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細田友晴PS追加・変更・女主人公用台詞
1話受験生中野君との別れ



『1、中野を追い払い、逃げ出す』(変更)
そこを曲がれば、すぐ教室……というところで、僕は背後の奇妙な物音に気づいた。
そこを曲がれば、すぐ会場……というところで、僕は背後の奇妙な物音に気づいた。
教室なんかじゃダメだ。
会場なんかじゃダメだ。



『2、中野を見捨てて逃げた』



満足そうに話していた細田さんの表情が、不意にくもった。

「でも、中野はそれを怒っているんだ」
「え……それじゃあ、中野さんも助かったんですか?」
私は、驚いて聞いた。
今の話の様子じゃ、中野さんは手の化け物に襲われたということだったのに?
でも、細田さんは首を横に振った。

「いや、あれっきり、中野はいなくなった。
あの手に食われたのか、次元の狭間にでも行ってしまったのか…………。
でもね、ヤツは最後に、僕に仕返ししていったんだ」
細田さんは、暗い表情で立ち上がった。

「最後に聞いた中野の声は、悲鳴じゃなくて……僕に対する呪いの言葉だったんだよ」
いいながら、細田さんはシャツを脱いだ。
ちょっとやだっ、裸の背中を、こっちに向けるなんて……あっ。
そこには、大きな顔の形のあざがあった。

恨めしそうに眉を寄せ、口をゆがめて苦しそうな表情に見える。
「あの言葉を浴びせられた背中が、こんな風になっちゃったんだからね。
誰に聞こえなくても、僕にだけは、この顔の恨みの声が聞こえるんだよ……。
きっと、このまま一生ね」

みんな黙り込んでしまった部屋の中で、細田さんはモソモソとシャツを着込んだ。


『2、トイレには入らない』


細田さんの話が終わった。
でも……この話は、変じゃない?
だって話が本当なら、細田さんはトイレの手に襲われたはずだもの。
それなのに、今ここで、こうして話をしているんだから。
「もう、細田さん。
作り話で、怖がらそうとしてもダメですよ」
「作り話…………?」
細田さんが、静かにいった。

「作り話だと思うかい?」
この部屋は、さっきからこんなに薄暗かったかしら?
細田さんは半分影になって、なんだか……とても不気味に見えた。
「本当にこの学校には、危険なものがたくさんいるんだよ。
君たちも、取り込まれないように、せいぜい気をつけるんだな……」
いい終えた細田さんの姿が、スウッと薄らいだように見えた。
そして、煙のようにユラユラと揺れながら、薄暗い空間に溶けて消えてしまった。

細田さんが消えた空間を見つめたまま、誰もなにもいわなかった。
世界中に私たち以外いなくなったような気がした。
その時、派手な音を立ててドアが開いた。
飛び上がった私たちの前に、頭をかきながら細田さんが登場した。

「いやあ、ごめんごめん。
日直の仕事が長引いちゃってさ。
もう始めてた?」
これが本物の細田さん?
じゃあ、さっきまで話をしてた細田さんは、何者なの!?
黙り込んだ私たちの様子にも気づかず、細田さんは嬉しそうにニコニコしている。

「さあ、続けてよ。
僕も、とびっきりのヤツを用意してきたんだ」
細田さんには、もう聞きましたよ…………。
といっても、信じてもらえないんだろうな。
さて、次は誰にしようか?



『1、トイレに入る』(女用)
それを教えたら、君は怖くてそのトイレに行けなくなるだろう?
聞かないほうがいいよ。

そんなこと聞いてどうするんだい?
男子トイレに入るつもり?
取材とはいえ、そこまでしなくてもいいんじゃない?

それとも、どうしても聞きたい?


『2、やっぱり聞かなくていい』(女用)
…………でも君が、あの手を見なくても済むように、トイレの見分け方を、教えておいてあげようか。
……………でも、女子トイレに霊の手が出ないとは限らないから、トイレの見分け方を、教えておいてあげようか。

2話女子トイレの壁の染み(女)



『2、調べない』(変更)
女子トイレなんて、抵抗あるもんな。
さっきも言ったように、全然霊気は感じなかったんだし。

さっきも言ったように、全然霊気は感じなかったんだし。
僕は男だから、女子トイレにはちょっと抵抗あったしね。



『1、何もないと言い続ける』


細田さんの話が終わった。
私は尋ねてみた。
「壁の染みは、そのままなんですか?」

「当たり前じゃないか。
だって、僕に何ができたっていうんだい?」
細田さんは気を悪くしたようだ。
でも、構ってなんかいられない。
「それじゃあ、いつ何が起こるかわからないってことじゃないですか!」

いくら何でも、無責任すぎるわ。
私は、細田さんに食ってかかった。
「何かあったら、細田さんの責任ですよ!」
いってから、これはちょっと言い過ぎかなと思った。

こんなことをいわれたら、どんなに温厚な人だって怒り出すかもしれない。

それなのに、細田さんったら怒るどころか、ニヤニヤと笑ってる。
「何かあったら?
どんなことが起きるというんだい」

…………何かがおかしいわ。
頭の中で、警報が鳴り出した。
その時。

ガターンと大きな音がして、部室のドアが開いた。
私たちがハッと振り向くと、泣きべそをかいた、知らない女生徒が立っている。
「細田君!
あのトイレで……とうとう大変なことが起きたのよっ!!」
細田さんが、素早く立ち上がる。

例のトイレに行くのかと思ったら、女生徒の目の前でドアをぴしゃりと閉めてしまった。
「ほ、細田さん!?」
信じられない行動に、私は思わず叫んでしまった。

細田さんは振り返って、ニヤッと笑った。
「………すごいや、倉田さん。
君のいう通り、本当に『何か』が起きたようだね……………」
どうして、そんなに落ち着いていられるのかしら?
「そ……そんなことより、行ってあげなくてもいいんですか?」

「大丈夫だよ。
ほら、もう声は聞こえないじゃないか」

ドアの向こうはシーンとしている。
あの女生徒は行ってしまったの?
どうして?
ううん、どこへ?
私の混乱をからかうように、細田さんはウィンクした。

「話を続けよう。
この先、もっとおもしろいことが起きるような気がするんだ。
もっとおもしろくて、取り返しのつかないようなことが」
誰も、嫌だと言い出さなかった。
細田さんに気を呑まれてしまったから。

今までとは明らかに違う雰囲気の中、細田さんは席に戻って、ひじを突いた。
こわばった表情の、私たちを見回す。
「さあ……次は誰が話す?」


『1、構わず、家に帰る」』(女用)
君って案外、意気地なしなんだね。
君って案外、気が弱いんだね。


3話絶対トイレに行かない男

(女用)

