嘘吐きの承諾 | ナノ



これの続きです。
※クレアさんとシオンさんの性格が結構違いますのでご注意ください。







あぁ、これで暫くは退屈しない。ただ純粋にそう思った。


じゃあ明日からよろしくお願いしますねと、目の前で未だ呆け続けている人に向かい貼り付けた笑みを浮かべる。そして何事もなかったかのように踵を返した俺は、さっさと自分の教室へと戻ってしまった。
廊下に響く自分の足音を聞きながら、先ほどの出来事を思い出し笑みをこぼす。放課後ですれ違う人は誰もいない為誰かに見られる心配もない。
長い廊下をしばらく歩き続けていると、自分のクラスを表示するプレートが見えてきて。それを見上げてから俺は古びた扉をくぐり抜けた。
先ほどの余韻が冷めいらぬまま口元を押さえていると、突如背中にかかる重み。首に巻きつくように回された手と背中に密着する体温から、誰かにのしかかられているのだと理解ができた。
自分にこんなことをしてくるのはあいつしかいない、俺はため息を吐きながら口を開く。


「……クレアか」

「うん。なんかシーたんがあまりにも悪巧み全開で破顔しちゃってるからさぁ」


なんかいいことあった?と人懐っこい笑顔で笑うクレアを自分から引き剥がし、その質問には答えず机にかかっていた鞄を手に取る。クレアはそんな態度をとられたことを特に気にした様子もなく、むしろ俺の目の前に立ってわざとらしく肩をすくめてみせた。


「どうせまた女の子に告白されたとかだろ。今度は誰?可愛い系?」

「半分正解で半分間違ってるな。……まぁ可愛い部類には入るだろうが」

「……はぁ、誰と付き合うのとかは別にいいけど、毎回毎回一週間で関係終わらすのやめてくれよ。こっちも大変なんだから」


酷い時には次の日にはもう別れてんじゃん、そう言いながら俺の机に腰掛けたクレアは苦笑しつつも言葉を続ける。そいつをジトリと見つめ、なにかしら反論をしてやろうと口を開くが言葉が出てこない。確かにクレアの言ったことは事実で、まったくその通りだからだ。
まぁたとえ誰にどんな事を言われようと今の自分のスタイルを崩すつもりはないが。


「シーたんにこっぴどく振られた女の子たちがこぞって俺に泣きついてくるんだもん、本当にいい加減鬱陶しい」

「それを優しく包み込む、っていう役割がお前だろ?」

「……シーたんって馬鹿だったんだね?あの女たちと同じだな」

「……あぁはいはい、悪かった。そんな睨むなって」


笑顔から一転、目を細めこちらを見つめてきたクレアに向かい手をヒラヒラと振る。
本当にこいつ清々しいほど見た目と中身が正反対だな。
普段なら一発殴って終わらせるところだが、生憎こいつに負い目があるのも確かなのでそれはせず。そんな俺に対しまたまたわざとらしく、そして今度は大げさに肩をすくめてみせたクレアは、次の言葉を発するために息をすった。


「まぁいいけどさ別に。でもちょっと優しくすればすぐその気になる馬鹿女を相手にするのもいい加減疲れるからさ、今度はちゃんとしろよな」

「……つうかその気にさせるのはお前の慰め方っつうか口説き方のせいだろ」

「口説くわけないじゃん今までの子たちタイプじゃないし。俺は派手なのより清楚な感じのが好きなの」

「俺は別にどうでもいいそういうのは」

「ていうかそんなすぐに別れるくらいなら最初から付き合わなきゃいいのに」

「……まぁ所詮はただの暇つぶしだからな」


相手だってどうせこちらの顔しか見ていないのだから。そんな奴らになぜ本気になれるというのだろう。
あ、そういえば、と俺は目の前で大きなあくびをしている奴に向き直る。


「クレア、昨日した賭け覚えてるか」

「え、あぁうん。なに?相手見つけたの?」

「あぁ、見つけた。とびっきりの馬鹿をな」

「へえ、誰?」

「アルバって奴。俺たちと同じ学年の」

「アルバちゃん?え、そんな子いたっけ」

「いや、男」

「…………は?」

「女じゃなくて正真正銘の男だ」

「……マジかよスゲーな」


やっぱシーたんって馬鹿だよね、そうため息を吐きつつ呟く幼なじみの脳天へめがけ拳を飛ばして。



さぁ、ゲームの開始といこうじゃないか。











130411



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