赤髪が取り出したのは手配書だった。
それもエースの弟のものだという。

「この笑顔、とても3000万ベリーの賞金首にゃみえねぇよい」
「ははっ、それにバカっぽい感じがエースにそっくりだ」
「なんだと!!」


おれたちもエースの弟もといルフィの手配書を見せてもらう。さっきマルコが言った通りとても賞金首に見えないただの少年って感じの奴だった。


「でも、なんとなく笑顔がエースと似てるね」


名前が微笑ましく発した。

エースから聞いていた話じゃ、エースと弟は血がつながっていない。
だけど自然と名前が発したその言葉がうれしかったんだろうエースは、だろ!と手配書と同じ笑顔を見せた。


「東の海でアーロンって漁人海賊団を討ったらしいぞ」
「へへっやるじゃねぇかルフィ!」


赤髪の話を聞いて嬉しそうに手配書を眺めるエース。


「あ、赤髪、これ貰っていいのか?」
「もちろんだ」
「さんきゅー!」


部屋に貼って来るー!と食堂を飛び出して行ったエースを微笑ましくも苦笑いで見送った。
ズズッと赤髪がさっき出したコーヒーを啜った。


「さて……」


そして発された言葉におれとマルコは眉を寄せた。なにやら真面目な話をする雰囲気だ。


「なぁ名前?」
「はい?」
「これ」
「これって……?」


赤髪は自身のポケットから何かを取り出すとそれを名前の手に握らせた。


「エターナルポース」
「えっと、どの島の……?」


名前が不思議そうに聞き返すと赤髪はふふんと笑った。


「おれがこの間行った島でな、酒もうまいし花も綺麗でさ、また名前も遊びに来いよ」
「へぇ……!ぜひ!」

「おい、そりゃ赤髪のナワバリじゃねぇのかい」
「お、さすがマルコだな、安心しろ、名前の上陸は許可してある」
「ちゃっかりしてんなぁ!」


だろ?どや顔で笑う赤髪とは反対に名前の表情は明るくなかった。


「シャンクスさん、これってわたししか上陸できないんですか?」
「え?ま、まぁ一応おれのナワバリだからなぁ……」
「そうなんですか…。んーわたし一人なら…いいです……」
「えっ、いやっ」


名前の言葉に焦る様子の赤髪

名前は優しい子なんだ自分一人だけが良いことなんて喜ばねぇ。

赤髪は暫く考える様子を見せると、ちょっと待っててくれ!との右の掌を名前に向けた。

そしてポケットの中から電電虫を取り出すと、誰かにかけはじめた。


プルプルプルプルプル……


不思議そうにその電電虫を見つめる名前はかすかに首を傾げている。


ガチャ

電電虫が目を開き「はい」と低い声が聞こえた。


「おーベン!おれだ」

『なんだ、頭』

「あのー!この間行った島どこだっけ」

『ゼイン島か?』

「あぁそう!そのゼイン島にな名前以外のやつら上陸させてもいいか?」

『それはあんたが決めることだろうが』

「あぁそうだな!じゃあ名前が許した奴も特別に上陸させてやることにしよう!!」


ベックマンの返答に嬉しそうに破顔させ、電電虫しつつ横目で名前にウインクを送った。


『それは構わねぇが、あんたいつまでそこにいる気だ?あんたが戻らねぇとこっちも出航できないんだが』

「えー、もうちょっと名前を口説いて行きたいんだよなぁ」

「えっ!くどっ…?」


途端に微かに頬を赤くし戸惑う名前とは反対にマルコの眉間の皺が深くなる。


『連日の宴とルゥのおかげで食料危機だ。もうあんた置いて船出していいか』

「おいベックマン!それだけは絶対やめろよい!」

「おわっ、なんだよマルコ」


電電虫に噛みつかん勢いでマルコが訴える。
おそらく向こうの電電虫もマルコと同じように唾を飛ばしていることだろう。


『その声は一番隊のマルコか?悪いな頭が』

「あぁ、お前も頭がこんなので大変だな、だがここに置いて行かれるのは困るよい」

「なぁ〜名前、やっぱウチこねぇ?絶対楽しいぜ〜」
「だから勧誘すんなよい!行かねぇっつってんだろ!あと近いよい!」


電電虫をしつつ赤髪を足蹴にするマルコをとても器用だと思った。
しかし、その距離の近さはさっきからおれも気になってた。


「名前おれの後ろに来いっ!」
「うわぁっ」

マルコとおれの連携によりなんとか赤髪と名前の距離を引き離す。


「ベックマン聞こえるか?オヤジに話は通すよい!こいつ引き取りに来てくれ!」















「うちの頭が迷惑かけたな」
「全くだよい」
「名前〜!また会うまでに考えといてくれよなぁ〜」
「ったく!てめぇしつこいんだよい!」


ベックマンに首根っこを掴まれている赤髪にマルコは容赦なく蹴りを入れる。

名前はおれと少し離れたところから微笑みながら軽く手を振っていた。


「あの子が名前か、頭が気に入りそうな子だ」


遠目に名前の姿を見たベックマンが、へぇ。と面白そうに呟いた。


「フッ、優秀な航海士にはおれも興味はあるがな」


ベックマンのつぶやきにマルコが構えるもベックマンは軽く笑った。


「おれは何もしやしねぇよ、ただこの人について行くだけだ。今回は迷惑かけたな。ゼイン島に行くならゆっくりしてってくれ、あそこは良いところだ」
「あぁ、ま、行く機会があればな」


若干呆れたように言うマルコに軽く笑うと、じゃあな。と赤髪を引きずりながらも片手を挙げ、モビーから去って行った。

モビーから渡る橋で赤髪はベックマンの腕から逃れ前を歩いた。

「行くぞベック」
「あんた、もういいのか」
「あぁ、今のあの子にはどんな口説き文句も通用しねぇからなぁ。時期をみるさ」
「へぇ」










「なんとか、帰らせられたよい…」
「どんな敵襲よりも疲れた気がするぜ…」


赤髪が帰り、食堂で寛ぐおれたちを見て名前は苦笑う。


「なんか、すごい人だったね」
「なんであんなのがオヤジと同じ四皇なんだ」


その時食堂の扉が開き、あれっ?とエースの声がした。


「赤髪は?もう帰ったのか?」
「うん、副船長さんが迎えに来てたよ」
「ベックマンか!おれも会いたかったなぁ!」


「エースお前えらく遅かったじゃねぇか、何してたんだ」
「え?いやぁルフイの手配書部屋のどこに貼るか悩んじまって、やっと決まったんだ!」


おれ達が必死に名前を守っているという時にこいつは……!!!

[ 20/38 ]

[*prev] [next#]


もくじ





×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -