《Hard Candy》
#04_白い月:11



 ってか、同じクラス、って。何で俺は気付かねぇんだよ。

 俺があんだけ澪に纏わり付いてたのを、そいつはどう思っていただろう。


「あ、ごめん。つい。同じクラスの?」

「同じクラスで、背が高くて、制服なんか着崩れちゃってて、よく授業サボったりもするし、ちょっと見た目怖くて、…だけどね、だけど、」


 隣に澪が並んでしゃがむ。

 ローファーの先っぽを指で突いて、次の言葉を探している。


「あたしには、優しいんだ」

「…」


 澪の言葉を反芻する。

 そんな奴、いたか…?

 少なくとも、俺が澪にピアスを空けてからは、俺以外の男が近寄る隙はなかった、と思いたい。

 俺の“日課”は、かなり周りに知られていたはず。


「いつもね、あたし、…見てたの」

「…そいつのこと?」


 ん、と頷いて、澪は軽く頬を染める。

 ちくしょう。こんなときなのに。

 可愛いじゃねぇか。


「たぶん、ずっと気になってて…授業中、いつも見てたの。左の耳のピアス」


「――は…?」


 ドクン、と、大きく、血が波打つ。

 …同じクラスでピアスをしてるのは、


「あたしにも空けてくれたの」


 …澪にピアスを空けたのは、


「運命変わるかな? って訊いたら、判んない、って言われたけど」


 俺、だ。


 ――澪の運命、俺が変えてやるよ




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