期待





「おお…きたぁ……!」
「うわ、鷹臣すげーな。満点じゃん。」

入学してから数学の授業で毎週金曜に必ず実施されていた小テスト。どちらかというと文系人間な俺はいつも苦戦していたんだけど、今日初めて10点満点を取ることができた。

これ、絶対勝威さんが教えてくれたおかげだ。

自然と顔がにやけてしまう。すぐに報告したいけど、最近はなかなか会う機会が無い。高遠さんに誘われて夕飯を食べ来てくれないかなぁなんて、人任せなことを考える。

だけど、今日の俺は思っていた以上についていた。テストを頑張った俺に神様からのご褒美かもしれない。


「勝威さん!」
「ああ、鷹臣か。」


日直の仕事で職員室へ日誌を届けに向かった放課後、偶然職員室から出てくる勝威さんを見つけた。

「俺今日の数学のテスト満点だったんですよ。」

この前はありがとうございましたって俺が言うと、勝威さんは少しだけ笑って「俺の教え方が上手いからな。」って言って、俺の頭に手をのせた。

勝威さんは冗談ぽく言ったけど本当にそうだと思う。先生とか家庭教師とか、意外と向いてるんじゃないのかな。

「あの、よかったら今日晩御飯食べに来ませんか。」

このままだと次にいつ会えるかわからない。だから勇気を出して自分から誘った。ダメ元でって言い聞かせてるわりにものすごく緊張する。

「お前の飯は食いたいんだけどさ、縁がめんどくせぇんだよ。」
「別にもう怒ってないですよ、あの時は感情的になっただけで。」
「まぁ…それはわかるんだけど。」


…だめかぁ。

俺のご飯を食べたいって言ってくれたのは嬉しいけど、それだって社交辞令かもしれない。これ以上強引に誘ったら迷惑かな。


「すみません、いいんです。無理言って。気にしないでください。」


こういうときにすぐ諦めるところが自分のダメなところだってわかってる。わかってるけど、しつこく食い下がって嫌われるよりはいいと思ってしまう。

少なくともお礼を言うっていう目的は達成できた。後はなんでもないような顔で立ち去ろうと、後ろを向こうとしたそのとき、


「いって!」


突然頭に痛みが走る。グーで殴ったよこの人。しかも結構強めに。


「なにするんですか…っ!」
「別に。ちょっとイラっとしたから。」


えー?!今俺なんか怒らせるようなこと言った!?


「別にお前はなにも無理は言ってねぇだろ。」


そう言うと痛みでジンジンする俺の頭を上から押さえつけて髪をぐしゃぐしゃにかき回す。


「わかったわかった。後で行くから。」


それだけ言って勝威さんは3年生の校舎の方へ歩いて行った。

予想外の展開に、正直戸惑っている。

え。来るの…?そっか、そうかぁ…。


勝威さん来るんだ。


まじか!なに作ろう!?


ひとまず俺は手に持った日誌を急いで担任に提出して、校外のスーパーに向かって走り出した。








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