まんなかにある机をはさむようにおかれた2つの椅子のうちの右側に教師は倒れこむように座った。しかも演技くさいふかぁーいためいき付き。



「まったく。入学3日目で指導室よびだしなんて君がはじめてよ」

「自分でよんどいて何言ってんすか」

「黙れ」

「……」

「何度言ったらしっかり規則を守るの」

「…すみません」

「肌もこんなに黒くしちゃって」

「いや、これは地黒っす」

「どうせ毎日遊び呆けてんでしょう?」

「いや、そんなには……」

「昨日は海かしら?それとも山?」

「は?」

「もしかして日向ぼっこ!?あなたんちどんだけ太陽近いのよ」

「あの…話が見えないんですが」

「あなたの世代だからコゲパンに憧れたのはわかるけどね、でもよく考えて。あなたは人間」

「知ってます」



話のさきをあらぬ方向にむけてるのはわざとか天然か。つーかさっきから地黒っつってんじゃん。
そもそも俺は指導室よびだし最短記録をつくるほど悪さもしてなければ身だしなみがそこまでくずれてるつもりもない。確かに高校生という甘い文句につられてすこし制服をいじってはいるが、それだってオシャレの範囲内だ。俺より同じクラスのラビとかいう赤毛のほうがやたら派手だと思うんだがその辺はどうなんですか、先生。



「ふぁ、」

「欠伸でごまかさないでください」

「うるさい。朝早かったから眠い、ふはぁああ!」

「せめて口に手を当ててくださいよ」

「はいはい。で?君のその黒さは人工ではないのね?」

「人工って……せめて日サロって言いましょうよ」

「は?サーロイン食いたい?喧嘩うってんの?」

「いやいや」

「サーロインなんて私が食べたいっつの」

「先生、もう帰っていいっすか」

「やべぇ昨日飲みすぎたわー……二日酔い死んでほしい」

「先生、帰らせてください」

「うわ、なんか妖精もどきが見えるんだけど。超スピリチュアル」

「……」








第一印象なんて悪いもん

(なんかやけになつかれてて先行き不安…)



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