『1、……怪しいわ』『3、笑うとかわいいわ』 | ナノ
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『1、……怪しいわ』



……怪しいわ。



『3、笑うとかわいいわ』



笑うとかわいいわ。
……でも、



※以下同文※



なんだか変よね。

風間さんがいうような霊が本当にいたら、笑ってなんかいられないはずよ。
私は、そっと風間さんから離れた。

「じゃあ、みなさんさようなら。
僕は、福沢さんを送りますね」
細田さんが立ち上がる。

「えっ、あ、ありがと。
だけど私、今日一人じゃないの。
友達が待ってるから」
福沢さんが、出口に向かって歩き始める。

「岩下はどうするんだよ」

「私?  一人で帰るわ。
だってあんな話、信じられないもの」
岩下さんは、きっぱりといった。
そ、そうよね。
私ったら、何を心配していたのかしら。

その時、風間さんの目がキラリと光った。
「嫌だなあ、僕の話が信じられないって?
駄目だよ。
何かあってからじゃ、遅いんだから。
どうしても一人で帰りたいっていうなら、おまじないを覚えていってくれ。

マザーカ、マザーカ、マザーカ
……っていうんだ。霊に向かって何度も叫ぶんだぞ。
わかったかい?

それじゃあ恵美ちゃん、いこうか」


1、ますます怪しいわ
2、真実味があるわ



『1、ますます怪しいわ』



……ますます怪しいわ。
そんな気持ちなどおかまいなしに、風間さんは私を無理矢理ひっぱり、部室から一歩踏み出した。



『2、真実味があるわ』



真実味があるわ。
よくわからないけど、マザーカって言葉、すごく聞き慣れた感じがする。
……って、風間さんの名前を逆読みしただけじゃない!
風間さんは、私の肩を引き寄せ、部室から一歩踏み出した。



※以下同文※



「それじゃあね。 アデュー」
なにがアデューだか。
ちょっと、どうしよう。
私、この人と帰んなきゃいけないの?
部室から、みんなが次々と出てきた。
暗い廊下を、それぞれ、違う方向に歩いていく。
「さ、帰ろう。

それにしても日野のやつ……こんなに可愛い後輩がいるなんて、うらやましいなあ」
風間さんは、ニコニコしている。
「もしよかったら、今日から毎日送ってあげてもいいよ。

あ、それって恋人どうしみたいだね、はははは……」


1、た、助けて
2、そうですね、ふふふふ……



『1、た、助けて』



「ん、どうしたの?
そんな不安そうな顔をして。

大丈夫だって。僕が必ず守るから。
うっふふふ」 
この人は、ひどい勘違いをしている。

校門の外に出て、校門に向かって歩く。
私は、できるだけ風間さんの方を見ないようにした。
「恵美ちゃんは、横顔もかわいいね」
また何かいいだしたわ。
「僕さ、自分の顔で一番好きなのは、左斜め四十五度なんだ。

君は……そうだね、どこから見ても可愛いよ」
は、歯が浮いちゃう。
まあ、この人結構格好いいんだけど。
どうも変なのよね。

「恵美ちゃん、君の家どっち?」
気がつくと私達は、校門を出ていた。
どうしよう。
家の場所を教えるのはちょっと……。



『2、そうですね、ふふふふ……』



「そうですね、ふふふふ……」
私は、韻をふんで答えてみた。

「むっ……」
その途端、風間さんは眉間にしわをよせた。
「君、なかなかできるな」
そういうなり、目をつぶってなにやらブツブツいいだした。
今度は何をいうつもりかしら。
「奇麗だね、ひひひひ……」
……何?
何が奇麗だって?

それに、ひひひひって何なの?

あっけにとられていると、風間さんはニコニコ笑って、こんなことをいった。
「ふふっ、君の美しさを称えてみたんだけど。
韻をふむ会話っていうのも楽しいね。
古文の歌よみみたいでさ。
君は返事をいえなかったから、僕の勝ち」

別に、勝負したつもりはないんだけど……。

「恵美ちゃん、君の家どっち?」
気がつくと私達は、校門まで来ていた。
どうしよう。
この人何だか変よ。
一緒に帰って大丈夫かしら?



※以下同文※



でも、ここでサヨナラともいえないし……。


1、さよ、オナラといってみる
2、あきらめて送ってもらう



『1、さよ、オナラといってみる』



サヨナラとはいえない。
ならばせめて……。
「さよ、オナラ」
私は、幼稚園の頃によくいっていたギャグをとばしてみた。
『オナラ』の発音がポイントよ。

……はっ!
風間さんは、渋い顔をしてこちらを見ている。
「恵美ちゃん、なんかいった?」
「い、いえ、何でもありません」
ふう、危なかったわ。
あんまり変なことをいうと、後で日野先輩に伝わっちゃうわよね。

それが、新聞部のみんなに広まったら……。
想像したくないわ。
「さっ、さあ、早く行きましょう」
その場をごまかすために、私は風間さんの手を引き、歩き始めた。
もう、このまま一緒に帰るしかないのかしら。



『2、あきらめて送ってもらう』



……あきらめた。
とにかく帰ろう。
そんなにまずいことにはならないわよね。
日野先輩が呼んだ人なんだし。
「あっちです」
私は、風間さんを案内した。



※以下同文※



「……月がきれいだね」
しばらく進むと、風間さんが突然そんなことをいいだした。
……んっ?
完全に、目がすわっている。
なんだか、怪しい雰囲気。

「今日はよかったなあ。
君みたいな子に会えて」
そういうと風間さんは、髪をかきあげた。
「僕は、君を家まで送りとどける。
でも、君との時間を、これで終わりにしたくはないんだ」
「えっ」

「そうだ、今日のネタを元に、新聞を作るんだろ?
手伝ってあげようか。
うん、それがいい。
楽しくやろうじゃないか。

……それにしても、日野の奴。
七不思議の会に参加してやろうかっていったら、お前のネタなんかたかが知れてる、なんていうんだ。
だからアッといわせてやろうと思って、チカンの霊の話を調べたんだけど……」
……えっ、ちょっと待ってよ。

風間さんの話って、嘘じゃなかったの?

「あのう」
「ん、何だい?」
「風間さんのお話って、本当だったんですか?」

「何をいってるんだ。
本当に決まってるじゃないか。
だから、こうして君を送っているんだよ」
「でも……あのおまじない……『マザーカ』でしたっけ。
あれだって、何だかふざけてましたし」
「ふざけてなんかないよ。

あれは、さる聖人の名前なんだから」
「風間さんの名前を逆に読んだものじゃないんですか?」
「まあ、そうだけど。
僕って、結構聖人だから。
……ねえ、それより、君の家はまだなの?」
風間さんは、ニコニコ笑っている。

怪しすぎるわ。


1、ここで別れる
【END家まで上がり込む】


2、その怪しさが彼の魅力
【END早とちりな二人】