君がそうかはわからないけどさ。
女性には、トイレに行かなくてすんだら、どんなに素敵だろうって考えるロマンチストが多いんじゃないのかな。
そりゃそうだよね。
女性には、トイレに行かなくてすんだら、どんなに素敵だろうって考えるロマンチストが多いんじゃないのかな。




『1、新校舎のトイレに入った』(変更)
植物についた竹内さんの顔が、泣きながらそう語っていたんだ。
竹内さんは旧校舎のトイレしか使わなかったから、みんなにトイレに行くところを見られていなかったんだよ。

植物についた竹内さんの顔が、泣きながらそう語っていたんだ。
竹内さんは、初めてこの学校に来た時、旧校舎を探検したそうだ。
そうして、あの植物を見つけたんだって。
植物は、彼の排泄物を養分にして育っていった……。

僕の読みは、当たっていたんだ。
竹内さんは旧校舎のトイレしか使わなかったから、みんなにトイレに行くところを見られていなかったんだよ。



『2、さっきの旧校舎のトイレにいった』(変更)
……坂上君。
僕が、心配に思ったことをいおう。
君は竹内さんにそっくりなんだよ。
顔は別に似てないけれど、その雰囲気が実によく似てるんだよ。
霊につけいられそうな雰囲気がね……。


竹内さんに化けた悪霊は、もう別の人間を植物にしてしまっているのかもしれない。
獲物は、竹内さんに似ていなくてもいいのかもしれない。
でも、僕は心配なんだよ。
竹内さんに似ている君が……。

「あっ、細田さん!」
彼は、私の返事を聞かずに、部室を出ていってしまった。
私達は、あわてて彼のあとを追った。

旧校舎の空気は、たいそう湿っぽかった。
ギシギシとなる廊下が、みんなの緊張をたかめていく。

私達は、例のトイレの前にやってきた。
そして、細田さんが指さした個室のドアを開けると……。

「……何もありませんよ」
便器の中には、植物なんてなかった。
みんな、ほっとしたような顔をしている。
しかし、細田さんだけが、表情を曇らせていた。
何か、いいたそうな顔をしている。

「細田さん、どうしたんですか?」
私は、思いきって尋ねてみた。

「倉田さん、本当にいいづらいんだけどね……」
細田さんは、ぼそぼそと話しはじめた。



(2)


……倉田さん。
僕が、心配に思ったことをいおう。
君は竹内さんに似ているんだよ。
なんというか、その雰囲気……目つきとかがね。
男に似てるなんていわれてもピンとこないかもしれないけど。

竹内さんに化けた悪霊は、もう別の人間を植物にしてしまっているのかもしれない。
獲物は、竹内さんに似ていなくてもいいのかもしれない。
でも、僕は心配なんだよ。
竹内さんと雰囲気が似ている君が……。


(男主人公)


なんというか、その雰囲気……目つきとかがね。
突然こんなことをいわれても、困るんだろうけど。



『1、飲む』


細田さんは、飲物用の容器を取りだして机の上に置いた。
まさか、これは……!
青臭い匂いが鼻をつく。
私は、恐る恐るその容器を受け取った。
「これが……サンブラ茶なんですね」
私が、容器のふたを開けると……。

大きな黒い芋虫が、中でゴソゴソとうごめいていた。
「うわっ!!」
私は、容器を放りだしてしまった。

「あっ、ごめんごめん。
倉田さん、これ、絞ってジュースにするのを忘れていたよ」
細田さんは、謎めいた笑いを見せゆっくりと説明を始めた。
「……これは、サンブラ茶の原料さ。
この虫の臓物には、不浄物を餌にする植物が寄生していてね。
虫の体液を煮詰めると、その植物の繁殖エキスが取れるんだ。
それが、サンブラ茶なんだよ。
もちろん、この植物は、人間の不浄物も食べてくれる。
不浄物を食べて分解し、本来は排泄物となるものを、汗に変えてくれるんだ。
このお茶は、飲み慣れるとくせになるという話だったけど、確かにそうだね。
今僕は、竹内さんからいつもこの虫を買っているんだよ……」
細田さんが、私の肩に手をおいた。
彼の息は、青臭い匂いがした。
そして、口の中にうごめいているものは……!
細田さんは、私の視線に気付いたらしい。

慌てたように、口を手でおおった。
「倉田さん、ごめんよ。
サンブラ茶を味わわせてあげられなくて。
今度ちゃんと作ってくるからさ。
そうしたら、君もトイレにいかなくてすむんだよ……」
細田さんがしゃべる度に、青臭い匂いが私の鼻をつく。
冗談じゃないわ。

そんな得体のしれないものなんて、飲めるわけないじゃない。
彼の話はもう終わりにしてもらって、早く次の話を……。

足元が、ちくりとした。
なんだろう……?

見ると、落とした容器からはいでた虫が、私の足の上を……!
なんてことなの。
私は、サンブラ茶の原料の虫にさされてしまったのね!
慌てて足を振り、虫をよけた。
しかし私の靴下には、赤い血のあとがプツプツとうかびあがっていた………。

細田さんは、それを見てにやりと笑った。
「君、今虫にさされたね?」
そういって、嬉しそうに肩をふるわせた。
どうしよう。
虫にさされて、私の体に変化が起こったら……。
「僕の話は、これで終わりだよ……」

細田さんはサンブラ茶の虫をつまみ、本当に嬉しそうにつぶやいた。
「倉田さん、次は、誰の話を聞くんだい?」
なんてことなの。
私は、しばらく何もいえなかった。
…………。
でも……。

私は、サンブラ茶を飲んだわけじゃないわ。
変なことなんて起こらないわよね。
大丈夫。
きっと、大丈夫……。
私は、胸にしこりを残しながらも、次の人の話を聞くことにした。
「それでは、次の話を……」


4話新校舎のトイレツアー



『1、感じる』(女用・変更)
細田さんて、はっきりいって太っているんだ。
そんな彼と、こんな密室に入ったら僕はどうすればいいんだ。
それに、細田さんて女っぽいところがあるからなぁ。
手でも握られたらどうしよう……。
まあ、考えすぎだよな、ははは。

「何を笑っているんですか? さあ入りましょう」

うう、密着する……最低な気分だ。
僕は、太っている人が嫌いだ。
細田さんも、僕の抱いているイメージと同じものを持っている。

なにかこう、脂肪が不完全燃焼しているようなすえた匂いがするのだ。
トイレの匂いと混ざりあって、なんともいえない匂いを作り出している。
そして彼は、僕にささやいた。

どうせなら、女の子と一緒にトイレの個室に入りたかった……。
「今、坂上君が霊を感じて気分が悪くなったんだよ」
細田さんがいう。
ほんとは、細田さんのせいなのに……。

みんなは、少しざわめいた。
続けて、細田さんがいった。
「やっぱり、二人っきりのほうがお互いなにかを感じやすいと思うんです」
その時、誰かが口を開いた。

「じゃあ、わざわざ一緒に来ることはなかったと思う」
「いえ、もしもなにか起きたときに助けてもらおうと思っていたんです。
みなさん!
ご協力お願いします」
細田さんは、みんなに頭を下げた。

