サヤ様リクエスト
ヒソイル×キルクラ Wデート



今日はいい天気です。
不気味な奇術師の機嫌も絶好調です。

何故なら彼は今、念願叶って大好きな殺し屋さんと共に遊園地へと遊びにきているからなのでした。

100回誘って9割りがた曾お爺ちゃんのお葬式を理由に断られ、それでも粘り続けることウン十回。

気まぐれな殺し屋はようやく首を縦に振ってくれました。
これはGOサインに違いありません。
そう考えると昨日から鼻血と涎がとまらず夜も眠れませんでした。
なんやかんやで朝を迎えてそして今。
隣で佇む殺し屋の彼はというと

「キルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキル」

その場を微動だにしない彼の視線を辿ってみると、銀髪と金髪の若い2人組が手を繋いで歩いていました。
仲睦まじい二人の様子を見ながらさっきからずっと、呪文のように何かを唱えています。
瞳孔全開です。そんな所も可愛いです。興奮します。ムラムラします。もう耐えきれない。
理性がぶっ飛んで襲いかかりました。
しかし彼に覆いかぶさった瞬間、

「イルミてんめぇぇぇぇ!!何でここにいんだよストーカーしてんじゃねえよ!!!」

彼の視線に気づいた銀髪の弟の右足が
後頭部にクリティカルヒットしました。
意識が飛ぶほど痛かったですがイルミの盾になれて良かったです。






デズニーランドへ行こうとクラピカに言われた時には、まず最初に耳を疑った。
今まで誘うことはあってもクラピカから誘われることなどなかったし、ましてはデズニーランドだなんて。

二人きりでデズニーなんて
日曜日にデズニーなんて

(どう考えてもデートのお誘いじゃん!!!)

キルアの辞書に、断るという文字はない(ただしクラピカに限る)
後からクラピカの目当てがデズニーパレードだと知っても落ち込む暇がないくらい、キルアは浮かれていた。
メッキーに対面したクラピカはそれはもう上機嫌だった。
瞳をきらきらさせて頬を紅潮させ、無駄に色んな所を写メったり熊のブーさんをモフる為に探したりツンデレラ城によじ登ろうとして係りの人に厳重注意されていたりで本当に可愛かった。
ちょっと怖かったけど。

その上機嫌に乗じてさりげなく手を繋いでみると、拒む所か握り返してきたり。
此方を向いてふふっと微笑みかけてきたり。

……なにこの天国。

もしかしたら今夜はいけるかも。
そんな不埒なことを考えてニヤついていたキルアだったのだが

「はっ」

ふと、背筋にいやーな震えが走った。
恐る恐る振り返ってみると
背後の茂みから (● ●) こんな感じの眼球がこっちを見ていた。
幻滅した。
殺意を通り越して破壊欲が芽生えた。イルミ死ね。


「あのヒソカが気を失ってしまうだなんて。お前、どれだけ強い力で蹴ったんだ」
「まぁ…全力だったから」

半ば引き気味なクラピカの問いに
キルアはそっぽを向いてそう答えた。

イルミの顔面目がけて全力キックをぶち込んだのに割りこんできたヒソカの後頭部に邪魔された訳で。
当のヒソカは気を失ったまま、クラピカの隣を歩くイルミの後ろを歩いている。
イルミの針で歩かされている。

「おぶって歩くだなんて嫌だよ気持ち悪い」

イル兄ひどいね。ひどいねイル兄。

ヒソカは一応あんたを守ろうとしたんだからさ、盾になってくれたんだからさ、もうちょっと労わってあげるとかさぁ
…まぁ、当の加害者である自分が言えたことではないのだが。

「確かにヒソカは気の毒だが、監視されていたのはあまりいい気分ではないのだよ。キルアの気持ちも分かる」

テンションMAXだったクラピカも冷めてしまったようで、眉をしかめてイルミを咎めていた。
二人きりの場をぶち壊されたことに憤りを感じているようでちょっと嬉しい。

「別に監視してた訳じゃないよ。ヒソカと来ていただけで、偶然君たちを見つけたからガン見してたらキルが飛んで来たの」

「「え」」

思わずハモった。
イルミとヒソカはそこそこフランクに見えるが、まさか一緒にデズニーリゾートに来るような関係だったとは。

「あ、誤解しないでね。パレード見たかっただけだから」

理由はクラピカと同じらしい。


「お前も見たか!?花火の中からメッキーがどかんと出て来たのは圧巻だったよな!ボナルドとディンガーベルがくるくる回って可愛かったのだよ//」
「プロレスラーみたいだったよね」

