2ダチの墓【END叫び声orいい話】 | ナノ
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当然そうだよな。
俺は、すぐにダチの墓へ向かった。
病院から墓までは一時間ぐらいだった。
着いたのは、だいたい夜の七時くらいだ。

まつげはやっぱりそこにいたよ。
ダチの墓の前でうずくまって、じっとしてるんだ。
そんなことをしていてもしょうがないのに……。
「何やってんだよ! 帰るぞ!!」
俺は、まつげをどなりつけた。

けれどあいつ、立とうとしなかったんだ。
「渡したチケットがないのよ。
彼がきっと、受け取ったんだわ。
どこにいるのかな。
映画に来てくれたのに、わからなかったのかな」
まつげは、墓の方を向いたままぶつぶついっていた。

「みんな心配してるんだ。 早く自分の体に戻れよ」
説得したけど、彼女はしばらくしぶっていた。
「体に戻っても苦しいだけなのよ……」
俺に背中をむけたまま、呟くんだ。
このままじゃダメだ。

俺は、ダチの墓に置いたチケットが、自分の机の上に置かれていたことを話した。
ダチがまつげの前に姿を現さないのは、あいつなりに気を使っていたんだ。
まつげが自分の後を追うのを避けたかったんだろう。
そう伝えたんだよ。

まつげはそれを聞いて、自分の体に戻ると決心したんだ。

俺達は、一緒に病院に向かった。
その頃には、面会時間も終わって、すっかり暗くなっていたよ。
たぶん、九時頃だったと思う。
俺達は、夜間受付の方から、こっそり病院に忍び込んだんだ。
廊下を、一歩一歩進む。

その間中、まつげはずっと黙っていた。
時々、病院から出歩く患者とすれ違った。
消灯後だったから、そんなに会わなかったけどな。
本当に静かなところだったよ。
……病室についても、まつげはためらっていた。





「1、きっとそうですよ」を選んでいた場合



「早く来いよ」
俺は先に入って、まつげを呼んだんだ。
「ねえ、やっぱり私、このままどこかに行っちゃいたい」
「どこかって?
バカなこというなよ」
俺は、半ば強引に、まつげをベッドに引き寄せた。

「ほら、チケット渡しとくからさ。
ダチの気持ちをムダにすんなよ」
そして、ベッドに横たわったまつげの本体に、チケットを握らせたんだ。

……まつげは黙って自分の体に返った。
ベッドの上で、静かに目を開けたよ。
「どうだ、苦しいか?」
「よくわからない。
体の感覚がうまく戻らない感じ」
「……ゆっくり休めよ。
又明日来るから」

俺はそう約束して、病院を出たんだ。

次の日、俺は放課後に、まつげの病院を訪ねるつもりでいた。
とはいえ、早く様子を見に行ってやりたかった。
授業がたるくてしょうがなかったよ。
やっぱり早退しようか、なんて考えていた時だ。
突然、ものすごい悲鳴が耳に響いたんだ。

俺は驚いて、すぐに辺りを見回した。
クラスの奴等は、平然と授業をしている。

続いて、また叫び声がした。
みんなは、黙って黒板の字を写している……。
この声が聞こえないのか?
俺は嫌な予感がして立ち上がった。
授業?
そんなの知るかよ!
周りがざわめくのを無視して、俺は教室を飛び出した。

まつげのいる病院まで走っていったんだ。

……まつげは死んでいた。
意識を取り戻してから、すぐに手術が行われたらしい。
俺が考えていたより、あいつは重症だったんだ。
「それにしても……よっぽど苦しかったんでしょうか。
手をこんなに固く握りしめて……」
側にいた看護婦が呟いた。
手……。
俺は、まつげの手を開こうとしてみた。
死後硬直とかいったかな。
固かったけど、指を一本一本、開いてみたんだ。

彼女の手には、ボロボロになったチケットが握られていた。
俺が授業中に聞いた叫び声は、一体なんだったんだろう。
死ぬ瞬間の、まつげの気持ちだったんだろうか……。

……俺の話は終わりだ。
さあ、次は誰の番だ?


「2、違う気がします」を選んでいた場合



しょうがないから、俺が先に病室へ入ったんだ。

すると、まつげの体が寝ている枕許に、誰かが座っているのが見えた。
ダチだったんだよ。

ダチは、すぐに消えてしまった。
幻だったんだろうか。
いや……。
「どうしたの?」
おずおずと、まつげが部屋に入ってきた。
とにかく、その時は彼女を体に戻すのが先決だったからさ。

俺は、彼女を病室に入れたんだ。

……まつげは、自分の体に戻れたよ。
その後病気も、少しずつ良くなっていった。
俺は、彼女をたびたび見舞いにいったんだ。
そんなある日のことだ。
彼女が、ふとこんなことをもらしたんだよ。

「新堂君、私が寝込んでた時、よくお見舞いに来てくれてたでしょ。
ベッドの側に座ってたの、わかってたんだ……」
よくよく聞いたら、まつげは俺が見舞いに行ってない日にもそれを感じてたっていうじゃないか。

きっと、ダチだ。
まつげが自分の体に戻った日、俺が病室でダチを見たのは、気のせいじゃなかったんだ。

彼女は、今でもふいに、誰かが自分を見ている気がするらしい。
自分の気のせいだということにして、ダチのことを忘れようとしているようだけどな。
まったく、俺のダチもバカだよな。

まつげのことを俺に頼もうとした割には、成仏できないでいるんだから。
まあ、いいけどよ。

え、おれとまつげ?
つきあってなんかないよ。
ダチが怖いもんよ。
いや、っていうより、俺、まつげにいい友達だと思われてるみたいなんだよ。

おい、坂上。
こんなことまで記事にはするなよ。
わかったな。

……え? 何だって?
まだ聞きたいことがあるのか?
んっ、この話はそんなに怖くないって?
なんだよ、お前。
不幸な結末を期待してたのか?
最悪な奴だな。
俺のダチに呪われるぞ。
……とにかく、俺の話はここまでだ。
さあ、次は誰が話すんだ?


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