スキャンダル・イヴ 3





発ちゃんDays!

うだるみてぇに暑い夏の夜。お前ら身体壊してねぇか?
みんなのアイドル発ちゃんは、今日も夜空に瞬いてキミたちを見つめてるぜ!

なんとファンイベント速報もあっから、
スタッフさんの今夜の更新待っといてやってくれると嬉しいぜっ(^3^)-☆<ラビュー俺のプリンちゃん!xxx
2013/07/29





なんつって書き込んだオフィシャルブログだった訳だがよ、
「それだとあなたが故人のような書き方ですね。いつ星になられたんですか?」
なんて無表情で笑い噛み殺しやがった邑姜を前に、俺はそっと涙した。
「まぁ、気にする方もいらっしゃらないでしょうけど」
そうかよそうかよ、ド畜生!まぁ、いつもでもアイドル気分を引っ張ってる訳にゃーいかねぇのは、散々方向性模索した俺が一番わかってんだけどよ……。人気低迷元読者モデルの現三枚目アイドル上がりの俺こと姫発は、ちっせぇ事務所の一角で缶詰生活を続けていたりする。

それっつぅのも、まさかの自叙伝発行なんて大見得切っちまったからに他ならねぇ。俺は昔っから作文なんかも得意じゃねぇけど、しゃべりや恋愛相談にはそこそこ定評あるんだよな。ラジオが流行第一線を退いた今、俺がなにか発信できるもの……っつったら、これしかねぇだろ!
そんなこんなでブログで発行のお知らせだろ?数が少なくなったとはいえ、俺のファンクラブ会員のプリンちゃんたちは大盛り上がりって算段だ!しかも今や貴重な読モ時代のお写真つけまーす、発売記念は握手会でーす!なーんつったら、そりゃあもうプリンちゃんわんさかおててにぎにぎ会じゃねぇかよ!
現役時代に果たせなかったプリンちゃんとのよからぬファンイベントを胸に、俺は部屋に籠っている。

そう、くっそ狭い部屋に籠っている。

「なんでだよ!?フッツーは高級リゾートホテルで優雅な執筆活動じゃねぇのかよオイ邑姜!!」
「ろくにPCも使えない方が原稿用紙とシャープペンと消しゴム持って優雅な執筆活動ですか?」
「うぐっ…ってよう!だってよう!」
「大体、高級リゾート地なら遊び回るだけでしょう?締切破ってるんですからね、さっさと書いて下さい。貴方が遅れると私の告知の仕事も滞ります」
「っぐ――ぅ……」

あーあーーあー……二の句が告げやしねぇ……

「……ぐぅ。邑姜!聞け!"ぐぅ!"」
「はい?」
「いや……二の句告げねぇのも悔しいからぐうの音出してみたんだけどよ…」
「バカですか?」
「…可愛くねぇ…」

そうだよ馬鹿なんだよ俺は。落書きだらけの原稿用紙に突っ伏して、セットもされない髪をぐっしゃぐっしゃに掻き混ぜてみた。あーあ、結局自分で自分の首絞めてやんの。そのとき頭をよぎったのは、まだ言葉にするのは躊躇われた"引退"、の二文字だった。

そうすりゃーあの食えねぇジジイのうきうき封神なんざ出演しなくたっていい。ソリ合わねぇ楊ゼンと主役争いに負け続けることもねぇ。邑姜はもっと有能でヤル気あるカッケー第一線で活躍してる役者のマネージャーに付んだろ?俺は晴れて自由の身だろ?自由恋愛だろ?フライデーにも、減ってくファンの数にも怯えなくていいんだろ?

そんな卑屈なコト考えながら、机の上でひっさびさに眠りこけたらしい。ああそうだ、睡眠だって自由になるんだな。……なんでか、あのAD野郎はなんて言って馬鹿にするんだろうな、なんて思ったりしながらさ。
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