初めまして
琴音は体育館までの道を軽い足取りで歩いていた。
今日はバスケ部との初めましての日。
心做しかわくわくしている自分に苦笑する。
少し遅れちゃったな、と思いながら体育館に入ると、黒子の存在に気付いた2年生が叫び声を上げているところだった。
『…黒子くんってどこでもそういう立ち位置なの?』
「いえ、意図してるわけではないんですけどね。」
そしていきなり現れ 黒子と平気で話をする琴音にも驚いていた。
「琴音ちゃん、黒子くんのこと見えるの?!」
『やだなぁ、黒子くんは幽霊じゃないですよ。』
「いやそうじゃなくて!!!」
わいわいがやがやと騒がしい体育館。
「てか誰?1年?」
赤髪のでかい男の子からの視線に気づき にこ、と琴音は笑いかける。
『あ、ご挨拶遅れました。今日からバスケ部のマネージャーになりました、1年の澄川琴音って言います。宜しくお願いします。』
ぺこりと何時ぞやと同じようにお辞儀をする。
「で?なんで黒子見えんの?」
『え?同じ中学だったから…?』
かな?と首を傾げる。そういう問題?と2年生も首を傾げる。
その様子を見た伊月は、これじゃ収集つかないな、と苦笑いを零した。
パン!と手を叩く音ではっとする。
『ま、これから同じ部活にいればきっと分かりますよ。練習しましょ練習!ドリンク作って来ますね!』
テキパキと準備に取り掛かる琴音につられて みんなもアップをし始める。
プレイヤーがフットワークを始めると、琴音はそれをじっと見詰めていた。
『…君、軸足に頼りすぎ。もっと左右のバランスを意識してみて。あとそこの君、背中丸めすぎ。少し姿勢よくしてみて、もっと動きやすくなるよ。』
それまで黙って見ていた琴音が口を開いたと思えば、的確なアドバイスを飛ばす。
『そこ、もう少し足上げてみて。筋肉の付き方変わると思うから。』
すらすらと選手の癖を見極める彼女に、リコは目を丸くする。
「(あらら〜…本当に今年の1年は凄い子ばっかりね…)」
ぽかんと口を開けているリコに、日向が声を掛ける。
「カントク!ロードワーク削った分余るけどどーする?」
「あっ…うーん、そうね、ゲームしよっか!1年対2年で!」
リコの発言に1年はぎょっとする。
確か去年は1年生だけで決勝リーグまで勝ち進んでいたはず…
そう思って項垂れる。が、火神は違った。相手が強ければ強いほど燃えるらしい。
『(確かに実力を確かめるにはそれが手っ取り早い…)』
琴音も納得したのかビブスやスコアの準備をする。
コートに対峙する1年生と2年生。
琴音がにやりと口角をあげたと同時に、試合が始まった。
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