「……てゆーか、やり方が古すぎんだよ」


いつの時代のやり方だよこれ。めんどくさ。
目の前で未だに怒鳴り続ける男の声を軽く流しながら小さく舌打ちをする。
そんな様子に更に苛立ったかのように一斉に暴言と思わしきものがヒートアップし始めた。
チラチラとこちらに向けられる好奇の視線。それを浴びながら自分の機嫌が急降下していくのが分かった。俺、あんま目立ちたくないんだけど。

隣にいるNに目を向けると、なにを勘違いしたのかこちらを見て微笑まれた。この電波が。


「何円?」

「あ゛?」

「だーかーらー」


自分のバックをガサガサと探る。どうせ金など余るくらいあるし。無くなったらそこらへんにいるトレーナーにバトルふっかけて奪えばいいんだから。


「金、何円ですかっつってんの」


言いながら、バサリと金を地面に乱暴に叩きつける。
呆気にとられてる男たちを横目に見てから、同じように呆気にとられてるNの腕をつかむ。


「行くぞ」

「え、でもトウヤ……」

「うるさい。初っぱなから面倒な事に巻き込みやがって」


Nをほぼ無理矢理引きずるようにして、俺たちはライモンの遊園地から出た。











――――――











「キミは乱暴だ」

「お前は電波だよな」

「……それと口も悪い!」

「お前は頭も悪いよな」

「…………」


今、俺はなぜかNに説教らしきものをくらっていた。まぁ顔を真っ赤にさせて震えながら怒るコイツは恐怖も威厳も感じられないが。
ハッキリ言って怒られる要素がまったく分からない。俺、なんか悪いことしたか?むしろ感謝されるべきじゃね?



「ダメだ、トウヤはなにも分かってないよ」

「まぁお前の言いたい事は残念ながら全く理解できないが、とりあえず伝えたい事は分かった」

「ほ、本当かい!?」

「とりあえず腹へったからなんか食わね?」

「それはキミの気持ちじゃないか!」


いったいいつになればこの電波の機嫌はなおるのだろうか。


「ふーん……じゃあお前はいらないんだなヒウンアイス」

「……食べたい」


そう思いながら何気なく呟いた言葉にNはふにゃりと幸せそうに笑った。
……よし、今度から食べ物で釣ろう。
内心ガッツポーズを決めていると、俺はあることを思い出した。


「そういやお前さ、遠い地方って言ってたけどどこに行くつもりなわけ?」

「あれ、言ってなかったかい?カントー地方に行こうと思うんだ」

「カントー?」

「え、知らないのトウヤ」


Nが少し驚いたような顔をする。悪かったな、ずっと昔から自宅とバトルサブウェイの往復だけしかしてなかったんだよ。


「まぁどんなところかはトウヤの目で見て確かめるといいよ」

「実はお前もあんまり知らないんだろ」

「よく分かったね」

「認めるのかよ」


じゃあ行こうか。そう言って立ち上がるN。
いや行くってどうやって。
俺は思わず怪訝な顔でNを見ていると、Nは両手を広げて叫んだ。


「おいで、レシラム!」