みんなは、しぶしぶと廊下に出ていった。

「さあ、倉田さん、どのトイレから霊気を感じるんだい?」
霊気を感じるなんて、間違ってもいうんじゃなかった。
ただ何となく、そんな気がしていってみただけなんだけれど……。
今、私はとても後悔している……。

取材とはいえ、男子トイレに入るなんて。
人に知られたら、私はどうすればいいの。
それに、細田さんてどういう人だかわからないし。
手でも、握られたらどうしよう……。
なんて、考えすぎよね、あははっ。

「何を笑っているんだい?
さあ入ろうよ」

新校舎の一階北側の男子トイレは個室が二個しかない。
ぱっと見ると、個室が三個に見えけど、一番右はじが、掃除用具入れになっている。
取りあえず、その真ん中にはいることになった。
まず、細田さんがドアを開けた。

ムッとした、アンモニアの匂いが漂う。
「どうぞ、先に入って……」
うながされるまま、私は中に入った。
そして彼は、私を押し込むようにして中に入ってきた。

うっ、やっぱりやめればよかったわ。
私、なにやってるんだろう。
こんなこと、記事にはしたくないわ。
それにしても、霊気なんて全然感じないわよ。
もう、早く出たいよう。
細田さんは、私にささやいた。

「ほーら、倉田さん、もっと霊を感じてごらん」
今、感じるのは細田さんの圧迫感だけよ。
「ううーん、霊を感じます!
うっ、すみません気分が悪くなってきました!
早く出ましょう!」
ここから、私が逃れる方法はこれしかない!

「細田さん、私はここから早く出たいんです。
頼みますよ、もう出ましょう……」

細田さんを押し出して、転がるように廊下に出た。
誰かが心配そうに私を見ている。
「倉田さん、どうしたんだ!?
なにかあったのかい!?
汗びっしょりだ。
顔色も悪いな……」
…………、返事をする気力もわかないわ。

「今、倉田さんが霊を感じて気分が悪くなったんだよ」
細田さんがいう。
ほんとは、そんなわけじゃないけど……。
ここはひとつ、私がガマンしなくちゃ。
「私なら平気ですから……、さあ早く次に行きましょう」

これもいい新聞部員になるための修行だと思って、気を取り直さないと……。
細田さんは、はりきってるみたい。



『福沢さんと入る』(女用)
「うげーーーーっ」
やってしまった……。
「あらぁー、ダメねえ。こんなに吐いちゃって。ひょっとして、もらいゲロってやつ?
あはははは」
彼女は、そういって僕を笑いとばした。
トイレの鍵を開けると、彼女はみんなにいった。
「坂上君は、あまりにも霊を感じすぎてもどしちゃったの。さあ、ここにいない方がいいよ。早く部室に戻りましょ!」 

細田さんは、得意げに私に聞いた。

「あそこの便器から……」
私は指さした。
「そうかい、じゃあ一緒に入ってみようか」
細田さん、嬉しそう。
その時、

「悪いんだけどぉ、私と一緒に入ってもらえない?」
福沢さんが、横から口を出した。
やった、細田さんと入らなくてもいいんだわ。
「でも……、まあいいでしょう」
細田さんは、福沢さんの押しの強さに負けたみたい。

「ね、恵美ちゃん、一緒に入ってみましょうよ」
福沢さんにうながされて、私はトイレの中に入っていった。

カチャリと彼女が、トイレの鍵をかけた。
「福沢さんも、なにかを感じるんですか」
私は聞いた。
福沢さんは、同じ学年ということもあって気が楽だわ。
「感じる……。
ここからすごい霊を感じる」

福沢さんが、震えながらいった。

「うげっ!!」
突然彼女が、口から多量の汚物を便器に向かって吐き出した。
そしてゆっくりと、顔を上げる。
彼女は、白目をむきだしていた。

そして、ぶるぶると体を震わせた。
だんだん彼女の体の震えがひどくなっていく。
「うーっ、ううーっ、うーーーーーーっ!」
トランス状態に陥ってるみたい。

私は、出口を彼女にふさがれ、トイレの隅でその奇行を見守るしかなかった。
「カリカリカリ……」
ふと、彼女の奇声に混じって別の音がしているのに気がついた。
「うっ!」
下を見た私は、気を失いそうになった。

彼女の吐き出した汚物に、大量の虫がたかっている。
「カメムシ!?」
カメムシは、トイレのタンクから、便器から湧き出るようにうごめいている。
カメムシは、別名クサムシと呼ばれているくらい嫌な匂いがするのよね。

カメムシの、あの嫌な匂いと彼女の汚物の匂いが混ざり合って、私は失神寸前……。

「うーっ、ううーっ、うーーーーーーっ!」
彼女は、相変わらずあの状態のままだわ。

私は、目を固く閉じた。
もう、頭が変になってしまう!!
そう思った瞬間……。
彼女が、私の肩をつかんだ。

ゆっくり顔を上げると、そこにはにっこりと笑っている彼女の顔があった。
「どうだったぁ?
楽しかったでしょー?」
そういうと、彼女は微笑んだ。
彼女は、すっかり元に戻っている。
「いったい、どういうことなんですか……?」

私は、彼女に聞いた。
「ちょっと、ここにいる霊に頼んで、恵美ちゃんに楽しい夢を見せてあげただけ」
「!?」
彼女は、続けてこういった。
「私が念ずると、霊とコンタクトが取れるときがあるんだ。
恵美ちゃんが、霊を感じるなんて思ってもいないことをいうからぁ……。
ちょっと、意地悪をしてあげようと思って!
うふふふっ!」
そんな、バカな…………!!
彼女は、腕時計を指さしてこういった。

「長く感じたかもしれないけれど、あれからたったの十五秒しかたっていないんだよ」
私は、力が抜けた。
彼女のいってることが、嘘でも本当でもそんなことはもうどうでもいい。
早く、ここから出たい。
気分が悪いわ。

「あっ、大丈夫?」
彼女が、私の背中をさする。
あっ!
さすらないで……。
さすったらダメ……。
「ん……うぐっ」
もう吐きそう。

「あらぁー、ダメねえ。
これぐらいでそんな顔して。
しょうがないなあ、もう部室に戻ろうか?
きゃはははっ」
彼女は、楽しそうにしている。

トイレの鍵を開けると、彼女はみんなにいった。
「倉田さんは、あまりにも霊を感じすぎて気持ち悪くなっちゃったの。
さあ、ここにいない方がいいよ。
早く部室に戻りましょ!」
わ、私は……もう彼女を絶対に信じない!!



