勧誘

桜舞い散る 4月ーーー

真新しい制服に身を包んだ1年生が、校舎の中に溢れている。

去年新設されたこの高校には現2年生しか居ないため、単純計算で在校人数が倍になったのだ。

校門から校舎へ続く道は、優秀な人材をゲットしようと2年生が勧誘に力を入れていた。

水泳部、吹奏楽部、サッカー部、野球部、ハンドボール部、調理部…

新入生である琴音は、人の波を物ともせずすらすらと歩いた。声は掛けられども、琴音の顔に物怖じしてしまう上級生も多い。

「君!うちの部活でマネージャーし…ない…」

『私、目当ての部活があるので。』

そう、彼女が目指す部活はただ一つ

男子バスケ部。


その頃バスケ部では、嵐が過ぎ去ったあとだった。

「あれで1年生かよ〜」

赤髪の1年生が去った頃だった。

『あの、』

「はいはーい、ここは男子バスケ、部…です…」

声を掛けた琴音にリコが振り向く。

「あ、あの…マネージャー志望…?」

『はい。募集してませんでした?』

ゆっくりと首を傾げる琴音に、ぶわっとリコの顔が赤くなる。

「「「(可愛い!!!)」」」

その場にいた何人かの心の中が一致した瞬間だった。

『どうかしました?』

「い、いえいえ!それで、マネージャーだよね!仮の入部届け書いてもらってもいい?」

そそくさと入部届けを琴音に渡し、書いてもらうよう促す。

さらさらとペンを走らせ、書き終わったのかリコへ差し出す。

リコが仮入部届けをふむふむ、と見ていたが、ある一箇所でぴた、と止まる。

「て…帝光中…?」

2人目?!と驚く2年生に、琴音はもう1人に心当たりがあった。

影の薄い彼を思い出せば、自然と口許が緩む。

するとその時、誰かに名前を呼ばれた。

「琴音!」

『あ、俊。』

「来てくれたんだなー、俺嬉しいよ。」

親しげな2人にそろりとリコが手を挙げる。

「あのー…2人はどういうご関係で?」

「『幼馴染(です)』」

「「ええええ?!」」

本日2度目の絶叫が響き渡る。

その声に驚いたのかばさばさ、と鳥が桜の木から飛んで行った。

『あっ、この後用事あるんでそろそろ失礼します。またね、俊。』

ぺこ、とお辞儀をすると琴音は去って行った。

「ちょっと伊月くん!あの子帝光中出身って…!」

リコが慌てて出身中学を指さす。

「ああ、あいつ帝光中にスカウトで行ったんだ。もちろん選手として。」

その言葉に唖然とする一同。

「ま、あいつの実力は聞くより見た方が早いさ。」

自分のことではないのに嬉しそうに笑う伊月に、不思議そうに首を傾げる2年生がいた。


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