不器用だけど、
今日はすこぶる調子が悪い。
朝からなんとなく体調が優れなくて、放課後の今、ものすごく身体が怠かった。
「なまえ、テーピングできねぇ!」
「なまえさん!フォーム見ててくれますか?」
「おーい、なまえ」
「なまえー、木兎がウゼェ」
「なまえ木兎をどうにかしてくれ」
休むことなく呼ばれる名前。
頼られていると実感できて、とても嬉しい。
けれど今はもう嫌がらせにしか思えない。
特に木兎は今日は本当に大人しくしててよね…。
木兎に怒りを覚えつつ、部員達の元へ駆け寄ろうとした時、
「なまえさん」
赤葦に呼び止められた。
しかも少し怒っているようだ。
木兎が何かやらかしたかな、と思いつつ返事を返す。
「ん?どうかした?」
「こっち来てください」
「へ?」
腕を引かれて体育館から出された。
迫力負けして素直に着いて行く。
「ど、どうかしたの?」
「なんで体調悪いの黙ってるんですか」
そう怒られた。
…なんで赤葦は分かっちゃうかなぁ。
「ごめんね。でも少しだけなの。部活には支障ないから」
「ダメです。少し休んでいてください」
ぴしゃりと言われてしまって、もう逆らえない雰囲気。
「そんな怒らないでよう…」
「怒ってません」
体育館の外のベンチに座らされた。
そして赤葦はそのまま体育館へと戻ろうとするものだから、思わずジャージの裾を掴んでしまった。
「赤葦、ありがとう…。気付いてくれて」
「……なまえさんのこと見てますから」
私の頭に大きな手を乗せて、そんなことを笑顔で言うものだから、怠さなんてすっとんで、今度は心臓が痛くなってしまった。
「赤葦のバカ……」
不器用だけど、
(「優しい赤葦が好きだよ」)
あとがき
赤葦くんは心配して怒ったりしてくれそうです。
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