片想い
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『…おなかすいたー。』

上忍待機所のソファで玲はごろごろと寝転がっていた。

朝から任務をこなし、今は待機中。先程から新聞や雑誌を読み漁り、忍具の手入れをし、緑茶を何杯も入れ直した、が。それでも時間が余るほど暇なのだ。

『あー…お腹空いた…食べ物…』

何かしら食料を求め給湯室の冷蔵庫をガサゴソと漁る。

『何も無いじゃん、もう。今度みんなが食べれるようなもの買って入れておこうかな。』

はぁ、と溜息を吐きソファへ戻る。

上忍待機所は割と日当たりがよく暖かい。外は極寒だろうが、ここにいれば関係無い。ぽかぽかとした暖かさに、だんだんと瞼が重くなる。このまま少し寝てしまおうか、とソファの上で丸くなった。





…がちゃ、と待機所のドアが開く音で微かに意識が浮上する。

入ってきたチャクラの気配は…カカシだ。カカシならまあいいか、とそのまま再び眠りにつく。

「…ったく、なーんでこんな所で寝てるのよ。誰かに襲われたらどうするわけ?」

呆れたように肩を竦めながらカカシは呟く。

当直室から毛布を持ってくると、玲にそれを掛けた。

そして隣のソファに腰掛ければ、さて、と先程甘味処で買ってきた団子を取り出す。甘いものは苦手だが、ここの団子は食べられる。甘過ぎず、口の中で程よく溶ける感じがなんとも言えない絶妙な美味さを醸し出すのだ。

ぱくり。一口頬張れば、口の中に広がる餡子の風味。あぁ、美味しい。もう一口、頬張ろうとしたその時。

ばっ、と玲が飛び起きた。

「な、え、どうしたの玲…」

いきなり飛び起きた玲にぱちぱちと瞬きを繰り返すカカシ。

玲は自分が飛び起きたことに自分で驚いているのか、少々眠そうな目を見開いている。

そしてカカシの持っている団子をじっと見詰めながらゆっくりと首を横に振る。

『い、いや…なんでもない…』

きゅるるる。玲が言い終わる前に何処からか小さな悲鳴が聞こえた。

ぷっ、とカカシが吹き出す。

「お腹空いてるの?」

その問いに微かに頬を赤く染めれば玲は頷く。

『お、美味しそうな匂いがして…起きた…』

恥ずかしそうに目を逸らしお腹を摩る。

くすくすと笑いが止まらないカカシはもう一本団子を取り出せば、ほら、と玲に差し出す。

『え、いいの?本当に?』

「いいよ、お腹空いてるんでしょ?」

こくこくと頷けば差し出された団子を受け取る。いただきます、と言い団子を頬張れば、眠そうな目が更に垂れた。

『ん〜〜っ、やっぱり団子って美味しい!最高!』

もぐもぐ、ごっくん、と効果音が聞こえてきそうなほど美味しそうに食べる玲に、カカシは口布の下で口許を緩めた。

そしてぽん、と手を叩く。何かいいことを思い付いたかのように。

「そーだ、今度お礼にご飯作ってよ。玲の手づくり。」

『え、いいよ?私のなんかで良ければ。』

その言葉にカカシはぽかん、と口を開ける。てっきり面倒臭い、と跳ね除けられるものだと思っていたが、言ってみるもんだな…と内心喜んでいた。

「ほんとに?じゃあ今度お邪魔しようかな。」

『どうぞどうぞ、味の保証はしないけど。』

悪戯っぽく笑った玲に、あぁ、今日も可愛いな。と柄にも無く心で囁いた。



「(早く俺の気持ちに気付いてよね。鈍感ちゃん。)」

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