青に染まる
「今度神田とイタリア行くんだー」
「へぇ、そうなん。何色の下着つけんの」
「話聞いてた?」
「だからユウとイタリア行くんだろ?勝負下着は何色だよ」
「私と会話したくないならそう言ってくれて構わないんだよ」
「なんでさ」
どうしたというのだろう。春の陽気にやられて頭に青春時代でも到来してしまったのだろうか。特にラビの青春時代開幕のファンファーレが鳴るほど大層なことを話題にした覚えもなければ、神田が特別下着好きという話を聞いたこともない。それともこれは何かの暗号なのだろうか。
もしや、と思いラビを振り返ると、今日の彼の表情はいつもと比べて曇ってるように見え…なくもない。どこかアンニュイな雰囲気が漂っている…ような気がしなくもない。
「あの、さ」
「なんさ」
「ラビは女の子の下着に興味があるの?」
「え?どうした突然」
「パンツ好き?」
「どうした突然」
「今度一緒に試着しに行く?」
「行かねーよ!」
どうしたんさ突然、今日のお前なんか変よ?と汗をかいた相棒の質問は驚くほど私の心の声とリンクしていた。お前がどうした。
「だってイタリア行くんだろ?」
「行くよ」
「神田と太子の2人でだろ?」
「そうだね」
「じゃあ下着は勝負下着だろ」
「うん、なんとなく言いたいことは分かったけど、これ任務だからね」
「関係ねーさ」
「大ありだよ」
「だって2人でだろ」
「またそこに戻るのね」
思う存分いちゃつけばいいじゃねーか、と砂を吐くように言う彼に違和感を感じた。何故私が神田といちゃつかなくてはならない。そもそも2人とはいえただの同僚のために勝負下着を着る意味も理解できない。会話に重大な誤差があるように思うのは私だけか。
「つかぬ事をお聞きしますが」
「うん」
「私は誰と付き合ってますか」
「どうした、更年期障害」
「ちょっと質問を変えようか」
「そうしてくれ」
「私が好きな人って誰」
「大丈夫か、更年期障害」
尋常じゃない量の汗をダラダラとかき青ざめた相棒は、自分が誰かわかるかとか今は何年でここはどこだなどとしつこく質問を迫る。私の内心も別の意味で青ざめている。もしかして、もしかする。
「太子が好きな奴って」
「私の好きな人は」
「ユウだろ」
「ラビだよ」
ほら、青ざめた。
青に染まる
(マジか)
20120426
凪様リクエスト「可哀相で、でしゃばりなラビ」
モテてるのに気づかない、アプローチにも気づかない。そんな変なところが鈍いラビが可愛いです。
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