好きと好き
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「トウヤ、もしボクが君に好きだと言ったら驚くかい」
「……あー、どっかで頭ぶったんだなぁって思う」
そう答えながら、俺は一向に釣れる気配のない釣り竿を水面から釣り上げた。こうしてもうかれこれ3時間。くそ、まったく釣れねえじゃねぇかなにが穴場だよあのジジイ。
そんな俺の様子が気にくわないのか、途中から釣りに参戦したNは少しムッとした顔をして。まぁ参戦と言ってもただ隣で喋り続けているだけなのだが。まったく迷惑この上ない。いい加減蹴りでも入れて追い返してもいいんじゃねえかこいつ。
「頭は打ってないよ!ボクはトウヤが好きなんだ」
「ライク?ラブ?」
「どっちもさ」
「意味分かんねえんだけど」
はぁ、とため息をついてから隣にいる電波へと目線を移す。もう今日は釣りは諦めた。また場所を移動させて挑戦しよう。
不機嫌そうな俺とは対照的に満面の笑みで笑うそいつは更に言葉を続ける。
「ボクは昨日トモダチと話してたんだ。誰かを愛するということについて!」
「なんつー話しをポケモンとしてんだお前は」
「ついでに好きと言う感情も教えてもらった。そしたらびっくりしたよ。教えてもらったその感情は、なぜかトウヤにピッタリ当てはまったんだ」
「……ちなみにその教えてもらった内容は」
「えーと、確か……」
早口でまくしたるそいつにそう問うと、首を傾げ少し考えるような仕草をする。しばらくの沈黙が続き。そしてようやく思い出したのか、そいつは顔を明るくさせた。
「まず一緒にいるだけで笑顔になれる人!」
「……が、好きな人だと?」
「うんまだ他にもあるけどね。ボクはトウヤを見ているだけでいつも笑っちゃうよ。特にこの前オタマロに顔面ハイドロポンプされた時なんかどうしようもなく笑いが込み上げてきて」
「いやそれただバカにしてるだけじゃね?」
あれはさすがの俺でも死ぬかと思った。いや真面目に。
Nはそこまで言うと、思い出してしまったのかまた笑いこけ始めた。そういやこいつ前んときもそうとうウケてたよな。そん時は腹が立ったから一発殴ったけど、今日は二、三発くらいやってもいいんじゃないだろうか。
「つうか話しを聞く限り果てしなくライクの方じゃねえか」
「今更だけどトウヤがライクとかラブって言うの違和感あるよね」
「黙れ。どうせお前のことだからベルやチェレンにもピッタリ当てはまったんだろ」
「よく分かったじゃないか。ちなみにボクのトモダチたちにもだよ」
「……そうかそうか」
もうやだこの電波。
まったく何も分かってねえ。
俺は隣でふにゃふにゃと笑うそいつを見てからため息をつく。
「あのな、N」
「なんだい?」
「……やっぱなんでもねぇ」
まぁそれの本当の意味は俺が追々教えていくということで。
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どうしてこうなった。
130324
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