は?レシラム?


Nがそう言ったとたん突如舞い上がる突風。そして空高くから舞い降りてきたのは……特になにもなかった。


「…………」

「……なにしてんのお前」


あれおかしいなと呟き、もう一度呼び始めるN。つかレシラムって確かイッシュ地方の伝説のポケモンだよな?


「……あ、聞こえた!」

「はぁ?」

「……え?……いや、そんなこと言わないでよ……」

「ちょ、お前大丈夫か頭」


確かに頭は最初からおかしいとは思っていたが、まさかここまでとは。
独り言らしき物を呟き続けるNに、俺は無言で軽く距離をとる。きっと今俺がNを見てる視線はとてつもなく冷めたものだろう。
そんな事もお構いなしに独り言をひとしきり話し終わったNはこちらを見て困った顔をした。


「今、レシラムと話していたんだ。カントー地方にはレシラムの背中に乗っていけばいいと思ってたんだけど……ボク以外の人を背中に乗せたくないって」

「…………」

「トウヤ、なんだいその目は」

「いや、電波もここまで来るとなんか……こう、すがすがしいよな」

「?キミの言ってる事は時々難しくて理解できない。また本を読んで調べてみるよ」

「たぶん知らない方が身のためだと思うな」


どうしようか、そう言いながら笑うNは一瞬だけ空を見上げてからまた俺の方を向く。


「どうしたもこうしたも、普通に船とか飛行機使っていけばいいだろ」

「飛行機ってなんだい?」

「え?」

「ん?」



その後、飛行機に興味を持ったNに対して、一時間たっぷりと飛行機の魅力を語る事になってしまった。
……魅力もなにも、俺そこまで飛行機好きじゃないんだけど。