目覚めて隣に君が居るのが


瞼の裏が、赤く燃えている。
朝め。
懲りずにまたやってきたのか。

寝起きの乾いた視界では雑多に見えた景色も、欠伸一つで途端にクリアになる。
でも、突然視界に入る情報が多くなってしまって、思わず目を閉じた。

前までなら、こんなふうに訪れる朝を、ひたすら嫌悪していた。
だけど今は、目覚めることをそれほど嫌とは思わない。

心地良い。
また眠ってしまいたくなる。


掛け布団を肩まで持ち上げると、何かに引っかかるのに気づく。
もぞもぞと横で動く存在に、更に幸福感に包まれる。


ああ、いる。

そうだ、1人じゃなかった。


腕を伸ばして、引き寄せる。
ぬくぬくとあったかい。

「んー…。」

篭った唸り声が上がる。
無意識にか、布団の上を泳いでいた手がおれを見つけて小さく反応する。

寝癖がついてぐちゃぐちゃの髪を撫でてやる。
くすぐったそうに顔を歪める。

乱れた髪への恥じらいからか、顔をおれの胸に押し付ける。
目を手でゴシゴシと擦ると、胸の辺りが擽ったかった。

おれを見上げる顔。

ゆっくりと開かれる目。


「…ん…おはよぉ。」

欠伸と一緒に漏れる、擦れた声。
ぼやけた視界も、いずれくっきり見えるようになるだろう。

そして目が合うと、きっとにっこり笑ってくれる。


ああ、幸せだ。

「おはよ、日和。」

目覚めて隣に君が居るのが。


fin.


公開:2016/10/16/日


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