地面に落ちたシャンクスさんの周りを白ひげのみんなが取り囲む。
わたしを抱えたマルコも地面に足を付ける。


「いってぇな。いきなり蹴ることはねぇだろ…」
「お前こそ、おれたちの仲間に手ェ出してタダで済むと思ってんのかい」


この二人の会話。そしてマルコが抱えるわたしを見てか、状況を察したらしい周りにいた船員達もシャンクスさんへ向けて警戒心を高める。


「まさか、赤髪が名前を…?」
「一体何が目的なんだ…」
「てか、来るにしても早くねぇか…」


各々が言葉を交わす中、ゆっくりとした動作でシャンクスさんは立ち上がる。
そして、ニッと笑った。


「な!名前、これでわかったろ?」


呆気に取られた。
この状況でもまだわたしのことを気にかけてくれているの…。


「一体なんの話だ…」


マルコが眉間の皺を深くし、わたしの肩を掴む力を強めた。
わたしがちゃんと言わないと、シャンクスさんはわたしのためにしてくれたんだって…。


「おーい!みんなぁ!」


と、わたしが声をあげようとしたところで、大きな声に遮られる。
全力で走って来たのだろうエースが近くへ来たかと思うとすぐに息を整える。


「エース、お前、おれがマルコに蹴られることは計画に入れてなかったろう」
「えっ!蹴られたのか!すまねぇ」


二へッと笑うエースに首のあたりを抑えたシャンクスさんははぁ。と小さく溜息を溢す。
そんな二人の会話にマルコは一体どういうことだと声を荒げた。
マルコだけじゃない、そこにいるみんなが首を傾げていた。もちろんわたしも。


「えーっとな。話せば長くなるんだが…赤髪はおれの考えた計画に協力してくれただけなんだ」
「計画?名前の誘拐かよい」
「ちっげーよ!!名前!!」


エースがわたしを見る。
突然自分に注目が集まったことに驚くも、はい。と返事をした。


「もう大丈夫か?おれ達は安心できる場所か?」


目を見開いた。

自分の居場所はあるのかとか、自分は必要とされているのだろうかとか、自分は白ひげ海賊団の一員でいいのだろうかとか……。

さっきまで確かにあった不安の数々。

でも全部、どこかへ行ってしまったみたいだ。

わたしは笑顔でエースを見る。


「大丈夫!!」


エースが満面の笑みでガッツポーズをした。


「よっしゃ!成功だ!」


エースがわたしの頭を激しく撫でつける。
ニッと微笑みかけられるとこちらまで笑顔になる。


そんな満足気なエースとは反対にマルコは難しい顔をしていた。
その様子を見てかシャンクスさんはこちらへと近づいてきた。


「お前の心配していることはなんとなく想像がつくぞ」
「あ?」
「まず、このことは白ひげは知っている。おれは白ひげから直接頼まれたからな」
「……」
「そんでこの島がおれのナワバリであることは嘘ではないし、そもそもこの島のやつらは海賊には慣れてるから大勢で上陸しても特に問題ない。あの約束は破るためにあったんだから問題なし」


得意げに話すシャンクスさんにマルコは何も言わず「そうか」と呟いた。


「それでもきちんと説明しろいっ!」


スパン!とエースの右脛にマルコの蹴りが入る。
いってぇ!!と叫んだエースは足を手で抑えた。

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