でも、その怪しさが、彼の魅力かもしれない。
風間さんって何だか面白い人よね。
「私の家、もうすぐですよ」
「そうか。チカンの霊は出ないようだし、とりあえず今日は大丈夫そうだな。
……でも、明日からのことが心配だなあ。
僕達はこれから毎日、一緒に帰ったほうがいいかも……」
風間さんは、ぶつぶついっている。
この人、どこまで本気なのかしら。
よくわからないわ。
そんなことを考えながら歩いていると、ふいに後ろから肩を掴まれた。
「きゃっ!」
「ふふ、驚いた?」
風間さんは、人を驚かせて笑っている。
「何ですか?」
「あはは、チカンの霊かと思った?」
「急に掴まれて驚いただけです」
……もう、風間さんったら。
家までもう少し。
私は、自然と早足になっていた。
「恵美ちゃん、待っ……」
再び、肩を掴まれる。
「風間さん、驚かさな……っ!」
振り向くと、全く別の男が私を見下ろしていた。
誰?
暗がりで、顔がよくわからない。
「きゃーーーーっ!!」
「恵美ちゃん!?」
風間さんが、すぐに追いついて来た。
「このやろう!何のつもりだ!?」
彼は私から男を引き離し、思い切り殴りつけた。
男は、吹き飛んで地面に腰をつく。
しかしすぐに、うめき声をあげながら反撃してきた。
「チカンの霊か?
いいかげんに成仏しろよ!」
風間さんは、少しもひるまない。
強いのね……。
しばらくして、風間さんは体についたホコリをはらいながら、私の側に来た。
「もう大丈夫だよ」
男は、地面に転がったままピクリとも動かない。
あの男、一体何なのかしら。
風間さんのいう通り、チカンの霊?
それとも、ただの怪しい人?
どっちにしろ、もう少しでどうにかされるところだったわ。
「危なかったね。
だから女の子を一人で、こんな時間に帰らせたくないんだよ」
私は、風間さんに家の前まで送ってもらった。
「じゃあね、恵美ちゃん」
風間さんって、不思議な人。
ふざけてばかりかと思えば、真面目に私を守ってくれたし……。
そして次の日。
私は、早起きして学校に向かっていた。
日野先輩に、昨日のことを報告するためにレポートを作らなきゃ。
それから、風間さん……。
どこのクラスなのかしら。
昨日のお礼がいいたいわ。
すずしい風が、私の頬をかすめていく。
鳥は、かわいくさえずっている。
なんてすがすがしい日……ん?
道端に、男が倒れていた。
昨日風間さんが倒した男ね。
一晩中ここにいたのかしら……あっ!!
心の中に、冷たい雨が流れた。
続いて、言い知れぬ不安が襲ってくる。
風間さんにボコボコにされてて、顔が変形しているからよくわからないけど。
私の勘に間違いがなければ、この人は……。
鼻血を出しながら、大の字にのびているこの人は……。
「先生っ」
私の担任だわ〜!
か、風間さん……!
なんて勘違いをしてくれたの?
……ううん、私にも責任があるわ。
いくら暗かったとはいえ、先生がわからなかったなんて。
不思議だわ。
学校の七番目の不思議は、これで決まりかも。
………………そんなの書けるわけないじゃない!
がっくりと肩を落とす。
そんな私の頭上で、鳥のさえずりが、笑い声のようにこだました。
(旧校舎END)
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