「ねぇ、ラビ」




部屋に帰るや否や面倒くさそうな声で部屋にいた彼女が呟いた。ソファに横たわる彼女は背もたれのお陰であいにく見えないがどんな体勢をしてるかとかどんな表情をしてるかとかは見なくても分かってしまう。それほどお互い近くにいたのだ。いすぎたと言ってもいい。




「たいへーん、大変なんだよぅ、ラビ」





ソファに寝転がってテレビを見ている彼女には一番似合わない言葉だと密かに思った。その顔を見てやりたい。すぐそこのソファまでの距離はおよそ3m。でも俺はわざとそこには近寄らない。





「なに?どうしたんさ」





聞かなくても分かってる。ずっと一緒にいたんだ、馬鹿みたいにずっと、ずっと……


彼女がここ数日隠してきたことも、わざと俺を避けてたことも、全部全部


気づいてた





「たぁいへん、なの」


「それで、なにが?」


「一大事、なのですよ」


「うん、なにが?」


「びっくりして、顎はずれちゃうかもよ」


「口閉めるさ」


「腰も抜かさないようにね」


「あいよ」







つむがれた言葉は、

予想通り


















「……できた、みたい」








やっと聞けたその一言に足音を立てずに近くによればこれまた予想通りの彼女の表情。





「なに泣いてんさ」


「だ、って」


「不安ならすぐ言えばいいのに」




苦笑しながらその身体を抱き寄せてやれば肩に入ってた力がふっ、と抜けて彼女も俺の首に手を回す。見てもいなかったバラエティー番組の笑い声が遠くで幸せそうに響いた。




「お、」


「え?なに、」


「お前重くなった?」


「し、しつれー!まだ4ヶ月なんだからそんなに増えるわけないでしょ」




ムキィ!と怒った声を出す彼女はいつもの彼女だ。そーそーお前はそうでなくちゃ。

わずかに膨らんだお腹に手を当てれば彼女も俺の手の上に重ねる。




「じゃあこれはいのちの重さだな」
















マイ、リトル


(はやく出ておいで)

(いっぱい愛してあげるよ)


*
 





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