「粉砕」
「!ジェノスさん…!」
ビルの屋上には、煙を上げ膝をつくジェノスさんがいた。
更にそこにはジェノスさんの他にもう一人、S級ヒーローのシルバーファングさんがいた。
S級ヒーローが2人いてもどうしようもなかったのかと、改めて隕石の脅威に震える。
わたしはサイタマさんの肩から降ろされ、ビルの屋上に膝をついた。
「じいさんこいつら任せるぞ。」
「だ!誰じゃねキミは?」
「俺はヒーローをやっている者だ。避難してなじいさん。」
わたしはジェノスさんに駆け寄った。
機械の体がかなり熱くなっている。
「ジェノスさん!」
「ソヨカゼ…か。お前…なんでここに…。」
「サイタマさんがジェノスさんといれば安心だって…でも…。」
ジェノスさんは、おそらくエネルギーを使い果たしてしまったのか、なんだかぐったりとしている。
見上げた空には、大きな隕石。
こんな巨大なものと、ボロボロになるまで戦っていたのかと思うと、胸が痛くなる。
わたしには何も出来ることがない。
わたしは、下唇を噛んだ。
サイタマさんが大きく構え、物凄い勢いで飛び立った。
衝撃波が伝わり、ビルの屋上にヒビが入る。
「うわ!」
わたしはその勢いで尻もちをついた。
「先生!」
「俺の町に落ちてんじゃねえ!!」
強烈な一撃が放たれた。
隕石に、次第にヒビが広がっていく。
そして小気味良いほどの破壊音。
「砕きおった!信じられん!」
シルバーファングさんが額に手を当てて驚愕の声を上げる。
「やっぱり…!やってくれた…サイタマさんが…!」
わたしはジェノスさんを支えながら歓喜に湧いた。
しかし、それもほんの一瞬だった。
「だが…落ちてくるぞ!」
砕かれた隕石の破片が降ってくるのが見えた。
わたしは咄嗟にジェノスさんを庇う。
「!!な、何をしているんだ…ソヨカゼ!死ぬぞ!!」
「でも…ジェノスさんは体が!」
自分でもそんな命を捨てるような行動に出たことが驚きだった。
我ながらすごい判断をしたと狼狽し動けなくなっていると、目の前にシルバーファングさんが立ちはだかった。
「ジェノス君動くな。まぁ言われなくてももう動けんじゃろうが。」
「シルバーファングさん!?」
「くっ…。」
「お嬢ちゃんもそこにおれ。」
「!!」
シルバーファングさんは、独特の構えになる。
「守っちゃる。」
そして降り注ぐ隕石群を、手で破壊していった。
しかし、わたしは大きな衝撃の後足元がぐらりと揺れたことに気付く。
「わあ!ビルが…!」
「崩れる…!」
シルバーファングさんは、咄嗟にわたしとジェノスさんを両脇に抱えて跳び上がった。
「す、すみません…大丈夫ですか?」
「気にするなお嬢ちゃん。」
優しいシルバーファングさんに安心したのも束の間。
眼下に見えたもの。
崩れたのはさっきのビルだけじゃない。
「町が……。」
わたしは思わず、声を漏らした。
それから、誰も何も言わなくなった。
公開:2017/1/22
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