「記念すべき第1回!ポケモンバトル大会開催ぃいい!」


「…………はぁ?」



走って走って走って、いい加減体力も限界に近づいて来た時に聞こえて来た声。その声とほぼ同時に、大音量の熱気につつまれた叫び声も聞こえてきた。
なんだ、と怪訝な顔をして立ち止まる。前を走っていたNはイーブイをようやくつかまえたらしく、両手で抱きしめるように抱えていた。

左右に辺りを見渡すと、どうやらどこかの街へ来たらしい。どこの街なのかはまったく分からないが。分かった事と言えば、大きなデパートとキレイな噴水があること。くそ、タウンマップも買っておくんだった。
そして、その噴水の前にあるボロいステージ、それを囲うようにたくさんの人が群がっていた。
ステージに上がっている小太りの男がマイクを片手に叫ぶ。


「そして記念すべき第一回目の優勝者の商品はぁあ!賞金20万円と……なんとっ!カントー地方最強のジムリーダー、グリーンさんと戦う権利が得られます!あ、ジムバッチは貰えないんですけどね!」


より一層強くなる歓声。軽く耳が痛い。グリーンだかなんだか知らないが、そんなにみんなの憧れの相手なのか。
両手で耳をふさぎながらNに話しかける。


「おい、なんだよこれ」

「ボクもよく分からないけど、なんか大きな大会のポケモンバトルがあるようだね。そこの看板に飛び入り参加大歓迎って書いてあるし……トウヤも参加すれば?」

「バカ言うな。そんなめんどくさそうなもん絶対出ねぇ」

「でもトウヤもうお金すっからかんでしょ?」

「…………」



……飯なし宿無しか、ここで少し我慢して賞金をもらう、か……。
いや、これもう選択肢無いに等しくね?鬼畜すぎね?
目の前でまたまたふにゃりと笑うNを思わず殴りたくなる衝動を抑えながら小さく舌打ちをする。



「……出るからには、徹底的に叩き潰すからな」

「凄い自信だね、優勝する気満々じゃないか」

「当たり前。この俺があんなやつらに負けるわけないだろ」

「…………キミがかなりの自信過剰だと言う事はよく分かったよ」

「そうか良かったな、これで俺たちまた1つ仲良くなれたじゃん」

「なんか違う気がするんだけど」



ボクも、もう目を逸らしちゃいけないからね、そう言ってNは抱きかかえていたイーブイをひとなでする。
いや、なにが?



「バトルはまだちょっと好きになれないけど……でもボクは知りたいんだ。
トウヤ、参加するのはキミだけど、キミの戦う姿をキミの後ろで見ていてもいいかい?」

「あ、無理」

「…………知ってるかい、トウヤ。こういうのってけぇわいって言うらしいよ」

「ちなみにお前は知ってるか、それ最近使うやつなかなかいないから」

「えぇ!そうなのかい!?」

「あぁ本当本当」



まさかボクの知識に間違いがあるなんてなんてことだてっきりこの知識はもう(以下略)とブツブツ呟くNを無視して俺は大会にエントリーするために受付らしきところへ歩く。
そこにいた貼り付けたような笑顔を浮かべた女性に、参加受付ですか?と聞かれたので頷いた。
すると差し出された紙。俺はそこに自分の名前を書く。


「エントリーNo.148。イッシュ地方から来たトウヤくん、ね。いきなりで申し訳ないけれど……くじの関係であなたの戦う順番もう次なの。準備してくれる?」

「……とりあえず分かりました」



さぁ、サクッと戦ってサクッと終わらせるか。