笑えない話をしよう
5年前、12歳のクリスマス、私はサンタクロースに拾われた。親が蒸発してから1人で泥棒しながら暮らしていたこともあり、その頃の私は極貧中の極貧、餓死寸前のミイラのようだった。そんな時、道で行き倒れてた私の目の前に奴は現れた。奴ことオレンジの髪をしたサンタは、笑顔で私を足で転がして靴下を顔に投げつけてきた。かなりムカついたので最後の力を振り絞って奴の足に噛みついてやった。サンタって子どもの靴下にプレゼント入れるおっさん集団って聞いたことあったけど聞き間違えたんだろうか、こいつ私を蹴り飛ばした挙げ句靴下投げつけてきたんだけど。しかも物凄くいい笑顔で笑ってるんだけど。
噛みつきながらひたすらサンタくたばれと考えてたら意識を失った。
次に目を開けたとき、私は宇宙にいた。地球は青かった。
「そんなこんなでなんやかんやあってあれから5年経ちましたが私はいつ地球に帰してもらえるんでしょうか」
「なんで?帰りたいの?」
「すこぶる帰りたいです」
「なんで?帰る場所ないのに?」
「また泥棒屋やりますし」
「泥棒猫になる?なにそれエロい」
「団長ってだいぶ頭沸騰してますよね」
わざと吐いた暴言は笑顔で一掃された。相変わらず何を考えてるか読めない人だ。
「お前はここから出れないよ。ずっと俺といるの」
「なにそれプロポーズみたい。シベリア寒気団並みに寒くて笑えないんですけど」
私は鼻で笑い、団長はいつものイケスかない笑みをもらした。
「俺が何であの時お前に靴下投げたか分かってる?」
「サンタの真似事しようとして間違えちゃったんですよね」
「違うよ」
「夜兎族のサンタは子どもに靴下投げるんですか。夢もヘッタクレもないですね」
「違うよ」
「まさか私が団長のプレゼントとかそういう落ちじゃないですよね」
私は鼻で笑い、団長はまたいつものイケスかない笑みをもらした。
「それこそプロポーズみたいじゃないですか。氷河期並みの寒さですね、笑えません」
「そうだね、笑い事じゃないからね」
ニコニコ笑いながら近づいてきた団長はいとも容易く私の両手をホールドし、耳元に口を近づけた。
「逃がさないよ、小町」
笑えない話
20100706