PS男3話 親友が残した映画のチケット | ナノ
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男主人公・PS追加・ゲームオーバー無し
新堂誠3話
親友が残した映画のチケット


「ダチは、俺に何を伝えようとしたのか。まつげが落ち込んでるから、助けてやれといってるんだろうか」

1、きっとそうですよ

2、違う気がします


「とにかく、まつげの魂を早く連れてくる必要があった。考えられる場所は、学校か……ダチの墓か……」

1、学校』を選ぶと【ENDあの頃にはもう……】

2、ダチの墓』を選ぶと【END叫び声】

2、違う気がします』を選んでいて『2、ダチの墓』を選ぶと【END怖いい話】




お前が坂上か。
日野から噂は聞いてるぜ。

なんでも、けっこう間抜けだって話じゃないか。


1、ひどい!
2、黙って耐える



『1、ひどい!』



怒るなよ、悪口じゃないんだから。
日野がいってたよ、あいつは放っておけない可愛い奴だって。
本当かどうかわからないけどな。



『2、黙って耐える』



ん、何だ? 黙り込んじまって。
坂上、お前って結構暗いんだな。
そんなんで、取材がつとまるのかよ。
まあいいけどな。
あんまり、日野に世話をかけんなよ。



※以下同文※



おっと、ムダ話はこれくらいにしてだ。
俺は新堂誠。
三年D組だ。
……これは、俺が入学したての頃の話なんだけどな。

ダチが、交通事故にあったんだよ。
足を骨折してさ、他にすごい外傷はなかったんだけど、大事をとってしばらく入院していたんだ。
その時に、ダチが病院から電話をかけてきてさ。

退院したら映画に行きたいから、チケットを二枚とっておいてほしいっていうんだよ。
俺は、奴がリクエストした映画のチケットを買った。

……ところが、奴は退院する前に、死んじまったんだ。


1、どうしてですか?
2、え、嘘でしょう?



『1、どうしてですか?』



ああ。
事故にあった時は大丈夫でも、そのうち具合が悪くなるってことがあるんだよ。



『2、え、嘘でしょう?』



嘘じゃないぜ。
俺も、知らせを聞いた時には信じられなかったけどさ。
そういうことってあるんだってな。
事故にあった時は大丈夫でも、そのうち具合が悪くなってしまう。



※以下同文※



脳が出血して、死ぬことも珍しくないそうだ。

そいつはさ、さばさばしてて、陸上とかしてて。
いい奴だったんだけどな……。

俺、その頃、他につるんでた奴がいなかったからさ。
その話とかも人にできなくて、結構もんもんと暮らしてたんだよ。
それにしても、不思議なもんだぜ。
側にいた奴がいなくなるっていうのはさ。

死んだ、って考えるとすごく嫌な気分になるんだけど、妙に現実感がわかなかったりしてな。

奴はどこかに旅行していて、またそのうち帰ってくる……。
そんな気もしていたよ。


1、そうですか……
2、僕も経験あります



『1、そうですか……』



まあ、最初のうちだけだったけどな。
ダチは死んだんだ。
今は、それが現実だってはっきりといえるよ。



『2、僕も経験あります』



本当かよ?
じゃあ、坂上にもわかるだろう。
最初のうちは現実感がないんだけどさ。
そのうち、死んだやつがいない生活があたりまえになっちゃうんだよ。
もちろん、それまでにいろんな思いはするけどよ。



※以下同文※



……ダチのために買った映画のチケットはムダになっちまった。
そんなことを考えながら、俺はある放課後、ふらりとダチのいたクラスを覗いたんだ。
結構遅い時間だったから、教室はガランとしていた。

ただ、女が一人いたよ。
……ダチの席に座っていたんだ。
髪がすけるようにきれいだったな。
机の上に置いてある花を見ながら、じいっと座ってるんだ。
随分さびしそうな顔をしていたよ。

それで俺、話しかけたんだよな。
一体何をしているんだろうと思って。
俺が聞いても、そいつは口をモゴモゴと動かすばかりだった。
で、間がもたなくなっちまってな。

それ以上話しかけるのはよしたんだよ。
俺は、黙ってそこに座った。
そいつも、ずっと黙っていた。

と思ったら、そのうち、机の辺りをごそごそして、何かを捜し始めたんだ。


1、妙ですね
2、何を捜してたんですか?



