優越感
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『シーカーマール!』
たたたっ、と玲がシカマルへ駆け寄る。
「んあ、玲。今日任務じゃなかったのかよ。」
『シカマルに会いたかったから早く終わらせてきた!』
ピースをしながらにひひ、と笑う玲に、今日は非番で良かった、と内心ほっとすると同時に少しにやけるシカマル。
可愛いのだ。お世辞や思い上がりなどではなく、本当に。シカマルの彼女である玲は里の中でも飛び抜けて可愛い。
「…じゃあどっか散歩でもするか。」
そのにやけを隠すように顔を逸らせば、ゆっくりと歩き始める。
『あ、この前見つけた雑貨屋さん寄っていい?』
「おう、いいぜ」
他愛もない話をしながら里を歩く。
天気が良く暖かな春の風を受けながらのんびりと。
玲のお目当ての雑貨屋を2、3店舗はしごし、付き合ってくれたから、と言う玲に甘えて甘栗甘で一休みした。
こうした何でもない時間でも、シカマルは常に優越感に浸っていた。
なんせ玲は里一番の美人。
歩いていれば様々な人が振り返るのだ。
そしてこそこそと小声で話をするのも、シカマルは全て聞こえていた。
「(玲さんって彼氏いたんだ)」
「(しかもシカマルさん…?悔しいけどお似合いだな)」
その声が聞こえてくる度に口許が緩んでしまう。
そして偶に緩む口許に気付かれれば、玲にどうしたの?と聞かれてしまうのだ。
何でもない、と誤魔化すのもいつもの事で。
俺は運がないなんて散々言ってきたけど、意外と捨てたもんじゃねぇな、なんて空を見上げながら思う。
『シカマルー!お腹すいた!アイス売ってるよー!』
少し先に歩いていた玲がこちらを振り返りぶんぶんと手を振る。
「じゃあじゃんけんで負けた方の奢りな」
『えー!絶対負けない!』
こんなやりとりですらも幸せだと感じる。
そしてふと思うのだ。
「(あぁ、お前を好きになってよかった)」
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