手懐け

あの強姦事件から一週間が経った。組長にはバレることなく、なんとかことを収めることができた。ただし、あのあと起きてきて4人をすぐにでもぶっ殺しそうだった向野さんには事情を説明した。

まあ、結局彼の怒りは収まらず、一応立場は上のはずの幹部4人に対して銃を突きつけてはいたが、俺が軽く甘やかしたら、また真っ赤になって縮こまっていた。(それを見てまた4人が銃をぶっ放しそうになっていたがキリがないので放置した。)


あれからなんやかんやと俺に対して世話をやいてくる幹部4人に対して、組長は不信感を抱いているようだが、組長しか見えていませんから嫉妬しないでくださいと柄にもないことを言ったら上機嫌になったので大丈夫だろう。


そういえば、組長が行ってきたという組織のNo.1とNo.2しか参加できない会合には、田嶋さんが同行したらしい。
それはそれは、田嶋さんも思惑がうまくいってよかったな、と思っていたが、次に田嶋さんと顔を合わせた会合では、不機嫌そうにしかめっ面をしていた。

うーん、会合で何か言われたのかなあ。

まあ、もう俺には関係ないけどな。

あ、でも、前の事務所のみんなには久しぶりに会いたいなあ。
組長に言ってみよう。


組長も最初は渋っていたが、唯一の仲間たちなのだと伝えると、なんとか承諾してくれた。門限やらボディーガードやら条件は厳しかったが、久々に組長と離れて外に出るので親離れするような気分だった。


びっくりさせてやろうと思って、アポなしで事務所に乗り込む。
「おひさしぶりで〜す」
ドアを開けると、なぜかどよーんとした空気に満たされていたが、俺の顔を認識すると、全員の顔が明るくなり、騒ぎ始めた。

「み、み、御園さん!!!!!お久しぶりです!!!どうしたんですか!!!!」
どよどよと口々に騒ぎ立てる。

「組長からお許しが出たんで、久々に顔出そうと思って。皆に会いたかったし。」
「み、御園さあ〜ん」
そう言うと、一斉に涙顔になる。

「はは、泣くなって。もう。あ、そういえば、田嶋さんは?今いないの?」
まあ、元の上司なので挨拶ぐらいしておこうと思って来たので、きょろきょろと見渡すが、皆把握していないようだ。

「なんか頭と若頭の会合辺りからずっと機嫌悪いんすよね、田嶋さん。周りに当たり散らしてますよ。」
そう言って近づいてきたのは特に親しかった二宮。
「出世してご機嫌だったはずなのに、おかしいですね。まあもう俺には関係ないんでいいんですけど。そんなことより、久しぶりだし近況聞かせてくださいよ。」
そう言うと、下っ端たちは俺の周りにがーっと集まり、俺は俺は、と話し始める。
このあったかい空気が好きだったなあ、と顔も緩む。やっぱ、いいなあ、ここは。


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