『新堂さんと入る』(変更)
「悪いんだけど、僕が一緒に入りたいなぁ。上級生の僕がいうんだから、ゆずってくれるよね」

「さあ、坂上君、一緒に入ってみよう」

「君、下を見てごらん」

「僕たちは、いつもここから出入りしているんだよ」

「実は君が気に入ってしまってね。
一緒に君を連れていこうと思うんだ」

「ははは、叫んだってむだだよ。みんなは、そこで眠っているさ」

「僕は、なんでここで倒れているんだ?」

細田さんは、得意げに私に聞いた。
「あそこの便器から……」
私は指さした。
「そうかい、じゃあ一緒に入ってみようか」
細田さんは、嬉しそう。
その時、新堂さんが横から口を出した。

「悪けど、俺と一緒に入らせてくれよ。
上級生の俺がいうんだから、ゆずってくれるよな」
やった、細田さんと入らなくてもいいんだわ。
「でも……、まあいいでしょう」

細田さんは、新堂さんの押しの強さに負けたようだ。
「倉田、一緒に入ろうぜ」
新堂さんにうながされて、私はトイレの中に入っていった。

カチャリと、彼がトイレの鍵をかけた。
新堂さんは、ぐるりとトイレの個室の中を見回すと、ふと動きを止めた。
そして、そのまま動かなくなってしまった。
「……どうしたんですか?」
私は、彼に聞いてみた。

彼は、私の問いかけにも答えず、じっとしている。

沈黙が続く……。それでも、彼にはなにか思うところがあるに違いない。
私も、しばらく彼につきあうことにした。
だんだん、私の口の中に唾が溜まってくるのがわかる。
私は、思わず唾を飲み込んだ。
「ゴクリッ」
あっ、しまった!

こんなに大きな音がするなんて……。

私は、新堂さんをちらっと見た。
彼も、ゆっくりと私の方を見た。
新堂さんは、笑っていった。
「ちょっと、下を見てみろよ」
私は、いわれたとおり下を見た。

「……なに!?」
今まで便器があったところには、ぽっかりと穴が開いているじゃない。
その穴は、どこまでも下に続いているように思えるほど黒かった。
「俺たちは、いつもここから出入りしているんだ」

いったいこの人は、何をいっているのかしら。

「実はお前が気に入っちまってな。
一緒に連れていこうと思ってさ」
新堂さんが、おかしくなってしまった!
「助けて!」
私は、とっさに叫んだ。
「ははは、叫んだってむだだよ。
みんなは、そこで眠っているさ」
彼は、そう言った。
私は、次の瞬間息を飲んだ。

私の目の前にいたのは、新堂さんではなく人型のゴキブリだった。
ゴキブリは、触角をクルクル回している。
黒光りした皮膚や、腕のギザギザが生々しい。
「こいつの体を俺が支配したのさ。
まだ俺は人間の姿でいるときが多い。
しかし、そのうちこいつと同化してしまえば、人間の姿に戻ることもなくなる。
ふははは!」
ゴキブリは、そういった。
じゃあ、新堂さんの体はいつかこの姿のまま、元に戻ることもなくなるの?

新堂さんをこのままほおっておくわけにはいかないわ。
勇気を出さなきゃ!!

私は思い切って、彼にタックルを食らわせた。
「ぐえっ」すると、よろめいた彼の口や鼻からもやっとしたものが飛び出た。
その、もやっとしたものはしばらく宙に浮かんで、トイレの穴へと素早く消えていった。

「う、ううーん」
あの変なものが抜けたせいで、新堂さんは元の姿に戻ったらしい。
「新堂さんしっかり!!」
「俺は、なんでここで倒れているんだ?」
新堂さんはいった。

どうやら、自分があの姿になったときの記憶はないらしい。
私はトイレの鍵を開け、急いで新堂さんを引きずり出した。
そして、そこに倒れているみんなを起こした。
「早く逃げましょう!」
私は、みんなをせかした。
嫌な予感がして、私は後ろを振り返る……。
そこには……。

黒く開いた穴から、ゴキブリがザワザワと湧き出てきていた。
そのゴキブリは、我先にと仲間を蹴落としながら這い出していた。
そして、そのゴキブリたちはいっせいに私たちに向かって飛びかかってきた。

「きゃーーーー!」

急いで、全員廊下に出るとトイレの入り口のドアを思いっきり閉めた。
標的を失ったゴキブリは、ドアの向こうでカサカサともがいている。
「早く部室へ戻ろう!!」
私たちは無我夢中で走り出した。

その時、私は新聞部員としての使命を感じていた。
怖い話は、こうでなければいけないと自分に言い聞かせて……。
端から見れば、私はちょっと信じられない神経の持ち主に見えるかもしれない。
これじゃ、人のことを変だなんていえないわね。

「もちろん怖い話は、まだ続けますからね。
そのつもりでっ!」
私は、走りながらみんなにいっていた。



『二階の北側トイレ』


細田さんは、得意げに私に聞いた。
「あそこの便器から……」
私は指さした。

確かに、冗談ではなくなにかの気配をそこから感じたのだった。
すると、ちゃぷっ、ちゃぽっ、と、なにか便器から音がする。
「なに?」
私は、細田さんと恐る恐る覗いてみた。
「えっ!?」

そこには便器の中からにゅるにゅると出たり入ったりしている男がいた。
彼が、人間ではないことはわかる。
目を、大きく見開きじっとこちらを見ている。
誰か連れがいると、こういうものでも割と冷静に見ていられるものね。

その男は、怖いというよりも奇妙な感じの方が強いわ。
しかし、よく見るとその男は私の方を見ているのではないことに気がついた。

ゆっくり目線を追ってみる。
そこには、金縛りにあったように目を見開いている細田さんがいた。
私は、焦って声をかけた。
「細田さん、どうしたんですか!
汗びっしょりですよ」
よっぽど怖かったらしい。

「違うんだ、違うんだよ!!
僕は、僕は!!
本当にすまない!!
中野、許してくれ」
彼は、その男に土下座していた。
トイレの、汚い床に顔をこすりつけて、何回も何回も……。
細田さんは、彼と顔見知りなの?
すると、にゅるにゅるした男はズルリッと、便器から出た。

しばらく、ゆらゆらと浮かんでいたが、ものすごい速さで、細田さんの口の中へめり込んでいった。
「細田さん!!」
私は駆け寄り、細田さんを揺すった。
彼は、しばらくのたうち回っていたかと思うと、ぱっと目を見開いてすくっと立ち上がった。
びっくりしている私に、彼はこういった。

「ああ、なにかすがすがしい気分だ。
気分爽快だよ、倉田さん。
今まで、彼のことを気に病んでいたけれど、もう大丈夫だ。
彼は、寂しくて僕と一緒にいたかっただけなんだ。
これからは、僕の中で彼は生きていくのさ」

