変更台詞3 | ナノ
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細田友晴PS追加・変更・女主人公用台詞


『1、止める』



「細田さん、やめてください!」

細田さんは、ものすごい力で私を突き飛ばした。
「何をするんだよっ!
これから、すごい秘密が見れるんじゃないか!
僕はね、感じるんだよ! すごく、感じるんだよ!
この中で、強大な怨念が渦巻いてるんだよ!
この学校は、昔から悪いことばかり起きていた。悪霊がいるのさ!
そいつは、この中に眠っている!
ヒャーーーーッハッハッハァ!」
「……細田さん」
私は、もう細田さんを止めることはできなかった。

懐中電灯にぽっかりと映し出された細田さんの目は血走り、ケタケタと笑っていた。

電動ノコギリのスイッチがオンになり、女の金切り声のようなモーター音が静けさを吹っ飛ばした。
「ヒャッハッハ!」
細田さんは、それを掲げるとためらう事なく壁に切りつけた。

ガリガリとけたたましい音とともに、壁は簡単に崩れていった。
壁は、全く抵抗することなく、その体内をさらけ出していく。
……暗くて、よく見えない。

細田さんは、お構いなしにノコギリを振り回し、壁に開いた穴を押し広げていく。



↓先生の怪談内容で変化↓



『1、教室』



「うぎゃあ!」
突然、壁の奥の暗闇から伸びた腕が、細田さんの顔をつかんだ。
細田さんは苦しそうに首を振る。
でも、手はぴったりとついて、離れない。
続いて、壁の奥に、たくさんの顔が浮かび上がった。

命のにおいがしない、亡霊の顔。
「生きている人間だ……」
「生きている人間だ……」
「どうして、おまえたちは生きている」
恨めしげなつぶやきが、あちこちから漏れている。

ゾクッと鳥肌が立った。
彼らは、死んだ生徒たちなのかしら。
この世と、あの世の彼らを隔てていた壁を、私たちは壊してしまったというの?

細田さんをつかんでいた手が、すっと引っ込んだ。
フラフラッと、細田さんの大きな体が、倒れ込む。
「細田さん!」
皮膚がカサカサになっている。
まるで、ミイラのようだった。
「生気だ……」

「久しぶりの生気……」
「おいしいね……」
「おいしいね……」
口々にいっていた顔が、私を見た。
今度は、私の生気を抜く気!?
蛇ににらまれた蛙のように、私は身動きできなかった。
白くて長い腕が、私に向かって伸びていた。

もう、おしまいなの!?

覚悟をして目を閉じた一瞬後、冷たい指が私の額に食い込んだ。



『2、階段&3、トイレ』



「うぎゃあ!」
突然、細田さんが吹っ飛んだ。
命を与えられたままの電動ノコギリが放り出され、床を跳びはねながら踊り回っている。
「細田さん!」
私は、急いで懐中電灯を拾うと、それで細田さんの顔を照らした。
「きゃっ!」

私は、そのまま尻もちをつき、腰を抜かしてしまった。

細田さんの顔はもはや判別がつかぬほど焼けただれ、ほんのりと湯気をあげていた。
まるで、近距離から火炎放射器を浴びせたように……。
これは地獄の炎……?
火なんか見えなかったのに……。
「う……あ……」

それでも、まだ細田さんは生きていた。
とろとろにとろけた肉片に、焼けて千切れた血管から流れ出る血が滴る。
そして、その血を戻そうと、これもまた焼けただれて白い骨の見え隠れする手ですくいあげている。

すでに穴の空いた手のひらではその血をすくえることもなく、それはただむなしく徒労に終わる。
「……なんてことをしてくれたんだ」
後ろで声が響いた。

振り向くとそこに、黒木先生がいた。
黒木先生は、睨みつけるような目で、ぽっかり開いた穴を凝視していた。
「……先生」
私が声をかけようとも、先生の耳には聞こえていないようだった。
「……兵隊が出てくる。
彼らのしかばねの上で、あぐらをかいている愚かな現代人に、思い知らせるために」
黒木先生は、細田さんにも私にも目をくれなかった。
そして、ゆっくりと電動ノコギリに向かって進むと、暴れ回るそれをつかみあげた。
そして、振りかざす。

「死ね!」
そういうと、先生は私に向き直った。
「く……黒木先生……」
叫ぼうにも、蚊の鳴くような震える声しか出なかった。
先生は、私に狙いを定めると、電動ノコギリを振り上げた。
……そんな、私が兵隊の霊に見えるとでも?

電動ノコギリによって切り刻まれた壁は、まるで悪魔の口のように、ぽっかりと穴を開けている。
あの穴の中に、何があるの?
本当に防空壕があるというの……?

それを確かめることもなく、私は鋭い歯の餌食となって、あとほんの数秒後に命を落とす。
髪を振り乱す先生の背後に、たくさんの兵隊たちの亡霊が浮かび上がったのは私の幻……?

