《Hard Candy》 #08_胸騒ぎ:04 やけに今日の夕焼けは色が濃い、とか。 そんな些細なことにも、ビクついてしまう程に。 漠然とした言いようのない不安が、このところずっと、俺を取り巻いている。 柳川の態度すら、俺には驚異だ。 「お前、おかしなメール、受け取ってないか?」 ほら。 これだもんな。 マジでおっかねぇよ。 動揺する隙も与えてくれない柳川は、俺が答えようが答えまいが、お構いなしに畳み掛けてくる。 「添付画像、あったろ」 「…」 「国領みてぇな女の画像」 「…」 「だんまりかよ。…ま、いいけど」 ほら、と、柳川が投げてよこしたのは、奴の携帯。 「それ、だろ?」 「な――…っ」 どうやって手に入れたのか、とか、何で持ってんだ、とか。 当たり前の疑問がぐるぐると巡る。 まだ俺の携帯に保存されているけれど、二度と見ることはないと思っていた、あの画像。 知ってしまったのが柳川でよかった、…のだろうか。 唐突過ぎるこの展開に、着いてこい、ってんならムリがあるぞ。 「ち、ちょっと待っ…、頭整理させて」 飛んできた柳川の携帯を握り締めながら、額に手をあてる。 「何で、これ…」 「やっぱ、受け取ってんのか」 「いつ、」 「落ち着け」 「誰から!? 柾木?」 「落ち着けって」 「つか、何で、」 「雨宮!!」 柳川に肩を掴まれるまで、手が震えていることにすら、気が付かなかった。 「…悪ぃ」 よろけた身体をごまかすように、消毒液臭いパイプベッドに座り、深く息を吐きながら、柳川に携帯を突き返す。 受信したときの、ゾクゾクした悪寒が蘇る。 「…」 「雨宮?」 「吐きそ…」 「しっかりしろよ」 [*]prev | next[#] bookmark |