《Love Songs》
#01_そして僕は途方に暮れる:1



 判っていたけど。

 お節介な奴らに聞かされて、薄々気付いてはいたけど。

 いざ、こうやって、ペールブルー地に白いレースを模した縁取りのある甘ったるい封筒を手にすると、やっぱり現実なんだと、認めざるを得ない。


 連名で届いたそれの、甘い空気に似合わない差出人は、大学時代のツレの親父さん。

 ――と、元カノの親父さん。






「俺にも出席しろ、ってか…」


 何の嫌がらせだ。

 お笑い芸人のバツゲームだって、もう少し気が利いてる。


 元カノ、とは、いえないかもしれない。

 俺は、あいつの“彼氏”という肩書を、固辞し続けていたから。


 周りは俺たちが付き合っているものと、思っていたようで。

 特に否定も肯定もせずに放っておいたから、俺たちはいろんな憶測と噂を提供し続けていたらしい。


 常に一緒にいたし、休みの日はふたりで出掛けたりもしていた。

 身体を許してもいた。

 それでも、いわゆる“恋人同士”にならなかったのは、俺があいつの気持ちに気付かないふりをしていたからだ。

 気付いて、受け入れて、がんじがらめに束縛してしまうのが怖かった。

 あいつはそれを望んでいたけど、それがあいつのためにならないことは明白だった。


 だから優しくなれずにいた。

 かといって、離れてやることも、できなかった。

 いつも自分の気持ちを持て余してばかりだった日々は、今でも、思い出すと胸が傷むばかりで、甘酸っぱさの欠片もない。


 思い出すのすら、途方に暮れる。








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