私は、いけないものに手を出してしまった。
人間が知らなくてもよい世界に……。

肉を切り骨を砕く鋭い歯は、私の頭上に振り落とされた。



『4、死体置き場』



不意に、その騒々しい音がやんだ。
細田さんが、ぽかんと穴の中を見ている。
中には、かわいらしい少女が立っていた。
小学生くらいかしら。
よく見てみると、輪郭が闇ににじんで溶けている。

生きている人間ではないみたい。
でも、害意はなさそうだわ。
「どうしたの?」
「お兄ちゃんが……」
少女の幽霊は、そうつぶやいた。
私には、思い当たることがあった。
「黒木先生の話の、妹ね。
そこに運び込まれたっていう」
「そうか」
細田さんがうなずいた。

「お兄さんの霊と、はぐれたのかなあ。かわいそうに」
いいながら、手を差し伸べてやる。
「出ておいで。いっしょに探してあげるからさ」

細田さんの言葉に、少女はそうっと壁を抜け出した。
青ざめた唇が、言葉を形作る。
「ずうっと、この中に一人でいたの……」
小さな手が、ガシッと細田さんの腕をつかんだ。
牙が光る。
「だから、おなかがすいてるの!」

少女は、ガブッと細田さんののどに食らいついた。
あふれ出す血を、ちゅうちゅうとすする。
細田さんは動かない。
牙に毒か、麻酔でも塗ってあるのかしら。
あっという間に血を吸い尽くすと少女は私を見た。

「私、お兄ちゃんの血を浴びたの。
それから血が欲しくてたまらないの」
瞳が玉虫色にきらめいている。
動けない。
私ももう、彼女の術にかかってしまったみたい……。
ぼうっと立ち尽くす私の首に、少女は鋭い牙を突きたてた。



『5、倉庫』



急に、その動きが止まった。

細田さんの手から、電動ノコギリが滑り落ちる。

「細田さん!?」
振り向いた彼の顔は、まるで別人のようだった。
目を見開き、口からよだれを垂らしている。
そして、私を見つめてつぶやいた。
「食べ物だ……」
と。

「何をいっているんですか?
どうしたんですか、細田さん」
そういいながら伸ばした腕に、細田さんは噛みついた。
丈夫そうな歯が、皮膚と肉を引きちぎる。
「ああっ!?」
私は、激痛のあまり、彼を突き飛ばした。

しかし、起き上がってまた、向かってくる。
どういうこと?
本当に、私を食べるつもりなの?
血が流れる腕をかばいながら、私はじりじりと後ろへ下がった。
「えへへ……おいしそうだなあ」

トロンと濁った目。
細田さんは、取りつかれてしまったのかしら?
それなら、この行動もわかる。
でも、それなら本当に私を食べようとするわよね。
どうすればいいの?
考える私の不意をついて、細田さんが飛びかかって来た。

「うがあああっ!!」
私はハッと避けようとして、作動したままの電動ノコギリにつまづいた。
ギュワンッ!

刃が跳ね、パアッと血しぶきが飛んだ。
焼けつくような痛み。
ノコギリの刃は、私の腕を切り落とした。
傷が、火であぶられているように熱い。
床に落ちた腕を、細田さんは嬉しそうにかじり出した。
ぽたぽたと血が落ちる。

出血とともに、急速に体力が消えていくみたい。
足もふらつく。
これでは、きっと細田さんから逃げることもできないわ。
私はうずくまった。
ガリガリと骨を噛み砕く音が聞こえる。
生きたまま食べられるのって、どんな感じかしら。

できれば、その前に出血多量で死んでいるといいな。
少しずつ、暗闇が押し寄せて来た。
それとともに、私の腕が食べられる不快な音も聞こえなくなってくる。
いっそのこと、歓迎したいような気分で、私は暗闇を迎え入れた。



『2、黙って様子を見る』



興味がないといえば嘘になる。
私は、そのまま様子を見ることにした。
「ヒャーッハッハッハァ!」

高笑いをしながら、細田さんはノコギリのスイッチを入れた。
甲高い耳ざわりな音が、夜の学校にこだまする。
そのせいで、私は、忍び寄る気配に気づかなかった。
細田さんが壁に、回転する刃を押しつけようとした瞬間。

私のすぐ横を、風のように駆け抜ける何者かがいた。

黒木先生だわ!
細田さんを突き飛ばし、ノコギリを取り上げる。

「おまえたち!」
怒られると思った。
けれど、振り向いた先生の人相は変わっていた。
私たちではなく、ほかの者を見ているような目に。
「おまえたち、ヤツらを逃がそうとしていたんだな?」
押し殺したような声。

さっきとは別人のようだわ。
「ヤ……ヤツらって?」
「ごまかすな! 壁の向こうでうごめいているヤツらだ!
この学校を裏から支配する、血に飢えたあいつらのことだ!!」

何をいっているのか、わからない。
でも先生のいうことが本当なら、今日聞いたいくつもの怖い話も、すべてこの壁の中にいる何かが起こしたことだというの?
……いくら何でも、そんなまさか。

「ヤツらを復活させてなるものかっ!」
黒木先生は電動ノコギリを振り上げ、私たちに襲いかかった。
「ひいいっ」
情けない声をあげて、細田さんが走り出す。
私も、すぐ後を追った。
「待てっ!!」

先生はノコギリを持ったまま、追いかけてくる。
迫ってくるモーター音は、そのまま死刑宣告のように聞こえた。

転がるようにして校庭に出て、門に向かう。
もう少し。
あと少しで、日常の世界に戻れるはずよ。
しかし、細田さんがつまづいた。
「ああっ」
ぺたっと転んでしまう。

すぐ後ろに、ノコギリを振りかざした黒木先生が迫る。
もう駄目なの!?
その時、私達の姿が、まばゆいライトに照らされた。

「そこで何をしている!?」
パトロール中の警察官だわ。
助かった!

「うおおおおっ!!」
黒木先生が、雄たけびをあげた。
そして、電動ノコギリを自分の首に押し当てた。
ギャギャギャ!!
と、すさまじい音が響いた。

勢いよく血が吹き出し、黒木先生の首が跳ね飛んだ。
首は転がって、私の足元で止まった。
「大丈夫か!?」
警察官が駆け寄ってくる。
助かったわ……。
旧校舎も七不思議も、どうでもよかった。

私は頭の中で、新しい企画を立てていた。
今日のことは、絶対にいい記事になる。
タイトルは……そうね。
『学校であった怖い話』これで決まりよ。