目を通しておけ、と言われて貰った書類にはこれから入る学校の説明、そして俺の履歴書が書かれていた。
ちなみにジジイは書類を渡して早々にどっかに行った。きっと仕事だろう。相変わらず忙しそうな人だ。……俺は親父と二時間以上一緒にいたことが無い。ついでに言うなら母親とは一回もあったことは無いが、幼少期に病気で死んだと聞かされている。写真くらいは見せてくれてもいいものだが、俺は顔すら知らなかった。

「芳泉学園か……」

全寮制の男子校。いわゆるおぼっちゃま学校というところで、高水準な教育が受けられる。がっちがちな学校だ。そんな場所にいきなり入れられるなんて俺の人生はやはりついてない。
幼少期からありとあらゆる病気三昧。一つの病気をすればすぐ合併症でまたやられる。ようやっと最近病気の気配もなく、自由にできる時間が増えたと思えば学生になれだなんて。通信制がいかに楽だかがここでうかがえる。時間さえあればジジイに通信制の良さを語ってやれたんだが…。

書類は施設の紹介やらなんやらの写真が続く。医療施設なども充実しているらしく、身体の弱い俺には助かる。俺は風邪を容易に肺炎までこじらせるプロだ、何があるかわからない。俺としては全寮制なんてまっぴらごめんなんだが親の決定には逆らえないのが俺クオリティである。いやほら、金出してもらってるから文句は言えないっていうか。
そして俺はさらに書類をめくった。最後に出てきたのは俺の顔写真が載っている履歴書。いつの間に取った写真か分らないということは間違いなく合成写真だろう。生まれてからこの方正装なんて片手で数えるくらいしかしたことが無いのに、写真の俺は背広を着て笑みを浮かべていた。……正直用意周到すぎて気持ち悪い。

そして備考欄に目を移して、俺は絶句した。

「あ、あのクソジジイ…」

編入試験結果:全教科満点

やりやがった。ジジイはやりやがった。書類を握り潰す勢いで俺は怒りに震える。
俺の推測だが、これは絶対いやがらせだ。何をどうがんばったら俺がエリート校の編入試験で全教科満点を叩きだせると言うのか。そもそも、日本語での試験を受けたことすらない俺に何故そんなことをするんだ。(いや、日本語はできるが)裏口入学でどうせすべて偽物の経歴なんだ、無難に適当な数字では駄目だったのだろうか。
せっかく難病を完治させて帰国した息子にこれはあんまりな仕打ちではないかと思う。


そしてそんな俺は今、その芳泉学園の前にいた。つまり編入初日、ぶっちゃけるとピンチである。これからの学園生活で俺は成績に関しては最重要で気を配らなくてはいけないらしい。
俺は風邪予防のマスクを鼻の上まで引き戻しながら既にげんなりしていた。

(しばざき担当)


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