届かない夢
「とりあえずじいさんにでも連絡して……」
「ちょ、ちょっと待ってくれグリーンさん!」
ポケギアを取り出し、きっとオーキド博士のところにだろう、連絡をしようとしたグリーンさんを引き止める。グリーンさんはそんな俺を見て一旦ポケギアから目を離し、どうした?と疑問を投げかけてきた。
どうした、そう言われれば反応に困る。
でも、分からないのだ。
犯罪者ってなんだ、なんでこんな人が。罪だなんて一番無縁そうだったじゃないか。
「は、犯罪者って……」
ようやく絞り出すこができたその声は、情けないほど震えていて。きっと今の俺の顔は困惑だとか動揺だとかが入り混じった凄まじいことになっているだろう。
そんな俺の姿を見たグリーンさんは、自分のポケットから取り出したポケギアを一度しまい、苦笑しながら言葉を発した。
「大丈夫か、シルバー」
「……、一応」
首筋に流れ落ちる嫌な汗を拭い頷く。
脳裏に浮かんだ自分の父、かつて犯した自分の罪。
ああくそ吐きそうだ。
「とりあえず立ち話もなんだし座ろうぜ。なんか温かい飲み物でも持ってきてやるよ」
そうグリーンさんに促され、俺は近くにあったソファに腰掛けた。真新しいクッションが心地よい。
先ほどラッキーのうたうで眠らされたNという男は、今現在も眠り続けている。ただし眠っている場所が床から家主のベッドになったが。さすがに怪我を負っているし、床に転がしておくのも気が引けると言ったグリーンさんが、先ほどオーキド博士に電話をかける前に布団へと運び入れたのだ。
「シルバー、お前コーヒーとココアどっちがいい?」
「緑茶」
「おい選択肢スルーか」
顔を引きつらせながらも、グリーンさんは戸棚から茶葉を取り出す。ポットから急須へとお湯を注ぎ、そしてさらにそれをそのまま湯のみへと。お湯からお望みの緑茶へと早変わりしたそれを片手に、グリーンさんは俺が腰掛けているソファと向かい合わせにあるイスに座った。
「少しは落ち着いたか?」
「すまない」
「いや、いいよ。普通驚くって。実際俺もビビってるし」
まさかこんなところで出会うとはなぁ。
そう呟く目の前の人物を、俺はまじまじと見つめた。頭をかきながら苦笑いするその人からその心理をうかがうことはできない。
この人はあの男をどうするつもりなのだろうか。やはり警察へと引き渡すのだろうか。
いや、それよりも。
「あいつは、……Nはいったい何をしたんだ?」
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