早速クラピカとパレードトークに花を咲かせていた。
キルアはがくんと項垂れる。
その拍子に肩を叩かれた。

「まぁまぁそう落ち込まないでよ◆せっかくのデートが台無しだろう?」

「あ、起きてたの?イルミの針刺さってんのによく喋れんね」

ヒソカは額の針を抜き取った。
即座に血が噴射するが変態ピエロは一切気にしていない。

「ここで会ったのも縁だし、たまにはWデートも素敵じゃないか♪」

「ふざけんな!お前らおっさん達と一緒にいたら加齢臭が移るだろ!」

「僕はホワイトムスクの香りしかしないから大丈夫」

「…ムスクの香水使ってんのかよ。リアルすぎてきもいんだけど」

とにかく!
ヒソカの鼻先に、びしっと人差し指を突きつけた。

「ここでお前達が何してても何も言わないから俺達に干渉すんなよな。次に覗きなんてしてたらイルミと一緒に黒コゲにするかんね」

ヒソカは困った様に微笑しながら肩をくすめた。

「君がそう言っても彼らはそうじゃないみたいだよ」

「んあ?」

ヒソカに気を取られてクラピカを見ていなかった。
顔を向けるとクラピカどころか、イルミもいない

「へ?」

よーく耳を凝らしてみると

「ぶ、ブーさん//」
「あんなメタボ熊のどこがいいの?中身はただのおっさんだと思うよ」
「キルアはブーさんが大好きだぞ」
「それ本当?ブーさんのクッキー貰ったらキル喜ぶ?」
「もちろんだ!」
「スタスタスタスタ(駆け足)」
「うおー!ブーさん確保ー!!!」


「 」

眩暈がした。
イル兄やっぱりマジで死ね。



ーブーさんのバニーハントにてー

もうこうなったら諦めるしかない
キルアはヒソイル共を空気だと思うことにした。

すると不思議なことに、彼らの存在があまり気にならなくなるものだ。
クラピカは変わらずに目を輝かせて隣にいるし、キルアの機嫌も少しずつ回復していたのである。

ブーさんが斧を振り上げて出っ歯のうさぎ達を追いかけ回していたり、ハチミツを投げつけていたり。シュールなバニーハントの世界観が反映されたトンネルの中を可愛らしい外装のトロッコが音を立てて進む。

キルクラ組とヒソイル組は一番前と一番後ろという形で、離れて座っていた。


「ねぇクラピカ、パレードがなかったらここにこなかった?」
「え?」
「それ目当てなら別に俺とじゃなくても良かったのかなーなんて」
「そんな訳がないだろう」

いじける様子のキルアが可愛らしくて、クラピカは小さく笑った。

「パレードがなければ確かにここにはこなかったな。ならば別の場所にお前を誘っていただろう。私はお前と一緒に過ごしたかっただけなのだよ」
「…本当?」
「ああ」

薄暗いトンネルの中でも分かる。
俯いたクラピカの顔は赤かった。

「そっか!安心した」




「ねぇイルミ、パレードがなかったらここにこなかった?」
「うん(即答)」
「僕と一緒に過ごさなかった?」
「うん(即答)」
「本当に?」
「うん(即答)」
「本当の本当?」
「うん(即答)」
「ふふ、もしかして照れてるのかい?」
「嘘の通じない相手に嘘はつかないよ」
「……」