よく意味が分からない私は、きょとんとしたままだった。
そして、細田さんはいった。
なんでも、さっきの男は細田さんの友達で、以前、ある事故で亡くなったということだった。
そう、トイレで……。

その時、細田さんも、その場にいたんだけど、どうしてあげることもできなかったそうだ。
細田さんは、そのことをずっと気に病んでいたらしい。

「トイレツアーはここでやめて……。
さあ、部室に戻って話の続きを聞きましょう!」
なんなんだろう、細田さんて……。
まあいいか。


『三階の北側トイレ』


細田さんは、得意げに私に聞いた。
「あそこの便器から……」
私は、一番窓側のトイレを指さした。

「そうかい、じゃあ一緒に入ってみようか」
細田さん、嬉しそう。
「すいませーん。
二人きりにさせてくださーい。
ご協力お願いしまーす」
彼は、元気のいい女の子のような話し方をしている。
誰かが、舌打ちをした。
みんなは廊下に出ていった。

そして私は、彼に押し込まれるようにトイレの中に入った。
細田さんは鍵をカチャリとかけた。
その個室には、窓がついている。
そのせいか、結構明るい感じがしていた。
「さあ、倉田さん、もっと霊を感じるんだ。
目を閉じて。
感覚を研ぎ澄ませるんだ」
細田さんがいう。

私は、取りあえず彼のいうことをきいて目を閉じた。
……しばらくの時が流れた。
私の耳には、水道から滴る水の音だけが聞こえる。
「細田さん、何も起きないですよ……」
私は、彼にささやいた。
「しっ! 静かに!」
細田さんは私に注意した。

突然、ドンッ!! ドンッ!!と壁を叩くような音がした。

私は、思わず飛び退いた。
細田さんも、私以上に驚いているみたい。
「これ、なんの音かな?」
私は、細田さんに聞いた。
「な、なんだろう、壁になにか当たっているのかな?」
彼も、不審そうに私に尋ねた。

心なしか、さっきより音が大きくなっている気がする。
いや、気のせいじゃない。
確かに、音は大きくなっている。

「細田さん、ここから出たほうがいいですよ!」
私は、彼をせかした。
「で、でも、鍵が……開かないんだ!」
彼は、おろおろするばかりだった。
「ど、どうしよう……」
私たちは、叫んだ。

「おーーーーーい!」
「だれかーーーー!」
けれど、呼ぼうが叫ぼうが、廊下にいるはずの先輩たちは助けに来る気配がない。
このまま、この成り行きを二人で見守るしかなさそうね。

こんなことになるとは、思っていなかったのか、細田さんはかなり焦っているようだった。
突然、あの音がぴたっと鳴りやんだ。
「倉田さん……、あ、あれ見てよ!」
彼は指さした。
私は、彼の指がさしたほうを見る。

「!?」
窓の曇りガラスに、上から真っ赤な血が流れてくるのが見えた。
それは、いく筋もの線をえがいて下に滴り落ちている。
お互い、声も出せずに立ちすくんだ。

首を吊った女の人が、ガラスに何度も何度もぶつかっているのだった。
曇りガラスを通して、その女の人の恨めしそうな目がこちらを見ている。
なんとかして、ここから逃げなければ。

私は、細田さんにいった。
「細田さん、体当たりして下さい!」
彼はドアに思いっきり体当たりした。

鍵が壊れ、私たちは転げるようにトイレから出た。
なんとか、そこから脱出することに成功したみたい。
こういうとき、彼のような人は得ね。
急いで、私たちはトイレの出口から廊下に出た。

「こちら側からドアを開けようとしても、全然開かないから心配していたのよ」
女の子がそういった。
私達が、さっき起こったことを話すと、彼女は声をひそめた。
「そうそう、さっき言おうと思ったんだけど……。
そういえば以前、新校舎の屋上から首吊り自殺した女の子がいたんだよ。
そのひもの長さが、ちょうどあのトイレの窓に届くくらいだったんだ。
それで、上から落ちてきたときのショックで、あの窓が割れてすごかったって聞いたことがある」

私たちは、沈んだ気分でその話を聞いた。
私たちが、トイレに入る前に言ってくれればよかったのに。
「はぁ……」
私は思わず、溜息をもらした。
あんな中途半端な気持ちで、霊を感じるなんていわなければよかった……。

「まあ、取りあえず部室に戻りましょう。
ここでこうしていても仕方ありませんから」
私は、重い足取りでみんなと部室へ向かった。



『1、叫ぶ』(変更)
このままでは、変になってしまいそうだ。
このままでは、気が変になってしまいそうだ。
5話動物霊の棲む体育館脇のトイレ


『2、狸』(変更)

残念だね。
実は、狐だったんだよ。

残念でした。
答えは、狐だったんだよ。

昔、一人の男子生徒がいたんだけどね。
昔、一人の男子生徒がいたんだよ。

彼の周りは、いつも占ってもらいたい学生たちが、取り巻いていたよ。
坂上君も占ってもらいたい?

いつも、彼の周りには占ってもらいたい学生たちが取り巻いていたよ。
倉田さんも、占ってもらいたいと思うかい?



『1、占ってもらいたい』(女用)

へえ、占いが好きだなんて女の子みたいだね。
へえ、占いが好きだなんてやっぱり女の子だね。


(変更)

こういった、人間の不純な願いに応えてくれるのは、その心の隙間に入り込もうとしている低級な霊しかいないんだよ。
結局は……。
それを、面白半分でやろうなんてみんないい度胸しているよな。

こういった、人間の不純な願いに応えてくれるのは、その心の隙間に入り込もうとしている低級な霊しかいないんだよ、結局は……。
それを、面白半分でやろうなんてみんないい度胸しているよね。

狐憑きって知ってる?
まるでそんな状態だったって。
学校には来ていたれど、ほとんど授業には出ていなかったらしい。

まるで、取り憑かれたような状態だったって。
学校には来ていたれど、ほとんど授業には出ていなかったらしいよ。

彼は僕を押し倒し、胸の上に馬乗りになるとまだ、さっき食べた蛾の鱗粉がついた口で僕の顔を舐め上げた。
僕は、とっさにいつも身につけているお守りを、彼の額に押し当てたんだよ。

彼は僕を押し倒し、胸の上に馬乗りになったんだ。さらに、まださっき食べた蛾の鱗粉がついた口で僕の顔を舐め上げたんだよ。
僕は、とっさにいつも身につけているお守りを、彼の額に押し当てた。



『2、ついていかない』(変更)
……七人目はまだ来ないね。
そうなると、次がいよいよ最後か。
坂上君、何も起きないといいね。
……君も、そろそろ気づいていると思うからさ。
この部屋を包む異様な霊気にね。

七人目はまだかなあ。
来なければ、次が最後だね。
今度はどんな話なのかな?



