行動で示しましょう。
「とぉーるー」
「あれ、なまえ。どうしたの?」
「んーなんとなく」
お昼休み。いつもは岩ちゃんとご飯食べてるんだけど、さっき用事あるって言ってどっか行っちゃったから、屋上で一人ゆっくりしていたら、愛するなまえがやってきた。
「なんか用事?」
「ううん」
「ふーん…」
いつもより俯き加減で、口数が少ないなまえ。
しかもちょっと照れてる?
もしかして…。
「及川さんに会いたくなっちゃった?」
「…っ!違うし!」
まさかのビンゴ。
本当に俺の彼女は可愛い。
「かーわいい」
「もう帰る」
拗ねた顔も可愛いよ、なんて言ったら本当に帰りかねない。
「ごめんって。おいで?」
と隣を叩けば、拗ねた顔のまま少し距離をとって俺の隣に腰を下ろした。
「もっとこっち」
腰を引き寄せれば、なまえは拗ねた顔から照れた顔へ。ん、この顔が一番好き。
「まさか昼休みまで会えるなんて嬉しいよ」
「もう徹ってばなんでそんなサラッと言うの…」
え?だって愛は言葉にして伝えないと。
あと、
「なまえのこと好きだからねー」
行動ね。頭を撫でてあげれば少し嬉しそう。
「馬鹿」
「なまえも行動で示してね?」
そう言って自分の唇を指差せば、なまえに軽く頭を叩かれた。
「恥ずかしいから無理」
「えー及川さんのこと嫌いなの?」
「そんなわけないで…っ、馬鹿!」
そんなわけないでしょ、か。
思わず俺がにやけてしまった。
するとなまえは、じっと固まって何かを悩んだあと、頷き、俺の襟を掴むと引き寄せて俺の唇に自分のを一瞬だけ当てた。
「はい、行動で示したからね!」
なまえはそう言って立ち上がるとスカートを翻して、早足で屋上から出て行った。
屋上の重い扉が閉まる音だけが響いた。
「あー…やられた」
自分の顔が熱いのが分かる。
ほんっとなまえは、たちが悪いんだから。
行動で示しましょう。
(「あーもう恥ずかしい…!」)
あとがき
振り回しているつもりでも、めちゃんこ可愛いツンデレなまえちゃんに、実は振り回されている及川さんでした。
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