『1、妙ですね』



だろ?



『2、何を捜してたんですか?』



うん、気になるだろ?



※以下同文※



だから俺、何してんだよって、つい大声をだしちまったんだよな。

そいつ、びっくりしたような目で俺を見たよ。
その目に、人形のようなまつげがついていて……。
「……お前、まつげ長いなあ」
「えっ?」
わけわかんないこといっちまって。

そしたら、そいつは息をはくように、軽く笑ったんだよ。

だけど、すぐに下を向いちまったんだ。
なんか思い悩んでるような感じだったな。
「捜しもんか?」
そう聞いたら、こんな返事が返ってきた。
「この席にいた人と、映画に行く約束をしていたの。
でも、彼は事故にあっちゃって……。
何の映画に誘ってくれるつもりだったのかなあ。
……それが知りたくて」
すぐにピンときたよ。

もしかしたら、ダチがチケットをとってくれと電話してきたのは……。
あいつ、いつのまにこんなかわいい彼女をつくってたんだ?
一瞬驚いちまった。
どうやら、それが初デートの約束だったらしい。

彼女にしてみれば、そりゃあショックだったろうよ。
ダチと行くはずだった映画を見て、自分の気持ちを整理しようとしていたんだな。
俺は、奴のダチだと名乗り、すぐにチケットのことを教えてやった。
そして、明日持ってきてやると約束したんだ。

まつげは喜んでいたよ。


1、まつげ?
2、今の聞き違いかな



『1、まつげ?』



……あ、実は俺、そいつのこと、心ん中でまつげって呼んでたんだ。



『2、今の、聞き違いかな』



……ん?
何て顔をしてるんだよ。
ああ、そうか。
……実は俺、そいつのこと、心ん中でまつげって呼んでたんだよ。



※以下同文※



名前聞いても、答えてくれなかったからさ。

翌日、俺はまつげにチケットを渡した。
放課後にダチのクラスで待ち合わせをしたんだ。

まつげは、チケットを見ながらしばらく考えこんでいた。
「ありがとう……ねえ、お願いがあるんだけど」
「何?」
「彼のお墓、どこだかわかる?
このチケット、片方置いていきたいの。
それで、彼が映画に来れるわけなんてないけれど……」

墓参りに連れて行ってやるのに、反対する理由なんてない。
俺はその日、まつげと一緒にダチの墓に行ったんだ。

「私、明日この映画に行くから。
ほら、学校の側に映画館があるでしょ。
よかったら来て」
そういってまつげは、ダチの墓にチケットを置いた。
女って奴は、そんな非現実的なことも、まじめに考えるものなのかもしれないな。

彼女は墓に向かって手をあわせ、しばらくじっとしていた。
柔らかそうな髪が、さらりと肩にすべっていた。
触ってみたいな、なんて一瞬思っちまったよ。

「……あいつとは、どこで知り合ったんだ?」
「うん………………」
はっきりした答えは返ってこなかった。
秘密を持たれてるのって、いい気はしないぜ。
でもまあ、当人同士のことだもんな。

俺が立ち入る筋合いじゃない。

それにしても、あいつ、病院から電話してきた時は、本当に元気そうだったんだよ。
先のことなんて、わからねえもんだよな。
俺もダチの墓に手をあわせた。

……でさ、その日家に帰ると、なぜか俺の部屋の机に、チケットが置いてあったんだ。


1、それ、もしかして……
2、何のチケットですか?



『1、それ、もしかして……』



わかるか?
ダチの墓にそえたものと同じもんだったんだ。



『2、何のチケットですか?』



え、わかんないのか?
お前、もっと想像力を働かせろよ。
新聞部だろ?
そのチケットはさ、ダチの墓にそえたものと同じやつだったんだ。



※以下同文※



家族が買ったのか?
そう思い、俺はすぐに確かめた。
でも違ったよ。
じゃあ、誰かが来たのか?
そんなことでもなかった。
……ダチが置いたのか?
まさか、あいつは死んでいるはずだ。

でも、それじゃあこのチケットは……。
俺はそれをよく調べてみた。

ダチの字じゃなかった。
これは、まつげの字か?
何がダメだっていうんだろう。
墓に置いたはずのチケットがここにあるということは……やっぱりダチが持ってきたのか?