『2、見たくない』(変更)
……これで、僕の話は終わりだよ。
……七人目はまだ来ないね。
そうなると、次がいよいよ最後か。
坂上君、何も起きないといいね。
……君も、そろそろ気づいていると思うからさ。
この部屋を包む異様な霊気にね。

……僕の話は終わりだよ。
じゃあ、次にいこうか。
七人目が来なければ、これで最後だね。




『1、見てみたい』



私と細田さんは、薄暗いトイレに踏み込んだ。
冷たくジトッとした空気が、頬にまとわりつく。

「これが、その文字盤だよ……」
細田さんが、文字盤を指さした。
確かに、文字盤の文字は薄汚れてはいるけど、しっかり読みとることはできるわ。
その文字の上に、どす黒い血のような汚れがついている。
「倉田さん!!
見て!!」
細田さんが、もう一度文字盤を指さした。

そこには、文字盤の壁に青いサビのついた十円玉がへばりついていた。
「どういうこと!?」
私たちは、金縛りにあったようにそこから動くことができなかった。
なんと、その十円玉は勝手にするすると動きだした。

「ここへなにをしにきた」
その文字が指した。
「ただ、通りがかっただけです」
私はいった。
「どうしよう。
こっくりさんが勝手に降りてきちゃったよ!
早く帰ってもらわないと!」
細田さんは焦っていった。

「うそをつくな」
また、文字が指す。
冷や汗が背中をつたう。
私たちは、本当に怖くなってしまった。



『1、こっくりさんに帰ってもらう』



細田さんは、泣きそうな声で訴えている。



『2、逃げる』



「逃げましょう!」
私は叫んだ。

その時、トイレ入口のドアが勢いよく閉まった。
「しまった!」
そのドアは、押しても引いても開かない。

私たちは、後ろを振り返った。
また、十円玉が動き始めた。

「にがさない。 ころす」
十円玉が静かに動く。
私があの時、好奇心を起こさなければ……。
……もう、今さら遅い。



『わかつた』



「やった! さあ逃げるんだ」
細田さんは、私の手をつかむと走り出した。
「もう、あそこに行くのは絶対やめよう」
私は、細田さんのいうことばに頷いていた。
そして、いい記事が書けそうだと密かに思った。
さあ、あと一人だわ。
早く部室に戻って、次の話を聞かなくちゃ……。



『1、聞きたくない』(変更)
別に聞きたくないんだったら、それでもいいのさ。
ただ、あのトイレには行かないほうがいいよ、ってことだけいっておくね。
……これで、僕の話は終わりだよ。
……七人目はまだ来ないね。
そうなると、次がいよいよ最後か。
坂上君、何も起きないといいね。
……君も、そろそろ気づいていると思うからさ。
この部屋を包む異様な霊気にね。

別に聞きたくないんだったら、それでもいいしさ。
ただ、あのトイレには行かないほうがいいよってことだけいっておくね。
僕の話は終わりだよ。

本当はもっと話したかったんだけど……。
まあいいや、七人目が来なければ、次で最後だね。



『2、先を聞く』(変更)

……これで、僕の話は終わりだよ。
……七人目はまだ来ないね。
そうなると、次がいよいよ最後か。
坂上君、何も起きないといいね。
……君も、そろそろ気づいていると思うからさ。
この部屋を包む異様な霊気にね。

……ということで、僕の話は終わりだよ。
それにしても、七人目は遅いね。
どうしたんだろう。
嫌なことになってなければいいけど。
じゃあ、次の話を聞こうか。



『1、近づかないタイプ』(変更)
無益な殺生という言葉にぴったりだったね、彼は……。
虫を見ると、逃げるよりも追っかけていき、踏みつけて殺してしまうタイプだったのさ。

僕がこれから話そうとしている彼なんて、まさにそうさ。
虫を見ると、殺すまで追いかけるってタイプだったんだから。



『1、虫のボスを見つけようとした』(変更)

そしてある日の放課後、虫のボスを見つけるべく、彼は例のトイレまで行ったんだ。
そして、虫が大量にうごめいているトイレを棒で引っかき回しながらね。
気のせいか、棒で虫を引っかき回していると、どんどんその量が増えてきているような気がした。

ある日の放課後、虫のボスを見つけるべく、彼は例のトイレまで行ったんだ。
そして、虫が大量にうごめいているトイレを棒で引っかき回したのさ。
しばらくそうしていると、気のせいか、棒で虫を引っかき回していると、どんどんその量が増えてきているような気がした。

「いったい、こいつらのボスはどこにいるんだ!?」
彼は、我慢できずに叫んだ。

すると、トイレの明かりに引き寄せられたのか、大人の顔ほどもある一匹の蛾が飛んできていた。
蛾は、彼の周りをゆらゆらと飛んで、まるで彼をバカにしているように見える。
「お前が、ボスか!!」
そういって、自分の顔に向かって飛んでくる蛾を棒切れでたたき落としたんだ。
叩かれたショックで、その蛾は鱗粉をまき散らしながらべちゃっと床に落ちた。
プリッと張っていた蛾の腹は、今は無残に潰れて黄色い内臓を飛び散らせていた。
まだ、ぴくぴくと羽をけいれんさせている。

それを見ながら、彼はここのボスを倒したんだという優越感に浸っていた。
トイレの薄暗い電灯に、蛾の鱗粉がきらきらと光る。
雪が降るように、鱗粉が舞い落ちている。

その時、彼はだんだん自分のからだが痺れていくのがわかった。
「しまった、あの鱗粉のせいか!?」
彼は、そういい終わらないうちに倒れてしまった。

目の前がだんだん暗くなり、意識が遠のいていく……。
遠のいていく意識の中で、彼の目の前には潰された蛾がうっすらと見えるだけだった。

彼は、死後三日ほどで発見されたらしいですよ。
死因は、トイレで足を滑らせて転んだときの打ち所が悪かったんでしょう、ということだったんだけどね。

その時の彼は、すごい状態だったらしいですよ。

「こ……こいつらのボスはどこにいるんだ!!」
彼は、我慢できずに叫んだ。
すると、トイレの明かりに引き寄せられたのか、大人の顔ほどもある一匹の蛾が飛んできていたんだ。
蛾は、彼の周りをゆらゆらと飛んで、まるで彼をバカにしているように見えた。
「お前が、ボスか!!」
彼はそういって、自分の顔に向かって飛んでくる蛾を、棒切れでたたき落としたんだ。
叩かれたショックで、その蛾は鱗粉をまき散らしながらべちゃっと床に落ちた。
プリッと張っていた蛾の腹は、無残に潰れて黄色い内臓を飛び散らせていたんだ。
蛾はしばらく、ぴくぴくと羽をけいれんさせていた。

