「てーん、かっ!」
もう眠ってんじゃないか、ってか帰ったんじゃないかとすら思ってた後ろ頭が見つかって、条件反射の3ステップで抱き寄せた。深夜回った自宅の高層マンション。因みに絶賛半同棲中。…なんだけど、
「……離すさ」
「なんでー!あー、天化補給中ー…潤うー…」
一週間ぶりに吸い込んだ空気は、シャンプーと煙草と、天化の匂い。そのそっけない声がいつものだってのはもう知ってる。俺よりちょっとだけ低い黒髪の襟足が水しぶき飛ばしてて、おお!シャワー済み!そんな感動。そのままでもいーんだけどな、別に。
「王サマ!」
「王様言うなって」
捩って抵抗してる腕の中の筋肉質な背中も、煙草咥えてたんだろう口も、あーもう、可愛いなぁ!
「いーかげん離すさっ」
「嫌じゃない癖に。」
コイツが本気で抵抗したら俺が軽く吹っ飛ぶことはわかってる。それはそれでなんか悔しいけど、飛ばされないだけよし!
「なぁ、どうする?」
たっぷりの吐息に混ぜた声に、震えた黒い頭が下を向く。おー、知ってる知ってる。耳元で喋ると弱いよな。
「…天化、」
「うっさい!」
「いでッ」
もう悪戯始めてた手…に下るかと思った制裁は、靴下の脚をスリッパで思いっきり踏むっつー…。ん?
「なに?なんか怒ってる?」
「胸に手ぇあてて考えるさ」
「はい!プリンちゃん」
ご機嫌直りましたか?って、タンクトップ越しに撫でた久しぶりの胸。おーおー、お約束だけどもうすぐ陥落、
「…がっ…!」
いってえぇえぇ!
え?え!?痛いマジで痛い!なにが起こったか理解不能な数秒が過ぎ、……だぁぁ!コイツ頭突きかー!鼻と目これ両方使い物にならなくなったらどうすんだ…もう。あーあ…どーしてこう、ヘンに荒っぽいとこ変わんねぇの?
「…オイ!天化!」
眉間押さえてる間にスタコラ寝室直行の背中に走った。頭ん中にチカチカ飛んでる天使と星と天化と、柄にもなくさっきまで読んでたプレスリリース記者会見用書類のフォント。
「てんかー!なんだよ?なぁ、」
ドアが閉まる。篭城すんだろ。
…その予想に反して、立ち止まって振り返った目に射抜かれる。と、落ちるの俺の方だったりして。
[ 1/3 ]≪屋上目次
≪TOP
≪INDEX