『2、教科書の中身を捨てる』【END勘違い】 | ナノ
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……教科書の中に挟まってるものを、こっそり捨ててしまえばいい。
何であっても、小泉が入れたものならろくなものじゃないだろう。
そう思ったのね。

河原君は、次の休み時間に屋上へ行ったの。
誰もいないのを確かめてから、こっそり制服に隠した教科書を開こうとしたのよ。
その日は風が強くてね。
彼は教科書の中に入っているものが飛ばされないように、隅の方に寄って風を避けたの。

恐る恐る中を見ようとすると……。
ゆっくりと屋上の扉が開いて、誰かの影が見えたの。
そのシルエットは生徒のものじゃなかったわ。
風に揺れたネクタイから、先生だってすぐにわかった。

先生は遠くの方にいたけど、河原君の様子をじっと伺ってるみたいだった。
実はね、河原君の様子が変だったって、誰かが告げ口したのよ。
それで先生が彼を追ってきたってわけなの。
先生は、一歩一歩近付いてきたわ。

その口元は明らかに何かいいたげだった。
さらに目線は、河原君の手元の教科書をじっと見ていたの。
先生が近付いてくる度に、その影が大きくなったわ。
河原君は影に呑まれそうな気がして、思わず先生を突きとばして逃げちゃったの。

「待てっ!!」
そんなことされたら、先生も黙ってはいられないよね。
河原君は追いかけられたわ。
そして、逃げている途中、階段の辺りでつまづいたの。
彼の手から教科書が落ちたわ。
それは階段の下まで転げ落ちたの。

これで中に入っているものが出て、下に落ちたに違いない。
もし、教科書の中に入っていたのが問題用紙なら、きっと何をいっても信じてもらえないだろう。
河原君は、階段の上で絶望的な気分になったの。

先生が、一歩一歩近付いてきたわ。
河原君は、後ずさりをした。
そこが階段の上であることを忘れてね。

グラッと、体のバランスが崩れたわ。
彼は頭から階段を落ちていったの。

……当然、首の骨が折れたわよ。
彼、死んじゃったの。
……河原君の死体の側には、教科書と、中に挟まっていた手紙があったそうよ。
彼の教科書に挟まっていたのは、問題用紙なんかじゃなかったの。

先生が拾い上げて見たら、ラブレターだったって。
河原君から教科書を借りた人は、自分で返しにいかなかったみたいなんだ。

多分この……河原君が死んだのは私のせいです、って反省文を書いた橋本さんが、変わりに返してあげるっていって、ラブレターを挟んだんじゃないかなあ。
小泉君が河原君の教科書をいじってたのは、このラブレターを見るためだったのよ。
どうしてかは知らない。

橋本さんが手紙を挟むところを見て、好奇心にかられたのかもしれないし、他の理由かもしれないけど。
河原君が死んだのは、彼自身のせいだと思うな。
あれこれよけいなことを考えるからいけないんだよ。

それにしても、ラブレターを書いた橋本さんも悲惨だよね。
自分の手紙のせいで、こんなことになるなんて思ってなかっただろうし。
まわりに騒がれたりして、ずいぶん辛い目にあったらしいよ。

河原君のファンの子って他にもいたからさ、嫌がらせとかもされてたって。
橋本さんは、この反省文を書いた後に自殺しちゃったって噂だよ。
でね、問題の教科書とラブレターはちゃんと供養されて、燃やされたんだ。

だけど何かの念が取りついちゃってるんだろうね。
今でも教科書の幻が、この学校に現れたりするらしいよ。



【通常】



それを見た人には、必ず不幸が訪れるんだって。
どんな不幸かって?
それは知らないけどね。

さてと、私の話はこれで終わり。
部室に戻ろうよ。

もしかして、もう七人目が来てるかもしれないじゃない。
ね、恵美ちゃん……。


【隠しシナリオ】



それを見た人には、必ず不幸が…………あっ!

恵美ちゃん、後ろ……!!
福沢さんは、私の後ろを指差したまま震えている。
一体どうしたの?
私は恐る恐る振り向いてみた。

……え?
特に変わったものはないわ。
なのに彼女は、脅えたように走り出した。
「福沢さ……!」
ドアを開け、飛び出して行く。
「待って!」
後を追おうとした私の手を、誰かがつかんだ。

見ると、知らない人が側に立っている。
この男の子は何?
いつのまにここに入ったの!?
彼は、私の腕を軽く引いた。
どうしたんだろう。
頭の中が真っ白になる。

続いて、目の前に闇が広がった。
闇の中にちらほらと光が見える。

時々刺す光が彼の顔を照らす。
もしかしてこの人、福沢さんが話していた河原さん……?
周りには、他に誰もいなくなっている。
すごい闇……。
呑まれて溶けてしまいそう。
彼は私の方を向き、何かいいたげにしている。

人より赤く見える唇が、わずかに震えた。
そして、私は黙って彼の言葉を待った……。


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