えもん!A
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※@とは繋がっていないドラえもんパロ。
Nさんとゲーチスさんのキャラがまったく違うと思われます、ご注意ください。


「トウえもん!トウえもんんんんんんん!!」
「んだようっせーな……なにその紙きれ」
「テストだよ!今日学校から返って来たんだ……」

バンッと乱暴に開け放たれた扉と同時に聞こえたのはNの今にも泣き出しそうな声。学校から返ってきたテストらしき紙を両手で握りしめている。力を入れすぎているのかくしゃくしゃにシワのよったその紙を見ながら、俺はいつものごとく煎餅を食べる手を止めてNに向き直った。

「……あぁテストか。なに、また1桁?」
「ううん、今回は2桁だよ」
「へぇ、すげえじゃん。何点?」
「10点」
「…………」
「10点」
「いや二回言わなくてもいいから」

その言葉を聞いて思わずため息をつきたい衝動にかられたが、それを思いとどまりやめる。確か前回のテストは8点だった。それに比べて今回は2点も上がったし、まぁなかなかいいほうなんじゃねえの、……いや絶対よくねえよなこれ。
眉を八の字に寄せて俯いてるNに対して俺は呆れた顔で口を開く。

「で、なんでお前はそんなに暗い顔してんの」
「だって……10点だよ」
「前回は8点だったろ。2点も上がったじゃん、すごいすごい」
「きみ完全にボクをバカにしてるだろう」

ずっと扉の前に立ってるのも変だと思ったのか、Nは不満げな顔をしながら自分の部屋に入ってきた。部屋の真ん中に置かれている机の近くであぐらをかいてる俺の横を通り過ぎる。肩からかけられているバックをベッドの上に置き、こちらを振り向かずにそのまま震える声で呟いた。

「……トウえもん」
「なに」
「どうしよう、ボクとうさんに……とうさんにっ……うわあああああん!!」
「いやいやっえええええ!?おまっいきなりなんだよ、なに?あのジジイがどうした!?」
「またとうさんに怒られるぅうう!うわあああ!」
「あぁ……まぁそれはなぁ……」
「トウえもん助けてぇええ!!」
「えぇ……まぁうん。じゃあ、」

ごそごそと自分のポケットを探る。あの白い布切れじゃなくて、普通に自分のポケットを。
確か昨日……と思いながら探っていると、お目当てのものが見つかったのでそれを掴んで取り出した。

「たりらりったたーん。ライター」
「…………それボクの家のだよね」
「あぁ、昨日拾った」

「それでいったいなにをしようって言うんだい」
「燃やすぞ、テスト」
「まんまだね!発想が普通すぎるよ」
「まぁとりあえずほら、あのジジイが帰って来る前に「ワタクシがなにか?」……あちゃー」

後ろから聞こえてきた憎たらしく威圧感のある声に今度は隠すこともなくため息をつく。盛大に肩をゆらして。いったいいつの間に仕事から帰ってきたんだこいつは。
目の前のNは真っ青な顔して慌てて背中にテストを隠していた。

「貴様は、またこのワタクシのかわいいNちゃんに悪知恵を教えようと?」
「黙れジジイ。だいたい今日はNから頼まれてだっつうの」
「ふん、そんなことあるわけがない……と言いたいところですが前にNとあなたに散々騙されましたからね、今度はちゃんと聞いてみますよ。N?」
「と、とうさん?」
「あぁ、今日もかわいさ絶好調ですね」
「おいやめろ吐き気がする」

うえぇ、と舌を出して言うとNの父親、ゲーチスは俺に負けないくらい嫌な顔をしてこちらを見た。しかししばらく睨み合っていると、いきなり長いため息をつき肩を落とし始める。

「N……とうさんよりもこのような野蛮な男の方が大事なのですか!?」
「え、そっそんなことないよ!トウえもんもとうさんも大好きだよ!」
「どっちの方が大切なのかハッキリさせてよ!」
「……どうしようN。俺気持ち悪すぎて身体のどっかのプログラムが故障したみたいだからメンテナンス行ってくるわ」
「いやどんだけ拒否反応示してるんだい」

Nは苦笑いをしてこちらを見てから、ゲーチスの方を向く。大きく息を吸って吐いて、何かを決意するかのようにキッと固く結んだ口を開いた。

「とうさん!」
「なんですか私のかわいいNよ」
「いちいちうるせーんだよクソジジイ」
「ボクっ……」
「はい?」
「今日学校から返ってきたテスト……10点だった」
「…………」
「10点だった」
「いや二回言わなくてもいいから」

チラリとゲーチスを盗み見たら、そいつは口を開けたまま放心していた。そんなにショックだったのか。まぁ2桁っつっても限りなくアウトに近いセーフだからな。セウトだよセウト。
こりゃまた長い説教が始まるかなと、半ば諦めの目線をNに向けているとこの重苦しい沈黙を破る声が聞こえてきた。

「10点ですと!?」
「う、ごめんなさい……」
「N、あなたは……!よくやりましたね!」
「「は?」」
「前回のテストから2点も上がるだなんてっ……!最高ですよN!」
「と、とうさんっ……」
「……いやいやあのな、お前らな?2点だぞ?2点って分かる?」
「分かりますよポンコツ。Nの頑張った証ですよね」
「いや頑張ってねえよ?8から10だぞ?よく考えてみろよなんかおかしくね?」
「と、トウえもん……さっきは褒めてくれたのに……ぐすっ」
「ちょっと、なに私のかわいいNちゃんを泣かせてるんですか殴りますよ」
「やってみろよクソジジイ。返り討ちにしてやるよ」

再び両者睨み合い緊迫した空気が辺りに流れ始めた。
普段から思っていたがこのジジイはNを甘やかしすぎてる。時には厳しくすることだって必要だろう。俺はスッと懐に忍ばせておいた未来道具に手を伸ばした。

「とうさんもトウえもんもそんな睨み合わないでよ!今度はもっとボク頑張るから!」
「え、N……あなたは」
「…………」
「今度はっ……12点を目指すよ!」
「12点!?そんなっ高得点すぎるじゃないですか!」
「…………」
「大丈夫だよとうさん、ボク2人の為に頑張るから」
「…………」
「Nっ」
「とうさん!」
「Nっ!」
「…………だめだこの親子早くなんとかしないと」





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だめなのは私だ。
ちょっとだけ修正。
121203




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