ぷれぜんと | ナノ


君が僕から離れて、どのくらいの時が経っただろう。
いつの間にか隣にいることが当たり前になっていて、君が時折寂しそうな顔をしていたことに僕は気付かない振りをした。
僕がもう少し強ければ、君を悲しませることは無かったのかもね。そんなことを考えては自分の愚かさに涙が出そうになる。……今更後悔したってもう遅いのに。


「…総司、別れよう」
「……………は…?」
「もう無理なんだよ、きっと」


必死に涙を堪えるように顔を歪ませたなまえは、僕の目を真っ直ぐ見てそう言った。
まるで、もう迷いは無いとでも言うように。


「僕のこと嫌いになった?」
「……ううん」
「…じゃあどうしてそんなこと言うの…?」
「……総司、私といる時辛そうだよ…無理してるのがわかるから」


違う。違うんだ。
心の中でそう繰り返して。
でも臆病な僕はそれを口に出来ない。
"君を守る"と真っ直ぐ君の目を見て言えない。


「…また昔みたいにさ、二人で授業サボって、屋上で馬鹿みたいに騒ごうよ…友達に戻ろう…?今ならきっと遅くない…まだ間に合う…」


まるで自分に言い聞かせているみたい。
…どうしてお互い好き合ってるのに別れなくちゃいけないんだろう。何処で間違えてしまったんだろう…。


「……じゃあね」


今にも泣き崩れてしまうんじゃないかと思うほど震えた声でそう言うと、なまえは僕に背中を向けて行ってしまう。
待って、伸ばした手は何も掴めずにただ空をきる。
僕に彼女に触れる資格があるのだろうか、好きな女の子一人笑顔に出来ない僕に…。


"本当に大切なものは離れてから気付く"
本当にその通りだ。
いつの間にか僕の中で彼女の存在はとても大きくなっていて、もう自分ではどうしようもなくなっていた。

彼女は僕と違って強いから、きっと歩みを止めた僕を置いて前に進んでいくんだろう。
君を好きだという気持ちはこれから先変わらないだろうけど、君が望むなら僕はその気持ちに蓋をしてみせるから。



なまえと別れてから一週間。

いつものように古典の授業をサボって、
いつものように屋上の扉を開ける。

そこにはいつものように…ーー


「…またサボり?」
「……君もね」


愛しい彼女の姿。


▼さち様からいただきました
バレンタイン企画のものです。学パロって・・いいですよね。きゅんとします。
というか好きな曲に合わせて書いていただいて本当に嬉しかったです、ありがとうございました!!



  



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