暑い夏の定番と言えば海に花火に肝試し。とは言え高校3年生の受験を間近に控えた私たちが堂々と海に行くわけには行かず、加えて花火を持たせると何をしでかすか分からない馬鹿ちんが多いこの3年Z組では、せめてもの情けとして肝試し納涼祭をやることになった。個人的に言わせてもらえば夜の学校にこいつらを集めるだけで既に死亡フラグが立っていると思うのだが。教室半壊は免れないだろう。
肝試しと言ってもこいつらをそこかしこ勝手に歩かせることほど(色んな意味で)危ないことはないので、新八の意見で怖い話大会をすることになった。
「イヤッフウウゥゥ!!」
「夏休みアルウウゥゥ!」
『神楽、壁叩かないで。近藤は死ね』
「し、!?」
『今日みんなと集まったのはあくまで受験期間中の鬱憤はらしだからね。テンション上げすぎて教室半壊にしたりなんかしたら社会的に抹殺しますので。以上』
「小町は相変わらず固いなぁ。銀さんの代わりに先生やるかぁ?」
「いいんじゃないですか?銀八先生は今日を持って解雇ということで」
「ぱっつあん何真顔で辛辣なこと言ってんの?」
動物園のような騒がしさの教室は相変わらず、というよりいつも以上だ。それもそのはず。今日行われたテストを最後に私たちは夏休みを迎えたのだ。
「じゃあ丸くなってー」
「土方さんは真ん中に入ってー。はい、便所」
「総悟ゴラァアア」
『トシ、いいから総悟の隣座って』
「チッ」
「何するアルかー?魔王を呼び出すアルかぁ」
「呼び出さねーよ。呼び出せねーよ。神楽ちゃんは僕の隣座って」
「セクハラある」
「どこが?!」
円になるのにすら15分以上かかる奴らに果たして怖い話などできるのだろうか。…出来ないだろ。
『じゃあルールを説明するね。これから1人ずつ怖い話をしてもらいます。その中で1番みんなを怖がらせた人の勝ち。怖い話中はみんな隣の人と手を繋いでね』
「嫌アル。左にいる天パの手が臭そうアル」
「臭くねーよ!トイレの後はしっかりキレイキレイで滅菌してるっつーの!」
「小町ちゃーん、隣のゴリラは人間じゃないから手を繋ぐ必要ないわよね?」
「お妙さんんんん!?」
「小町、私は先生と手じゃなくて身体を繋ぎたいわ!」
「ふざけんな嫌だよマゾ女!」
『はいはい、マゾとゴリラは円の真ん中入ってー。便所ね』
「誰から魔王召喚するアルか?」
「勝手に1人で召喚してよ」
「チャイナの脳ミソの劣化が既に怖い話でさァ」
「んだとコラァアアア!劣化じゃなくて退化言うヨロシィイイイ!」
「神楽ちゃん突っ込むとこそこじゃない」
「突っ込む?突っ込むって銀さんが私に?!一体何を?!ナニを突っ込むって言うのよォオオオ」
「じゃあ俺はお妙さんに、」
『そこの便所2人退場。速やかにお家に帰ってください』
「つーか誰から怖い話すんだよ。しねェなら明日塾あるから帰りてェんだけど」
「土方くんが怖いから帰りたいってェ」
「んなわけあるか!ふざけんな銀八!」
「えー?本当にぃ?先生の怖い話聞いたらチビっちゃうんじゃねーの」
「ねーよ!」
『先生、そこまで言うからには怖い話考えてるんですよね』
「もちろん」
『じゃあ初めは銀八先生からで』
「臭そうな話アル」
「神楽ちゃん少し黙って」
「ん、んんあ゛ー。初めんぞぉ。あるところに1人の男がいたんだ」
「小町ちゃんゴリラが窓から何か叫んでるわ」
『バナナでも投げとこうか』
「その男は教師でな、あるクラスの担任を受け持っていたんだ。そいつのクラスは大変な問題児ばっかでなー。職員会議で圧力かけられるわ他クラスから文句言われるわでその先生ノイローゼ気味になったんだと」
「俺も土方さんノイローゼにしてェ」
「既にお前のせいでノイローゼ気味だから」
「そんでなー、その先生授業の準備も手に付かず、ついに1学期分の授業を終えないで夏休みに入ったんだと」
「傍迷惑な先生ですね」
「姉上、この場合悪いのは先生じゃなくて生徒じゃないですか」
「そうそう、悪いのは生徒なんだよ。つーわけでさ、お前ら夏休み返上で授業続行な」
「「「「「『は?』」」」」」
「ほら、これどう考えても生徒のせいじゃん?俺悪くないじゃん?」
『トシ、そいつ縄で縛って』
「おう」
「新ちゃん、校庭にキャンプファイヤー用の組み木用意しましょう」
「火炙りですね。了解です、姉上」
「チャイナ、バズーカ持って校庭行くぞ」
「おおよ、準備万端アル」
「え、ちょ、あの…?」
怖い話
(骨も残らないと思ってくださいね、先生)
(骨も残らないと思ってくださいね、先生)
20100729