「ストーカーしているくらいなんだから、てっきりゴンを狙っているのかと思ってた」

キルアとヒソカは、休憩用のベンチに横に並んで腰掛けていた。

少し先にはブーさんと不思議の国のマリアが風船を配っている。
群れるちびっ子達の中に、イルミとクラピカも紛れていた。

「狙っているさ。ゴンも、クラピカも、君もね」

ボクの大事な玩具だからね。
独り言のような呟きに不穏な響きはなく、キルアもそうなんだという軽い気持ちで相槌を打つ。

「イルミは違うの?」
「違うよ。彼は玩具じゃない」
「へぇ、本命ってわけ?」
「うーん…それも違うかなぁ」

ヒソカは含み笑いを浮かべたまま額を抑え、考え込む素ぶりを見せた。


「どうなんだろうね。君達に対する気持ちを恋だというのなら、イルミに対するボクの気持ちはあまりに薄すぎる。恋でもない、執着心もない、普通の好きと違うなら、友情の域を出ていないのかもしれないよ。人一倍深くはあるけどね」

ヒソカがそう言い終えた時だった。
ぼんやりと見ていたごみ箱がいきなり膨らんだと思ったら


ドカン。
爆発した。


「え」

即座に粉塵が巻き起こり、悲鳴が上がった。
砂埃に苛まれて目が開けられなくなる。
何が起きたのか分からない。

ただ片腕で顔を覆い、爆風に飛ばされないように必死で耐えることが精一杯だった。

「クラピ…」

クラピカは?
彼はごみ箱のそばにいたはずだ。

ならば…どうなった?

嫌な予感が押し寄せる。
前に進もうにも目が開けられず、何かの破片が絶え間なく肌を叩きつけ、限界だった。

「くそっ…!」

飛び上がろうとした瞬間に腕を掴まれた。
即座に抱きこまれて身動きができなくなった所で、自分を抱える誰かは凄まじい速さで移動する。

こんな芸当ができるのは身内しかいない。

「イルミ…」
「目、やられた?」

広場から少し離れた所に下ろされ目を開けた。
眩しさに目が眩んだが、徐々に慣れる。
害はないようだ。

「クラピカは?」
「諦めな。一番近くにいたから、とてもじゃないけど助からない」
「……」

その横にいたのはお前だろ?
何で近くにいたクラピカを置いて、遠くにいた自分を助けたのさ。
俺を助けるくらいなら、クラピカを助ける方が簡単だっただろ。



とは、言えなかった。



イルミの右腕からは血が流れている。
命がけで助けられた分際で文句を言うなど。

できるはずがないだろう

広場を中心に救急車とパトカーのサイレンの音が鳴り響き、係員が忙しなく動いている。大声で急き立てながら来客達を出口へと誘導し、園の中には騒がしい緊張が走っていた。
迅速な対応に感心する気にもなれなれず、ただ呆然と立ち尽くす。


「マジかよ…」

がくりと力が抜け、あっという間に立てなくなった。

何でだよ
さっきまで一緒に笑ってたじゃん。
何でこんなに簡単に変わっちゃうんだよ。

こんなのおかしいだろ。

「ねぇ、キル」

よく分からない感情に呑まれている中で
イルミの声が聞こえた。


「ヒソカは?」


イルミの声に抑揚はなかった。
振り返ってみても、いつもの無表情に変わりはなかった。
だが、変な違和感があった。

「…分かんない」
「…ふーん」

心なしか元々青白い顔が更に青く強張って、泣き出しそうに見えた。
錯覚ではないと即座に思った。

いつも見るイルミの表情
初めて見たイルミの感情

どんな言葉をかけるべきか
キルアは戸惑った。

「ねぇ…イル兄」

「大型テーマパークを狙ったテロじゃないかな。派手に暴れたかったんだね。さ、帰るよ」

飄々と踵を返し何事もなかったのように道を歩く。
いつものイルミの後ろ姿は、確かにいつもとは異なった。

「…寂しいの?」
「何で?キルが生きてれば何の問題もないよ。誰が死のうが関係ない」

じゃあどうしてこっちを向かないんだよ。

兄の姿がクラピカと重なった。
彼も時々こうやって背を向け強がるのだ。
そうすることで壁を作り、誰の侵入も許そうとしない。
手を差し伸べたいこちらがどれほどのもどかしさを噛みしめるのか、考える素ぶりも見せないで。


