これは純粋な下心
ここは、港町・ハルジオン。
魔法より漁業が盛んな町で魔法専門店は他の町よりもずっと少なく、一軒しか無かった。
その一軒の中に一人、町で見かけないブロンドヘアの女の子がいた。
「この町は、魔法屋はここ以外無いのですか?」
「はい。何ぶんこの町に魔法を使える者は本当に少なくて、この店も旅をしている魔導士専門なんですよ」
「そうですか」
ブロンドヘアの女の子・ルーシィはハルジオンに魔法屋が一軒しか無いという店主の言葉に不覚だったと思った。これでは、目的のモノが手に入らない確率の方が十分に高い。
内心無駄足だったかと思いつつ、店主が勧めてくる魔法アイテム(既に持っている)に適当に返答しながら店に置いてある魔法アイテムを見ていた。
ルーシィの目的の物は
門の鍵。世に言う星霊魔導士が魔法を使うのに星霊を呼び出すのに必ず必要なアイテムである。
現在ルーシィはある星霊を呼び出す為の鍵を探していた。そんな時、店の中央部に置かれているガラスケースに目が入った。
「このお店、旅人専門でも門の鍵を取り扱っているんですね」
「まぁ一応ね。少ないけれど、でも旅人の中に星霊魔導士はやはりいるから」
ガラスケースの上をスーッと手で撫でる様に動かしながらガラスケースの中に綺麗に並べられた銀色の門の鍵を見て行くと、ルーシィが欲しいと思っていた、この店に来た理由でもある目的の物を見つけた。
「あ、
白い子犬」
「おや、お客さんも星霊魔導士だったのかい?でもそれ全然強力じゃないよ?」
「構いません。これはいくらですか?」
「二万ジュエル」
……………。
店長のその一言によって店内は一気に静けさに包まれた。
白い子犬は強くないと今店長自身の口で言われたよね?なのに、二万ジュエルは流石に高過ぎる。ボッタクリにも程がある。
どれほどの静寂が今を支配していたのか。
どれほどと言うほど長くは無かったが、少なくとも暫くは店内は静かだった。
そして、ルーシィが決断した答えは。
「帰ります」
「いやいやいや!欲しかったんでしょ!?白い子犬!!」
「高過ぎます。それならば、ここ以外の店で買った方がもっと安くてお得です」
「そ、そんなこと言わないでさ!じゃあ一万九千ジュエル!」
「然程変わりませんね。一万五千ジュエル」
「そ、それは安いよ!?一万九千ジュエル!!」
「微動だにしませんね。一万三千ジュエル」
「更に安くなった!!?」
「更に安くしてくれても構いませんが」
「ひえぇぇぇ!!」
店内では暫くルーシィと店長の値切り合戦が続いたのだとか。
title by [毒林檎]
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