それを見ながら、彼はここのボスを倒したんだという優越感に浸っていた。
トイレの薄暗い電灯に、蛾の鱗粉がきらきらと光る。
雪が降るように、鱗粉が舞い落ちていた。
その時、彼はだんだん自分のからだが痺れていくのがわかったんだ。
「……しまった、あの鱗粉のせいか!?」
彼は、そういい終わらないうちに倒れてしまった。
目の前がだんだん暗くなり、意識が遠のいていく……。
遠のいていく意識の中で、彼の目の前には潰された蛾がうっすらと見えるだけだった。

彼は、死後三日ほどで発見されたらしいよ。
死因は、トイレで足を滑らせて転んだときの打ち所が悪かった、ということだったんだけどね。
その時の彼は、すごい状態だったらしいよ。




『3、想像もつかない』(追加)



固い床がなく、何だか足もとが不安定で、ぶよぶよしている。
力を込め、足に体重をかけると、厚いふかふかのカーペットを踏むような感覚だった。


(2)
床には、山のように虫の死骸が積まれていて、足の踏み場もなかったそうだ。
その中で、ひときわ小山のように盛り上がっているところがあってね。
そこをほじくり返したら、人間の顔が出てきたんだ。
彼だよ。



『1、もうやめてほしい』


「もうやめてください!」
私は、半ば叫ぶようにいっていた。
気持ち悪くて仕方がないわ。

「いいよ、僕はこれでやめてもいいんだからね。
倉田さん、あのトイレはどんなことがあっても使っちゃ駄目だよ……。
保証はしないからね」

細田さんは、そういって私を見た。
一瞬私は、動けなくなった。
だって、細田さんの肩には黄色と黒のシマの……、そう、あれはジョロウグモだわ。
ジョロウグモが、細田さんの肩についているじゃない。

「ああ、こいつかい?」
そういって、細田さんはジョロウグモを窓から逃がした。
「聞いたことがないかい?
クモは執念深くてね。
殺すとよくないことが起こるって、よくおばあちゃんにいわれていたんだ」
細田さんは、自分の席に戻っていった。



『3、もしかしたらあるかもしれない』(変更)
その、もしかしたらが本当になってしまったんだよ。
……実は、僕の友達が被害にあったんだ。
あのトイレを使ったおかげでね。
その友達の名前は、津田圭一っていうんだ。

でね、そのもしかしたらが本当になってしまったんだよ。
……実は、僕の友達が被害にあったんだ。
あのトイレを使ったおかげでね。
その友達の名前は、津田圭一っていった。



『1、津田君と戦う』(変更)

僕は、彼に馬乗りになり彼の首を絞めたんだ。
するとどうだい、彼の口から女郎グモが湧いて出てきたんだ。
あの、一匹だけじゃなかったんだ。
僕は、彼の首から手を離すと口の中に手を突っ込んで、胃の中の物を全部吐かせたんだ。
「うげっ。うげげーー!」
彼の口から、胃の中の物に混じって何匹もの女郎グモがうごめきながら出てきたんだ。

彼に馬乗りになり、首を絞めたんだよ。
するとどうだい、彼の口からジョロウグモが湧いて出てきたんだ。
僕は、彼の首から手を離すと口の中に手を突っ込んで、胃の中の物を全部吐かせたよ。
「うげっ。 うげげーー!」
胃の中の物に混じって何匹ものジョロウグモがうごめきながら出てきた。

本当に、何にも覚えていないらしい。
本当に、何にも覚えていないようだった。

ただ、時々虫を見るとき、あの目をして、うまそうに舌なめずりするんだ。
ただ、時々ハエを見るとき、あの目をして、うまそうに舌なめずりするんだ。



『3、看護婦さんに助けを求める』(変更)
もう夜らしい。
まだ、消灯にはなっていなかった。
ということは、今九時前か……。
そして、ふと天井を見た。

「!?」
もう一度、目を凝らしてみた。
確か今、女郎グモがあそこに……。
僕は、まんじりともしない夜を過ごしたよ。
翌日、津田君がお見舞いにきてくれた。

「細田君、大丈夫かい?」
彼は、心配そうに僕にいった。
僕は、彼と目をまっすぐ合わすこともできない。

夜のようだけど、まだ消灯にはなっていなかったよ。
ということは、今九時前か……。
なんて考えながら、ふと天井を見たんだ。
「!?」
もう一度、目を凝らしてみた。

確か今、ジョロウグモがあそこに……。
僕は、まんじりともしない夜を過ごしたよ。

翌日、津田君がお見舞いにきてくれた。
「細田君、大丈夫かい?」
彼は、心配そうに僕にいった。
僕は、彼と目をまっすぐ合わすこともできなかった。




『1、信じる』(変更)
……七人目はまだ来ないね。
そうなると、次がいよいよ最後か。
坂上君、何も起きないといいね。
……君も、そろそろ気づいていると思うからさ。
この部屋を包む異様な霊気にね。

それにしても、七人目の人、遅いね。
まあ、いつまで待っていてもしょうがないよね。
次の話が終わっても来なかったら、さっさと帰ろうよ。



『2、信じない』(追加)


いいかい、倉田さん。
約束だよ。
じゃあ、そろそろ次の話を聞こうか……。
6話取り残された旧校舎の補習授業



『2、いやといったらいや』



そういうと、細田さんたちは立ち上がった。

さっさと、古びた扉から出ていこうとする。
私はあわてた。
呼び止めようとしたとき、不意に細田さんが振り向いた。

「本当に行ってしまうよ。いいのかい」
一人で残されるなんて、嫌です!
私もいっしょに行きます。
…………そういったつもりだった。
でも、舌が動かない。
誰かに押さえつけられているみたいに。

「……そうか。 君も強情だね」
細田さんは、ため息をついた。
違います!
いっしょに行きたいんですってば!!
……でも、声は出ない。
それどころか、立ち上がろうとしても、体さえ動かない!
背筋を、冷たい汗がすべり落ちた。

私の体は、どうなってしまったの!?
たぶんこのとき、私の顔色は、真っ青だったはず。
けれど、細田さんは私に背を向けた。
「気が向いたら、追いかけてきてくれていいからね」

その言葉を残し、ドアがぴしゃりと閉まる。
私は、たった一人で取り残された。
私の異変に、気づかなかったのかしら。
ふてくされて答えない、生意気な下級生だとでも?
鈍感な細田さんに、腹が立った。

でも、今はそれどころじゃないわ。
私は深呼吸した。
落ち着かなければ。
今日はいろんなことがあったし。
緊張のしすぎで、金縛りにあっているのかもしれない。

何かで読んだことがあるわ。
十代のあいだに起きる金縛りは、五十パーセント以上が霊なんかに関係ないって。
体が疲れていたり、ストレスを感じているとなることが多いって。
きっとそれよ。
そうに違いないわ。

私はもう一度、深呼吸をした。
そのときだった。

カツ……カツ……という足音が聞こえた。
こっちにやってくる。

誰?
細田さんが、戻ってきてくれたのかしら?