「やぁ。ここにいたんだ」

不意に声がして振り返る。

「…クラピカ!!」

そこには血まみれで意識を失ったクラピカと彼を抱えるヒソカがいた。

即座に駆け寄り椅子に寝かせ、しばらくすると

「…う」

小さく眉を顰め、ゆるゆると瞳が開く。
それを確かめたキルアは何も言わず
華奢な身体を思い切り抱きしめた。





「ねぇ、何で助けたの?」

イルミの予想通り、爆弾を仕掛けたのは広場に大勢が集まる時間を見計らい無差別テロを目論んだ犯罪組織によるものだったらしい。
怪我人は多数いたものの死人は出なかったのは、不幸中の幸いなのだろう。

橙色の夕日が滲む川沿いを肩を並べて歩きながらそっと呟かれたイルミの問いに
ヒソカは特に何も考えずに答えた。

「それは勿論、大事な玩具に死なれたら困るからね。充分に遊んでもいないのに勝手に壊れられたら困るだろ?」

「あそこにいたのがキルでも助けた?」

「当然」

「ふーん。ヒソカが誰を玩具にしようがヒソカの勝手だし、どうでもいいけど」

ヒソカにとっての玩具とは
おそらく殺すのが楽しみな輩が対象になるのだろう。

「どうでもいいけど。キルを殺したら、俺がお前を殺すからね」

変わらぬ口調で放たれた言葉には
決して浅くはない殺意が含まれていた。
ヒソカは涼しげな顔でそれを受け流す。

「お互い様だろ?ボクの玩具に手を出したら、いくら君でも許さないよ」

ヒソカもまた、殺気を込めて警告した。
イルミの手によって散る最期も
悪くはないのではないかと思いながら。


「いい加減血拭けば?」

同様にさらりと受け流したイルミ、半ば呆れて流血したままであるヒソカの額を見た。
額だけでなく腕や足、身体の至る所から血が流れており、その姿は見るからにホラーだった。
ヒソカは楽しそうに首を横に振る。

「僕は血が好きだからね」
「自分の返り血は拭いたくせに」
「うーん、彼の顔体を拭いたのはキルアだよ。僕はそんなことしないさ。玩具の一人が自分の返り血を浴びた姿なんて、中々興奮するじゃないか」
「やっぱヒソカってきもい。死ねばいいのに」
「ぶっ」
いきなり顔面にタオルを押し付けられた。

そのままゴシゴシされる。イルミに顔を拭かれているという事実は興奮するが傷が開く。若干痛い。いや、超痛い。

「イルミ…嬉しいけど…ちょっと…優しくして欲し
「ガリガリガリガリ(超高速)」
「いでいでいでででであぢいあぢぃ」

痛みを通り越して熱かった。
やっとこさタオルが離れたと思ったら、抉られてもっと深くなった傷から更に流血した。フラフラする。
出血多量で死んだら笑えない。

「血が好きならもっと怪我すれば?」
「……」

イルミは道端にタオルを投げ捨てた。
長い黒髪が俯いた顔を隠し、表情が見えない。
見えたところで、きっといつもの無表情なのだろうが。

でも。

白くて冷たい手のひらにそっと触れ、優しく包み込んだ。

「いい大人が何してんの?気持ち悪いんだけど」
「うん」
「ヒソカが気持ち悪いのは元々だけどね」
「別に嫌じゃないだろう?」
「嫌に決まってるでしょ気持ち悪い。とっとと離してよ」

ズバズバと毒を吐く割に
この手を振り払おうとはしない。

「心配かけてごめんね」
「何言ってるの?心配してないんだけど」

そう言われながらも、
少し強く握った手のひらはやはり振り払われなかった。

そんなイルミを愛おしく思う反面、小さな寂しさがじわじわと押し寄せる。

こんな時しか彼は壁を取り払わないから、今みたいな時しか冷たい手のひらを握れないのだ。

本当はもっと君を温めてあげたいのに。

仕事以外でイルミが自分を頼ることなど
果たして一度たりともあっただろうか?
確かにイルミは強いし助けなど要らないのかもしれないが。

「ねぇ、こっち向いてよ」
「嫌だよめんどくさい」

どうせいつもの無表情のくせに
そんな強がりを見せるのだからこんなことを思ってしまうんじゃないか。
ならば責任くらいとって欲しい。


だからさぁイルミ
いい加減ボクに君を守らせてよ。ねぇ







おまけ
キルクラ組の帰り道




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