ダチは、俺に何を伝えようとしたのか。

まつげが落ち込んでるから、助けてやれといってるんだろうか。
そんな考えが浮かんできた。


1、きっとそうですよ
2、違う気がします(生存フラグ)




『1、きっとそうですよ』



そう思うか。
でも、そんなのおかしくないか?
なぜ自分で助けようとしないんだ?
自分の彼女なのに……。




『2、違う気がします』



そうか。
お前がどう感じたかは知らないけどさ。
俺も、それはちょっと違うかなって、すぐに思い直したんだ。
だって、ダチの彼女なんだからさ、自分で助けるべきだろ?




※以下同文※



……いや、もう彼女じゃなかったか。
ダチは死んでいたからな。

その日はなんだか、ひどく眠たかった。
俺は混乱する頭を抱えながら、ベッドにもぐりこんだんだ。

次の日も、俺はまつげに会いにいったよ。
約束していたわけじゃなかったけど、放課後、人気のないダチの教室に、彼女はいつもいたから。

俺の顔を見ると、まつげはすぐにいった。
「彼、映画に来なかったわ……」
そうだろう。
俺にはわかっていた。
その時俺のポケットの中には、例のチケットが入っていた。

ダチは、まつげがチケットに書いたことを、無視したわけじゃない。
いおうかどうか迷ったけど、うまく言葉にできなかった。
「まつげ、何か悩んでんのか?」
「えっ? まつげって何?」
「あっ……悪い、勝手にそう呼んでたんだ。
お前、まつげが長いから」

「やだ、あははっ……、ん、どうしたの?
そんな顔して」
笑った顔なんて珍しくて、ついじっと見てしまった。
まつげはどこか、暗い印象があったからな。
「なあ、困ったことがあるならいってみろよ」

「いったら、どうにかしてくれる?」
長いまつげが、軽く揺れた。
「あなたの友達にもう会えないこと」
そんなことをいわれたら、俺にはどうもできない。
黙っていると、まつげはすぐ謝ってきた。
「ごめんなさい。
あなたが悪いわけじゃないのに……」

そして、そのまま、煙のように消えてしまったんだ。


1、まつげさんって……
2、それ本当ですか



『1、まつげさんって……』



嘘みたいな話だろう。
俺だって、夢を見ているのかと思ったよ。
けれど現実だった。
まつげは一体何者なんだ?



『2、それ、本当ですか』



何だったと思う?
霊?
やめてくれよ。
そんな単純なものじゃないって。



※以下同文※



俺は、すぐに彼女のことを調べたんだ。
まず、学校のアルバムを見て、まつげの名前を探り当てた。
写真がなかったらどうしようと思ったけど、まつげはちゃんと載っていたよ。
俺は、彼女のクラスに行ってみた。
そして知ったんだ。

彼女が、ずっと学校を休んで入院していたってことをね。
俺は、まつげがいる病院を訪ねた……。

「あの、学校の方ですか?」
まつげの母親が話しかけてきた。
俺は事情を聞いたよ。
まつげは、もともと体が弱かったらしい。
入退院を繰り返していたそうだ。
病状は日に日に悪くなっていった。

その時、交通事故で入院してきたダチと知り合い、仲良くなったらしい。
彼女は、退院したら映画に連れていってやるといわれていたんだよ。
ところが、ダチの方が先に死んでしまった……。

まつげはその日を境に、眠ったまま目覚めなくなったということだった。
医者によると、何かひどいショックを受けた時に、こういうことがまれに起こったりするそうだ。
ただでさえ具合が悪いのに、このままでは生命も危ないということだった。

……彼女は、静かに寝ていたよ。
目を閉じているほうが、まつげが長く見えた。

俺は、そのまつげに触れてみた。
それから髪に。
想像通り、さらさらで柔らかかった。
ダチの教室に通っていたのは眠ったままのまつげの魂だったんだ。
そういうの、生霊とかっていうらしいな。

俺は、詳しくは知らないけどな。
とにかく、まつげの魂を早く連れてくる必要があった。
考えられる場所は、学校か……ダチの墓か……。

おい、坂上。
お前なら、どっちを捜した?

1、学校
【ENDあの頃にはもう……】


2、ダチの墓
【END叫び声】or【ENDいい話】