『1、細田さんではない』



誰なの?
そう考えた私は、そのとき重大な事実に気づいた。
旧校舎の床は腐りかけた木造じゃない。
あんなに足音が響くはずがないわ。
けれど、カツーン……カツーン……と、足音はだんだん大きくなってくる。

ここに入って来ようとしているの?

恐怖で悲鳴をあげそうになった。
でも、やっぱり声は出ない。
なんだか息苦しいような気がしてきた。
足音は大きくなる。
カツーン……カツーン……カツーン……。
とうとうドアの前まで来た。

私は固く目を閉じる。
最後なの!?
…………けれど、ドアは開かなかった。

何事もなかったように、足音は遠ざかっていく。
カツーン……という張りつめた音が、廊下の向こうに消えていった。

助かった。
今のヤツの正体はわからないけれど、とにかく私を狙っているんじゃなかった。
ホッとして肩を落とした瞬間、不意に体が動くようになった。
両手を動かしてみる。
固いゴムみたいだった舌にも、感覚が戻っている。
私は思わずつぶやいた。

「なんだったのよ……?」
軽く首を振って、立ち上がる。
なにげなく後ろを向いた。

…………!

私の肩から十センチほど離れて浮いている、二つの目玉。
黒目が私を見つめている。
悲鳴をあげることも忘れて、私はそれと見つめあった。
くらり、とめまいがした。
足から力が抜ける。
また、体の自由が利かなくなったみたいだ。

フッと気が遠くなった瞬間、目玉が私の口に飛び込んだ。

固いゼリーのような、ヌルヌルした物体が舌の上をすべる。
なまぐさい臭い。
思わず、吐き気がした。

でも、目玉はそんなことお構いなしで、グイグイと入ってくる。
声が出ない。
息が苦しい。
苦しくて涙が出た。

そしてとうとう、なめらかな目玉がのどの奥に押し込まれた。
……不思議と、もう気分は悪くなかった。

頭が真っ白になったような、眠くてしかたないような気持ちだった。
このまま寝てしまおうか。
私は床にうずくまり、ひざを抱えた。
誰かの声がする。
眠りなさい……眠りなさい……。

その体は、私がもらうから……。
……誰の声?
私は、この学校に巣くう魔物の罠にかかってしまったの?
……でも、もういいわ。
私は眠いのよ。
このまま眠るんだから…………ずっと。

眠り込む一瞬、何か邪悪な意識を体の中に感じた。
でも、それがどういう意味なのか……。

私にはもう、考える力もなかった。



『2、細田さんに間違いない』



細田さんが戻ってきてくれたんだわ。
立ち上がった私の前で、ドアが開いた。

「まだ、気は変わらないかい?」
やっぱり細田さんだった。
また金縛りにあう前に、急いで駆け寄った。
「私も行きます!」

細田さんは、ホッとしたようにうなずいた。



『尿意確認』(女用)
ひょっとして、トイレに行きたいとかいうことない?
その……、トイレに行きたいとかいうことはない?



『2、どうしても行きたい』(PS変更)
僕がそういうと、細田さんは黙り込んだ。
奇妙な目で僕を見ている。
嫌な気がしたけれど、僕は立ち上がった。

きぃきぃときしむ廊下に出る。
さて、トイレはどっちにあるんだろう?

……わかったよ。
でも、気をつけてくれよ。
そういうと、細田さんは黙り込んだ。
奇妙な目で私を見ている。
嫌な気がしたけれど、私は立ち上がった。



『1、右』



私は右に行ってみることにした。

体重を載せると、床が沈むのがわかる。
へたをすれば、本当に床板が折れて落ちるかもしれない。

気をつけながら、一歩一歩足を運ぶ。
でも、暗い廊下の端まで行って、私はがっかりしてしまった。

行き止まりだった。
トイレなんてありはしない。
反対側だったのかしら?
そう思って振り向いた。

……目の前に、細田さんがいた。
「こっちにトイレはないよ。
もう戻ろうよ」
息が止まるほど驚いた私に気づかなかったのか、穏やかな口調でいう。
私は黙ってうなずいた。

今のショックで、トイレに行きたい気なんて失せてしまったわ。

私と細田さんは、元の教室に戻った。
そして、再び話の続きが始まった。


きぃきぃときしむ廊下に出る。

さあ、トイレはどっちにあるのかしら?



『2、左』


私は左に行ってみることにした。

トイレはすぐに見つかった。
急いで中に入る。
そこで私は、信じられないものを見た。

壁にはめ込まれた、いくつものドクロ。
うなじの毛が逆立った。
……でも、すぐに私は、勘違いに気づいた。
ドクロなんかじゃない。
あれは壁の染みよ。
人の顔のような形をしている。

だけど、いくつもある染みが、みんな同じ形をしているなんて。
奇妙な感じがするわ。
私は近づいて、染みをよく見てみた。

……一瞬、染みが動いた気がした。
びっくりして、もっと顔を近づけてみる。
「……何をしているんだい?」

いつの間にか、細田さんが立っていた。
「いえ、あの……今、染みが動いたような気がして」
いいながら、急に恥ずかしい気持ちがこみ上げてきた。
染みが動くだなんて。
おびえた子供が、揺れるカーテンを見て幽霊だと思い込むようなものよね。

怖い怖いと思っているから、あんな幻覚を見てしまったのかしら。
「……なんでもないです」
「そうかい?
じゃあ、戻ろうよ」

私はうなずいて、細田さんといっしょに元の教室に帰った。
そして、再び話の続きが始まった。


『2、何もなかった』



細田さんの言葉をさえぎるように、ガタンと大きな音がした。
一瞬、私たちは凍りついた。
ドアの向こうだわ。
細田さんの話と同じ……。
恐る恐るドアを開けてみる。

……やっぱり、何もない。
悪い予感を抑えながら、廊下に顔を出してみた。

サッと踊り場に隠れる人影。
そんな馬鹿な。
細田さんの話の通りになっている。
私は廊下に飛び出した。
人影の正体を見きわめたかった。

踊り場には、もう誰もいなかった。
上かしら?

見上げたとき、不意に影がさした。
私の首に、誰かの腕が巻きつく。
苦痛と恐怖の中で、私は必死に相手を見ようと首をひねった。

首を絞めていたのは、おかっぱ頭の少女だった。
真っ白い仮面をかぶって、顔がわからない。
その目が、冷たく光っていた。
誰なの!?
問いかけようとしたけれど、声が出ない。
少女の目が、ほんの一瞬なごんだ。

そして次の瞬間、重苦しいゴキッという音が聞こえた。
なんの音?
考える私の頭が、くらりとまわる。
鼻と口から、温かい液体があふれ出す。
ああ……私の首の骨が、折れた音だったのね。

気づいたときには、私はもう、暗黒に引きずり込まれていた。