闇が私を包む前に(深夜)
毎晩あの日の夢を見る。
大切な人を殺された夢。
恐怖が何度も繰り返し心を蝕んでいく。
赤い目をしたあの忌まわしい吸血鬼はみんな殺さなきゃ。
殺して殺していなくならないと駄目なの。
でも、怖い。
死ぬのが、死んでいく人を見るのが…怖い。
そんな私を決まって優しく包んでくれるのは深夜で。
「怖い夢をまた見たの?」
『……うん』
「大丈夫。優花は僕が守るから」
『…うん』
涙を流せるのは深夜の前でだけ。
その暖かい優しさに私は溶かされて悪夢から解き放たれる。
だから、離さないで。
離れてしまったらまた、じわりと毒が回るようにあの夢を見てしまうから。
バラバラにされた仲間の死体とかつての恋人の断末魔を。
だから掻き消して、深夜のその優しさで。
2017.2.2
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