君の観察力にちょっとびびった


「取り敢えず、まずは挨拶から。初めまして、ルーシィと言います。先程の件は一応女の代表として礼を言わさせて下さい。ありがとうございました」

「おう、ルーシィだな。俺はナツ、ナツ・ドラグニルだ。で、コッチの青いのがハッピーなんだが」

「あぃ。オイラ達は助けた覚えはないんだけど…」

「それでも、貴方達の突如の介入によって何人かの女性の魅了(チャ-ム)が解けたのは事実です」


場所は先程の中央広場から変わって、広場の近くに建てられていたレストラン。
そのレストランの一席にルーシィと桜髪の少年・ナツとその相棒の青猫のハッピーの姿があった。
何故レストランにいるのかというと、ルーシィが一人と一匹に話がしたいと声をかけて近くの店に誘った為である。だが、ルーシィがナツ達に声をかけた理由は先程の礼以外にあった。正直に言えばお礼はただの口実であった。


「つかぬ事を聞きますが、お二人は魔導師ですか?」

「ふぉう!ひょくわはっはは!(おう!よく分かったな!)」

「ナツ、口の中を無くしてから喋ろうよ。でも、よく分かったね?」

「はい、お二人から魔力を少々感じましたので」


ナツはルーシィの奢りのレストランの料理を口の中に大量に詰め込みながら喋るが、正直何を言っているのか分からなかった。
ルーシィは少しながらも二人から魔力を感じ取っていた。魔導士としてまだまだ未熟者ではあるためにまだ微弱しか感じることが出来なかった。
それでも、彼らが魔導士だというとは直ぐに分かった。あの火竜(サラマンダ-)と名乗っていたいけすかない男からも魔力は感じたが目の前の少年、ナツ程ではないというのはルーシィでも分かった。
もし、ナツとあの火竜が戦うとなったら、絶対にナツが勝つだろう。
一人ボーッと考え込んでいるルーシィを気にも止めずナツは口の中に大量に詰め込んでいた料理を一気に飲み込んだ。


「魔力が分かったということはルーシィも魔導士だろ?」

「え、は、はい」

「へぇ、じゃあどっかギルドに所属してるの?」


突如聞かれたナツの質問にルーシィは少し吃りながらも答えると、ハッピーがその大きな目をキラキラと光らせながら更に質問を重ねる。
その質問にルーシィはほんの少しだけ眉尻を下げて否と答えた。
その事にナツ達は気づき、また気づかれたことにルーシィは気づき直ぐ様話題を変えた。


「そんなことよりも、お二人は広場で火竜の事をイグニールと行っていましたが、探し人ですか?」

「おう、火竜今度こそは本物だと思ったんだがなぁ」

「あぃ、残念だね」

「いえ、本物ならばまず人間は集まらないかと。そのイグニールという方は人間なのでは?」

「ん?人間じゃねよ。イグニールは本物のドラゴンだ」


……………。
ナツのその一言により、三人の間が一気にシーンと静かになった。ルーシィは何処かデジャヴを覚えながらも思った事をありのまま話す。
彼のナツ達の話の一体何処までが本当で何処までが嘘なのかは残念ながらルーシィには判断がつかない。だが、たとえ嘘だろうが本当だろうがまず探す場所を間違えている事を彼らは気づくべきであった。


「そもそも本物の文字通りの火竜が人間がたくさん集う町に現れるとは思えないのですが。それこそ、火竜なのですから、火山地帯とか人間の手が届いてなさそうな場所の方がもっと可能性があるのでは?」


ルーシィが正論を言うと、ナツとハッピーは目を大きく見開きルーシィを指差した。
二人のその顔は「そうだった…」「気づかなかった」といった顔だったため、ルーシィは思わず「今気づいたという顔をしないでください」言ってしまったが仕方がないだろう。


その後もナツ達はよほどお腹を空かせていたのか次々と注文した料理を口に詰めていく。頬に沢山の食べ物を詰め込んでいるその姿はハムスターを連想させた。
ルーシィはそんな二人に食べることを急かさず、ゆっくり食べて行けばいいと言ってある程度のお金を置いて店を去って行った。現在店にいるのはナツとハッピーだけである。
そんな二人はお互いにルーシィに対して同じ感想を抱いていた。
話し方は初対面相手というのもあるだろうが、ハッピーに対しても最後まで丁寧だった。ハッピー自身、自分のことをさん付けで呼ぶ人に生まれて初めてだった程だった。
そして、この短い間に会話をしていた間ずっと思ったこと。


「ルーシィ、一度も笑わなかったね」

「あぁ、雰囲気で楽しいというのがやっと分かったくらいだったな。話し方も淡々としてた」


一切の感情の片鱗すら見せなかったルーシィの事が少し気になった二人だった。



title by [毒林檎]




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